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コンテナ、オールフラッシュ、混合ハイパーバイザ環境など“HCIを超える”インフラへと進む

「Nutanixが目指すのはHCIではない」日本法人が戦略を説明

2016年07月27日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ニュータニックス・ジャパン(Nutanix)は7月26日、同社ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品の最新版が搭載する機能や今後の開発ロードマップ、事業戦略に関する説明会を開催した。競合他社の“小規模な仮想化システム専用のHCI”とは一線を画し、製品と戦略を強化していく。

複雑化していた従来のオンプレミスシステムインフラを、シンプルなHCIに統合したNutanix

ニュータニックス・ジャパン 日本法人代表 マネージングディレクターの安藤秀樹氏

ニュータニックス・ジャパン シニアシステムズエンジニアリングマネージャーの露峰光氏

VDI目的の導入は全体の3割、より広範な業務ワークロードで採用が進む

 説明会ではまず、Nutanix日本法人代表の安藤秀樹氏は、グローバルおよび国内市場における同社ビジネスの現況を中心に説明した。

 2009年に米国で設立されたNutanixは、この数年で急速な成長を遂げ、現在は80カ国に2600を超える顧客を持つ。日本法人単独の業績は公表していないものの、グローバルでの売上は前四半期比で25%増、前年度比では100%以上(2倍以上)という成長スピードだ。日本法人の人員も「昨年1月の10名から、現在は40名以上まで増えた」と、安藤氏は語る。

グローバルでのNutanixアプライアンス出荷台数推移(2012年7月~2016年5月)

 安藤氏によれば、この1年ほどで、国内市場におけるNutanix製品の導入目的や顧客業種は大きく変化してきたようだ。

 上市当初はスケールアウトが容易なVDI(仮想デスクトップ)基盤としての採用が大半だったNutanixだが、現在はその他のエンタープライズアプリケーションのインフラとして導入されるケースが増えた。また最近では、官公庁や自治体、教育機関など公共系の顧客が、「5年6年と長く使えて、堅牢なITインフラを作りたい」というニーズから、Nutanixに注目しはじめているという。

 「以前はVDIが6割くらいの売上を占めていたが、現在は3割くらい。もちろん母数は増えているのだが、VDI以外のアプリケーション領域での採用が(割合として)高まっている」「“全方位”にわたってHCIが求められている、という実感がある」(安藤氏)

最近はVDIだけでなく、より一般的なエンタープライズワークロードでの採用が増えているという

 安藤氏は日本法人の方針として、今後もさらに日本市場へのコミットを強め、販売パートナーやOEMパートナーの強化と支援、技術情報のオープンな提供などを通じた全国のエンジニア支援、顧客の理想的なIT基盤構築を支援するコンサルティングサービスの立ち上げを目指していくことなどを説明した。

ニュータニックス・ジャパンの方針と戦略

独自のハイパーバイザを強化、目指すのは“オンプレミス界のAWS”

 Nutanixは今年の.Next Conferenceで、同社が目標とする新たなITインフラの姿として「エンタープライズクラウド(Enterprise Cloud)」というビジョンを掲げている。同社 シニアシステムズエンジニアリングマネージャーの露峰光氏が、そのビジョンの背景や具体的な目標を説明した。

 現在の企業は、ITインフラに大きく2つの要件を持っている。段階的な投資、迅速さ、手間のかからない運用管理とセキュリティ/ガバナンスという「容易さ」、一方で長期的な視点に立ったコスト性、データへのガバナンス、適切なサービスレベル維持、ロックインフリーといった「コントロール性」の2つである。

企業がITインフラに期待すること。パブリッククラウド/オンプレミスのどちらかだけで実現するのは困難

 露峰氏は、前者は主にパブリッククラウドがもたらすメリット、そして後者はオンプレミスシステムがもたらすメリットであり、一度に両立させることは困難であることから、重要なのは両者を組み合わせ、併用しながら「バランスをとること」だと強調する。

 そのうえで、パブリッククラウドの持つ数々のメリットをオンプレミスで実現するものとして、Nutanixが目指すプラットフォームが「エンタープライズクラウド」であると述べた。

 「オンプレミスの中で非常に“クラウド的”な、迅速かつ柔軟、効率的にシステムが組める、というプラットフォームを目指している」「Nutanixは、エンタープライズにおけるAWSのような存在になりたいと考えている」(露峰氏)

オンプレミスで、AWSのようなパブリッククラウドのメリットを実現していくのが「エンタープライズクラウド」ビジョン

 Nutanixでは、「HCIのファーストステップ」として、ストレージリソースを“インビジブル”な存在にした。インビジブル、つまり“不可視”とは、管理者がその存在を意識することなく、管理の手間をかけずに利用できる状態を指している。

 それに続き、現在取り組んでいるのが「仮想化のインビジブル化」である。具体的には、Nutanix独自のハイパーバイザ「Acropolis Hypervisor(AHV)」をさらに強化し、仮想化プラットフォームまでNutanix製で統合していくというものだ。仮想化プラットフォーム市場ではヴイエムウェアが高いシェアを持っているが、Nutanixにおいては、すでに15%がAHVで稼働しているという。

 露峰氏は、AHVを採用するメリットとして、Nutanixに無償で付属しておりライセンス料がかからないこと、管理ツールの「Prism」でハードウェアやストレージと共に統合管理できること、開発段階からネイティブにセキュリティ機能が組み込まれていることなどを挙げた。AHV対応製品のエコシステムも徐々に拡大しているという。

 「AHVの利用シェアは増やしていく方針だ。もちろん、今後もVMwareやMicrosoft Hyper-V向けのサポートや機能拡張は続けるのだが、顧客がAHVによる統合のメリットを感じており、機能も強化していく。AHVの利用シェアは自然に増えていくものと思う」(露峰氏)

AHVに対応するエコシステムも徐々に拡大してきた

最新リリースではDockerに対応、次期リリースでは“クロスハイパーバイザ”化も

 前述した「エンタープライズクラウド」ビジョン実現に向けた取り組みとして、.Next Conferenceで発表された最新リリースの機能や今後のロードマップについても報告された。

今年2月提供開始のリリース4.6までの機能強化。「今後もこのペースでイノベーションを継続していく」(露峰氏)

 今月から提供を開始した最新版のリリース4.7においては、新たにDockerコンテナに対応した「Acropolis Container Service(ACS)」が提供されている。パーシステントストレージ(永続的ストレージ)機能も備えており、これにより、AHVやVMwareによる仮想化環境と同様に、コンテナ環境も統合して提供できる。

新たにコンテナサービスを提供。次期リリースでは、1クリックオペレーションも実現する予定

 またリリース4.7では、Nutanixクラスタをブロックストレージ化できる「Acropolis Block Services(ABS)」も登場した。外部サーバーからのiSCSI接続でアクセスが可能で、OracleサーバーからのアクセスではIOPS 20万以上を実現しているという。

 なお、Nutanix製のハードウェアアプライアンスでは、すべてのモデルでオールフラッシュ構成が可能になっている。NVMeフラッシュへの対応も進めており、これにより、ストレージベンダー製のオールフラッシュアレイに対抗していく構え。

 一方、今年末には次期リリース(開発コード名:Asterix)の提供開始も予定されている。

 次期リリースではまず、統合管理ツール「Prism」において、セルフサービスポータル機能を提供する。たとえば、社内の部門ごとにあらかじめクオータ(割り当てるリソース量上限)を設定しておき、あとは各部門の裁量で自由にプロビジョニングさせるような運用が可能になる。

Prismでセルフサービスポータル機能を提供する予定

 また、異なるハイパーバイザ環境(VMware ESXi/Microsoft Hyper-V/AHV)間で自由にワークロードを動かせる“ANY Hypervisor”な環境も実現していく。VMware vCenterをPrismに統合(インビジブル化)して統合管理を実現するほか、異なるハイパーバイザ環境を用いたDRなどを実現する。

 そのほか、Prismにおいて仮想ネットワークも管理/可視化可能にしていく方針が示された。

あらゆるハイパーバイザ環境を横断し、同じように扱える“ANY Hypervisor”を実現していく

 まとめとして露峰氏は、他のベンダーが提供するHCI製品との違いについて、Nutanixは「小規模な仮想化システム専用のインフラではない」点を強調した。

 「Nutanixは、もともとWebスケールのアーキテクチャを採用しており、小規模システムからデータセンターのコアシステムまで、すべての規模のワークロードに対応できる。あくまで『エンタープライズクラウドを実現するためのインフラ』が目標であって、HCIが目的ではない」

Nutanixが目指すのは現在のHCIではなく、それを超えたインフラ環境だと今後のビジョンを示した

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