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PaaS基盤から企業向けコンテナ基盤へと転身した「Red Hat OpenShift」の戦略を説明

「コンテナでデプロイ/運用を再発明」レッドハットのOpenShift戦略

2016年08月08日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 レッドハットが「Red Hat OpenShift Enterprise」を「Red Hat OpenShift Container Platform」へとリブランド(改称)した。8月4日に開催された説明会では、リブランドの背景や新たなパートナーシップ、“企業コンテナ基盤”市場に対する戦略が語られた。

レッドハットのメッセージは「コンテナは、デプロイと運用を再発明する」

レッドハット プロダクト・ソリューション本部 本部長の岡下浩明氏

企業のコンテナプラットフォームに求められる要素とは

 今年4月の新年度(FY2017年)事業戦略説明会では、企業に「10年後(2025年)のビジネス基盤」を提供していくための基礎づくりとして、4つの最重要テーマが掲げられた。その1つが「企業によるコンテナ活用を定着させる」だ。

レッドハットが考える「10年後のビジネス基盤」ビジョン

 昨年7月にリリースされたOpenShift Enterprise 3においても、レッドハットではコンテナオーケストレーションツールの「Kubernetes(クーバネテス)」を統合し、Dockerテンプレートを提供するなど、すでにPaaSではなく「企業向けのDocker基盤ソフトウェア」という方向性を示していた。今回の「OpenShift Container Platform」へのリブランディングは、同社のそうした意向をさらに強調するものとなる。

 それでは、「10年後のビジネス基盤」としてなぜ、コンテナ基盤が必要なのか。またコンテナ基盤にはどのような機能が求められるのか。同社プロダクト・ソリューション本部 本部長の岡下浩明氏が、急速に進化し、適用の幅を広げるコンテナ技術と、最新の導入事例を紹介した。

 岡下氏は、コンテナ技術はアプリケーションの「デプロイと運用を再発明する」ものであり、かつてJava EEや仮想化技術の登場が企業システムのあり方を大きく変えたように、コンテナの登場もそれに匹敵するインパクトを持つと説明する。

 コンテナとしてパッケージ化されたアプリケーションはポータビリティ(可搬性)が高く、基本的には「どこの環境(物理/仮想/クラウドインフラ)にも持って行ける」(岡下氏)。しかしながら、ポータビリティだけがコンテナ化のメリットではなく、コンテナの与えるインパクトの本質ではない。

アプリケーションをコンテナ化することで高いポータビリティが得られる。ただしメリットはそれだけではない

 わかりやすい例として、岡下氏はグーグルにおけるコンテナ活用を取り上げた。グーグルでは「毎週2億個」のコンテナアプリケーションがデプロイされているという。管理者の人数で割ると「1人あたり150万個のコンテナを管理している」計算になる。「とうてい人間業ではできない。そこで自動化が必要になる」(岡下氏)。

 ポータビリティが高く、高速にデプロイ/スケールできることに加えて、運用をソフトウェア的に制御/自動化できること、管理者がどんなアプリケーションコンテナでも同一の手法で管理できること。こうした各種のメリットが組み合わさることで、コンテナは「デプロイと運用の再発明」へとつながる。

 したがって、企業がコンテナのもたらすメリットを十全に享受しようと考えるならば、開発(コンテナへのパッケージ)からデプロイ、運用/ライフサイクル管理の自動化(オーケストレーション)までを見通したコンテナ環境が求められることになる。これが、OpenShift Container Platformでレッドハットが提供しようとしているソリューションだと、岡下氏は説明した。

コンテナへのパッケージからあらゆるインフラ上のコンテナ環境へのデプロイ、さらにオーケストレーションによる運用管理の自動化までを、OpenShift Container Platformでカバーしていく狙い

 企業がコンテナプラットフォームの採用にあたって検討しなければならないポイントとして、岡下氏は「プラットフォームそのものの堅牢さ」「業界標準であるコンテナ形式への対応」「オーケストレーション機能」「コンテナレジストリ」を挙げる。特に、オープンな業界標準技術の選択を重視すべきだと述べ、コンテナ形式についても「現在はDockerを採用しているが、OCIの標準に則って、その時代に合わせた形式に対応していく」とする。

コンテナプラットフォームを検討するうえでのポイント

 なお岡下氏は、新規開発のアプリケーションだけでなく既存アプリケーションのコンテナ化にも価値があること、DevOpsの取り組みを成功に導くためにはコンテナ環境の整備が鍵となることなども説明した。既存アプリケーションについては「過去7~8年のもの」、具体的にはRHEL 6以降で稼働しているアプリケーションであればコンテナ化しやすいという。

今秋にOpenShift最新版リリース、Glusterの統合、提供方式の変更など

 レッドハットでは、今年9月にOpenShift Container Platformの最新版となるバージョン3.3をリリースする予定だ。提供方式(サブスクリプション)も変更される。

 「今後のOpenShiftは、いかにコンテナアプリケーションをきちんと動かすかという『コンテナプラットフォーム』の位置付け。これまでPaaSで提供してきた部品群(ミドルウェア群)やパートナーISVのアプリケーションは、そのプラットフォーム上にコンテナとしてデプロイされる形になる」(岡下氏)

OpenShift Container Platformを中心としたレッドハットのコンテナポートフォリオ

 提供方式も変更される。オンプレミスでは、開発者向けのローカル環境と、開発/テスト環境のサブスクリプションが新たに追加される。ローカル環境の「OpenShift Container Local」は無償、開発/テスト環境の「OpenShift Container Lab」は廉価版として提供するという。

 さらに、現在パブリッククラウドサービスとしてベータ版を提供している「OpenShift Online」は、今年中に正式サービスとしてグローバルに展開していくと述べた。また顧客占有クラウドで利用できるマネージドサービス「OpenShift Dedicated」については、現在のAWSだけでなくAzureやGCPへも対応していくという。

コンテナ環境の利用用途に応じて、無償/廉価版のサブスクリプションも追加

 ストレージについては、前週の発表会でも説明されたとおり「Red Hat Gluster Storage(RHGS)」を統合する。アプリケーションコンテナからは、永続的ストレージとして利用できる。なお、OpenShift環境内で稼働させるGluster Storageについては、OpenShiftのサブスクリプション価格に含まれる(Glusterノードをスケールアウトしていく場合は別途)。

 また、Black Duck HubやOpenSCAPスキャナといったツールで、コンテナのセキュリティ脆弱性をチェックする「コンテナスキャニング」機能に対応するインタフェースが追加される。

 「OpenShift Container Platformというリブランドは、コンテナアプリに対して注力していくというレッドハットの強いメッセージがこめられている。コンテナをベースに企業向けシステムを構築していくという時代はまだ始まったばかりだが、その先頭を切ってやっていく。(コンテナ基盤の)トップシェア、デファクトの位置付けを獲得できれば」(岡下氏)

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