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東芝情報機器杭州社の従業員13人にインタビュー

「お金を稼ぐから、会社を良くする」中国社員の意欲を変えた東芝

2016年08月24日 12時00分更新

文● 平澤寿康 編集●イッペイ

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しょっぱなからメンバーの意識が高すぎてややめんくらう、インタビュアーのジサトライッペイ。しきりに編集部の後輩にほしいと言っていた。

 前回の記事では、東芝情報機器杭州社(以下、TIH)で製造されるdynabookの品質の高さやものづくりへのこだわりを紹介した。今回の取材ではTIHの見学だけではなく、実際に東芝情報機器杭州社で働いている作業員の方々に話を聞く機会もあった。そこで今回は、TIHの作業員がどのような心構えで仕事に取り組んでいるのか、紹介していこう。

1572人中、日本出身はわずか13名、現地採用にこだわる理由は?

 TIHでは、2016年6月末現在で1572人の従業員が在籍しているが、そのうち日本人駐在員は開発部門も含めてわずか13人で、ほとんどが現地中国で採用した従業員だ。つまり、製品の設計から部品の管理、製品の製造、製品の検査、製品の出荷に至るまで、PC生産のほとんどの工程が現地中国の作業員が担当していることになる。

 前回の記事でも紹介したように、TIHでは作業員の能力を定量的に把握するとともに、作業工程に難易度指標を設定し、作業員の能力と作業難易度を合わせた人員配置を行なっている。そして、能力の高い作業員には、「全能工」や「ラインリーダー」などの役職やインセンティブが与えられるなど、作業員のモチベーションを高める仕組みが取り入れられている。

 そこで、実際にTIHで働いている作業員の方々に、普段どのような心構えで仕事に取り組んでいるのか話を聞いてみることに。それも、作業員ごとの意識の違いをあぶり出すために、職種や役職ごとに、あえて同じ質問をぶつけてみた。

「レベルの高い仕事をして、会社に貢献したいです」(全能工:チャンさん)

 全能工は、TIHで働いている作業員の中でも、特に技能が優れていると認定されたメンバーだ。インセンティブが与えられるだけでなく、将来の幹部候補として育成されることになっており、将来のTIHを支える、まさにTIHの財産と言ってもいい作業員だ。話を聞いたのは、“SMT”という役割で基板の目視監査を担当しているワンさんと、PC梱包エリアで検査を担当しているチャンさん。

全能工のワンさん(左)とチャンさん(右)。

――普段の作業で心がけていることを教えてください。

ワンさん「標準作業書に従って作業を進めて、何かあったらすぐにラインリーダーに報告することを心がけています」

チャンさん「標準作業書に従って作業を進めることです」

基板の目視検査を担当している全能工のワンさん。TIH歴は3年。

――TIHで働いていて感じる、いいところと悪いところを教えてください。

ワンさん「いいところは、他の会社よりも福利厚生がしっかりしているところです。悪いところは、出身の雲南省から遠いので、里帰りする時に時間がかかるところですね」

チャンさん「仕事以外に、日本語の勉強やはんだ付けの勉強など、教育のチャンスがあるのがいいところです。悪いところは……、河南省出身で辛い食事が好みなので、(TIHがある浙江省の)あっさりとした味付けの食事が口に合わないところです(笑)」

PC梱包エリアで検査を担当している全能工のチャンさん。TIH歴は3年。

――将来の目標は?

ワンさん「自分の担当業務での不良をゼロにしたいです。そして、さらに能力を高めて成長し、ラインリーダーなどになってもっとお給料をもらえるようになりたいです」

チャンさん「組立の技能も勉強して能力を高めたいです。そして、仕事をしてお給料をもらうだけでなく、レベルの高い仕事をして、会社に貢献したいです」

「組合や相談室で相談できるので、怒りを抑えて仕事ができる」(ラインリーダー:リュウさん)

 ラインリーダーは組立ラインなどで作業員の作業内容をチェックしたり、ライン全体の状況を把握し統括する、重要な役割を与えられた作業員だ。ラインリーダーによる統括によって、常に高品質な製品を安定して生産できている。話を聞いたのは、品質保証部で品質検査を行なっているリュウさん、PC組立ラインのラインリーダーのキンさん、“SMT”の管理を行なっているフさん。

ラインリーダーのリュウさん(左)、キンさん(中)、フさん(右)。

――普段の作業で心がけていることを教えてください。

リュウさん「品質管理は安定して作業していれば不良は出ません。作業書に従って作業して、不良品を出さないように作業しています」

キンさん「ラインの作業員が標準作業書を守って作業しているか確認するのが大事だと思っています」

フさん「品質を保つことが大事ですので、標準作業書を守って仕事をするのが大事です。また、いち早く不良を見つけることも心がけています」

品質保証部で品質検査を行なっているリュウさん。TIH歴は6年。

――TIHで働いていて感じる、いいところと悪いところを教えてください。

リュウさん「仕事環境はとてもいいです。仕事をやりながら怒ることもありましたが、組合や相談室で相談できるので、怒りを抑えて仕事ができるのはいいところだと思います。悪いのは、仕事中に静かすぎることですかね」

キンさん「ラインは自動化が進んでいて、ネジ締めを以前は人がやっていて不良が出ることもありましたが、自動化されて労働者の負担が減って不良も減りました。これは会社にとってとてもいいことです。悪いところは、組立ラインから食堂まで遠いところです。歩くと時間がかかります(笑)」

フさん「会社は環境が良く仕事がやりやすいです。能力があれば成長していけるところもいいですね。会社に入って3年ですが、悪いところは感じません」

PC組立ラインのラインリーダーのキンさん。TIH歴は4年。

――将来の目標は?

リュウさん:「今は品質ラインリーダーで、作業員に対してOJT(On-the-Job Training)の案を作っています。新人作業員の仕事の熟練度を早く高めて、今より仕事の効率を高め、順調なラインにしたいです」

キンさん「今後も努力して、より高いレベルで仕事ができるようにしたいです」

フさん「ラインリーダーとして、管理の知識を勉強してもっと能力を高めたいです。自分はもっと能力を持っていると思っていますので、ラインリーダー以上のレベルに上げたいです」

SMTの管理を行なっているフさん。TIH歴は3年。

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