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ASCII STARTUP ACADEMY第12回

アスキースタートアップ セミナーレポート

なぜ“チャットbot”がヤバいのか?

2016年08月05日 18時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita) 編集●ガチ鈴木/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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 2016年6月28日に開催したASCII STARTUP ACADEMY“2016年上半期ベンチャー、スタートアップ業界振り返りトーク”。国内外で活躍する有力ベンチャーキャピタル、ベンチャー専門家たちが集まり、2016年上半期のスタートアップシーンを振り返りながら、今後成長が見込める注目分野について語った。

 注目すべき分野として、いずれも口をそろえたのが“チャットbot”(チャットボット)だ。人工知能を使ったテキスト自動応答システム、テキスト版自動応答オペレーターのようなもの。しかし現在のウェブメディアを根本から覆す潜在能力を秘めている。

■セミナー登壇者
 IMJ Investment Partners Pte.Ltd. 岡洋氏
 Fenox Venture Capital. Venture Partner 田所雅之氏
 サムライインキュベート玉木諒氏
 デフタ・キャピタル 山口豪志氏

 コールセンター業界にチャットを使ったサービスはあったが、いま注目を集めているのはLINEやFacebook Messengerを使った個人向けサービスだ。ヤマト運輸がLINEアカウントに話しかけることで配達日時を変更できるサービスをつくったり、医療スタートアップのメドレーがFacebookで病気、病院を探せる“症状チェッカーbot”を開発したりと、事例が相次いでいる。

 いまは個別のQ&Aをやりとりしている基本的なサービスが中心だが、機械学習が入ると様子が変わる。たとえばスケジュール調整を考えてみよう。

 オンライン秘書サービス『CasterBiz』を使っているデフタ・キャピタルの山口豪志氏は、仕事の日程調整をオンライン秘書にまかせている。しかし同じ人間なら意思決定のパターンは似通ってくるもの。ある程度のデータがたまってしまえば、秘書がチャットbotに切り替わっても問題はないはずだと山口氏は言う。

「Facebook Messengerで店の予約を調整することがあり、今はやりとりをしているメンバーに加え、秘書の方に入ってもらっている。しかし、このやりとりはすべてAIにできてしまう。メッセージツールやチャットツールをつくってる会社は今後すさまじいことができてしまう」(デフタ・キャピタル 山口豪志氏)

 チャットbotはつまり、情報を整理したい、情報を探したいといった情報まわりの要求をコミュニケーションという方法でかなえるもの。今までグーグルなどが担ってきた検索メディアを代替できる可能性がある。コミュニケーションツールと検索ポータルをひとつにしたようなクロスプラットフォームがつくれるわけだ。

「チャットbotは“メディアの終焉”。チャットがすばらしいのは人々の活動やコミュニケーションの場所を変えたことだ。チャットで送られてきたUIを叩くだけ。チャットになると狭すぎて“広告枠”が出せない。メディアは広告モデルを根本的に変えないといけなくなる」(IMJ Investment Partners Pte.Ltd. 岡洋氏)

 マイクロソフトのようなIT大手もチャットbot開発元のWand Labsを買収したりと目をつけている。それでは大型のチャットbotサービスは欧米から流行するのかというと、意外なことに途上国に最大のチャンスがあるという。

「彼らはPCを持っておらず、やりとりをすべてモバイルのSMSとチャットでやっているから。たとえばインドネシア・ジャカルタに『YesBoss』というコンシェルジュサービスがある。チャットで『5000円の花を探してくれ』と言うと、誰かが人力で探してきてくれるものだ。それをAIに置き換えていけばいい」(岡氏)

「チャットは端末のスペックを求めない。表示枠さえあればいい。ゲームのようにグラフィックが美しいアプリは最新機種でなければ使えないが、コミュニケーションは広がりが早い」(サムライインキュベート 玉木諒氏)

 もちろん欧米でもチャットbotの芽は育っている。

 2000年代以降に生まれた若者たちは“ジェネレーションZ(Z世代)”と呼ばれている。Z世代の若者たちはメールではなく『Kik Messenger』、『Snapchat』といったチャットサービスに初めから親しんでいる。日本に目を向けても、PCもメールも使ったことがない“LINE世代”の子供たちが着々と成長している。

 チャットbotのコアは人工知能と機械学習だ。今後IoT(モノのインターネット)環境が整備されていけば、チャットbotをきっかけとして、人工知能に情報を探させることが当たり前の感覚になるのではないかという意見もあった。

「生態センサーや位置情報やアクチュエーターからインプットがあり、人工知能で処理してレコメンドが常識になる。そうしたUXをベースとしたサービスでないと流行らなくなる」(Fenox Venture Capital. Venture Partner 田所雅之氏)

 今まで人工知能との会話というと音声認識が主だった。自動車社会のアメリカは「Hey,Siri」、「OK,Google」などと手ぶらで使えるサービスの開発を進めていたが、電車大国の日本では、公共でスマホに話しかけるサービスが普及しづらい。(とはいえNTTドコモの“しゃべってコンシェル”などはあるのだが)

 しかしチャットであれば話は別だ。音声とちがってやりとりする情報量も少なく応答もより高速化できる。今までもスマホでウェブブラウザーの立場が危うくなったと言われてきたが、チャットbotの衝撃は大きなものになりそうだ。

 セミナーではその後、人工知能、ブロックチェーン、VR、ドローンなど注目分野、アジア新興国ベンチャー投資など注目の海外スタートアップ事例を紹介。後半ではVC各社がこれから投資の狙い目となると考える注目株をあげていた。

 “ASCII STARTUP ACADEMY”では、ベンチャー注目分野の専門情報セミナーを毎月1回ペースで開催中。新規事業開発の企画に使える情報はもちろん、現場でしか伝わらない生々しいベンチャー事業者の実情をぜひ体感してほしい。

ASCIIが贈るIoT/ハードウェアの祭典、再び!
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