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超競争社会・中国に合わせた独自のPC製造教育

中国のdynabook製造工場で驚いた、東芝クオリティー

2016年08月18日 17時00分更新

文● 平澤寿康 編集●イッペイ

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ラインの自動化で品質を高めつつ短時間で納入可能に

 TIHは、もともとdynabookのB2Bモデルの生産を行なってきた。B2Bモデルは、受注後に生産を行なうのはもちろん、注文ごとに細かく仕様が変わるため、コンシューマー向け製品のように、同一仕様の製品を一気大量に製造するというわけにはいかない。実際にTIHでは、1ヶ月あたり10~14モデル、1800もの型番の製品を製造しているという。しかも、そのオーダーの半数は10台以下の少数注文とのこと。そういった中で、高いレベルの品質を確保しつつ、素早く効率よく製品を製造するために、様々な取り組みを行なってきたという。

 通常の企業では、6ヶ月単位で目標を設定し、その結果に応じて翌期の目標を新しく設定するというサイクルを取っていることが多いのに対し、TIHでは90日サイクルで目標を設定しているという。これにより、問題点に対する対処をスピーディーに実現でき、優れた品質を確保している。実際にTIHでは10年間このサイクルで目標を設定し運営することで、不良率の大幅な低減を実現したという。

TIHでは90日サイクルで目標を設定し、問題点などを素早く改善することで、品質や作業員の能力を高めている。

社団法人日本能率協会の「ものづくりプロセス革新賞」受賞など様々な賞を受賞しており、TIHの取り組みは内外に評価されている。

 また、本体の設計から製造、出荷まで、すべての工程をTIH内で行なっているため、各工程のデータを一貫して管理できるのも強みのひとつ。トラブルに対してスムーズに対応できるのはもちろん、各工程の作業員が集まりやすく、トラブルへの対策もいち早く取れるからだ。

 例えばプリント基板の製作では、以前は部品挿入を作業員が手で行なっていたが、現在はすべて機械による自動化で実施することで、不良率を大幅に低減。そして、プリント基板の通電検査を、基板製作時ではなく本体に組み込んだ後に行なうという、大胆な省力化も実施している。本体組み込み後に不良が発覚すると、本体から取り出して不良を改善する必要があり、手間もコストもかかることになるが、TIHではプリント基板製作で十分に高い品質を確保できているからこそできる手法だと、胸を張って説明する。

 そして、プリント基板の検査を省くことで、プリント基板製作から組立までを一貫したラインとして作業を行なうことが可能となり、従来までプリント基板製作から組み立て完成まで2日必要としていたのが、12時間に短縮され、最短で2~3日後には製品が届くという短時間納品を実現している。

TIHではPCの設計から組み立て、出荷までを一貫して行なっている。

プリント基板の製作を機械を使って完全自動化することで不良率を大幅に低減した。

TIHのプリント基板製作ライン。整然と機械が並ぶが、作業員はまばらだ。

基板への部品装着はすべて自動化されている。

装着した部品のはんだ付けも自動で行なわれている。

機械での光学検査後、作業員による目視検査も行なわれる。

自動化をはじめとした品質改善により、プリント基板製作の不良率は非常に低くなっているという。

通電検査は組み立て完成後に初めて行なわれる。

厳しい検査を通過した製品のみが出荷される。もちろん日本向けのdynabookも数多く出荷されている。

 もちろん、プリント基板製作時の検査を省いたからといって、検査を怠っているわけではない。TIHでは、納入された部品の検査や、組み立て完成後に全数で機能検査を行なうとともに、1台抜き取って分解検査を行なう。さらに、梱包が終了した製品の中からも抜き取り検査を行なっている。ラインの自動化を進め、常に問題点を洗い出して改善し、必要な検査は徹底して行なうからこそ、常に優れた品質が確保できているわけだ。

まず部品メーカーから納入された部品は、作業員が厳しい目でチェック。

完成した全製品が細かく検査される。

梱包が終了した製品からも抜き取り検査が行なわれる。

こちらは、落下試験の検査装置。過酷な耐久検査も常に行なっている。

実際にキーボードに水をかける耐水検査も実施している。

検査で問題が見つかると、優秀な作業員の手で徹底的な問題点の洗い出しが行なわれ、その後の製造に役立てられる。

TIH内には様々な品質評価施設があり、高品質な製品を送り出す原動力となっている。

大型の10メートル電波暗室も備えており、試験の外部受託も受けているという。

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