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Ceph Storage/Gluster Storageそれぞれの新バージョンを発表

レッドハットのSDS戦略はOpenStack/OpenShiftとの連携重視

2016年07月25日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 レッドハットは7月22日、同社のSDS(Software-Defined Storage)製品「Red Hat Ceph Storage」と「Red Hat Gluster Storage」のそれぞれにおいて、最新版の国内発表を行った。発表会では、国内市場におけるSDS戦略が語られた。

「Red Hat Gluster Storage」と「Red Hat Ceph Storage」、それぞれの機能特徴と棲み分け。Glusterはファイルアクセス、Cephはオブジェクト/ブロックアクセスが中心

レッドハット プロダクト・ソリューション本部 本部長の岡下浩明氏

レッドハット プロダクト・ソリューション本部 シニアビジネスデベロップメントマネージャーの和田健一郎氏

Ceph Storageは基本機能をさらに強化、Gluster Storageはコンテナ対応

 Red Hat Ceph Storage(RHCS)は、オブジェクトストレージとブロックストレージの機能を提供するSDS製品。今回は、オープンソース版Cephの“Jewelリリース”をベースとしたメジャーバージョンアップにより「RHCS 2.0」となった。

 RHCS 2.0では、複数サイトで動作するクラスタ間での単一ネームスペースやデータ同期の提供、認証システム(Active Directory、LDAP、OpenStack Identity/Keystone v3)のサポート、Amazon S3やOpenStack Object Storage(Swift)との互換性強化といった新機能がある。

RHCSが提供する基本機能(左)と2.0の新機能、および2.1以降の機能実装ロードマップ

 また、RHCSのデプロイ/運用管理をシンプル化する新たな管理コンソール「Red Hat Storage Console 2」も採用された。構成管理自動化ツールの「Ansible」ベースで再設計されており、将来的には、もう1つのSDS製品であるRed Hat Gluster Storageの運用管理も、この新しいコンソールに統合していく計画だという。

RHCSの新しいGUI管理コンソール「Red Hat Storage Console 2」の画面サンプル

 RHCS 2.0の提供開始は8月中旬からの予定。サブスクリプション価格はストレージ容量単位となっており、390万円(税抜、256TB、Premium Support込み)から。

 なお前日の7月21日には、NECへのRHCSのOEM提供開始も発表されている。第一弾として、「Red Hat OpenStack Platform」と組み合わせたRHCSが、NECが提供する統合型プライベートクラウド構築基盤「Cloud Platform for IaaS」として出荷される。出荷開始は9月末からの予定。

 一方、Red Hat Gluster Storage(RHGS)は、NAS/ファイルストレージの機能を提供するSDS製品だ。SMB/CIFSやNFSといったファイル共有プロトコルに対応しており、WindowsやLinuxから直接ファイルアクセスできる。

 今回、最新版として発表されたRHGS 3.1.3では、PaaS基盤ソフトウェア「Red Hat OpenShift Container Platform(OpenShift Enterpriseから改称)」との連携による“コンテナネイティブな”ストレージ機能が提供される。具体的には、OpenShiftのコンテナ管理機能(Kubernetes)との連携により、アプリケーションのコンテナとストレージのコンテナをまとめて管理し、コンテナへのデプロイができる。

RHGS 3.1.3ではOpenShiftのKubernetes連携に対応し、アプリケーションコンテナとストレージコンテナを統合管理/デプロイできる(画像はWebサイトより)

RHGSの基本機能、3.1.3の新機能、および3.2以降の機能実装ロードマップ。開発コミュニティでは次世代版「Gluster.Next」にも取り組んでいる

 RHGS 3.1.3は6月末から提供を開始している。サブスクリプション価格はノード単位となっており、195万円(税抜、2ノード、Premium Support込み)から。

「コンピューティングが間近にある」レッドハットのSDS市場戦略

 発表会では、レッドハットのソフトウェア製品群におけるSDSの位置付け、国内市場におけるSDS戦略などが説明された。

 同社 プロダクト・ソリューション本部 本部長の岡下浩明氏は、4月に発表した今年度の事業戦略でOpenStack製品などの「クラウドビジネス」を重点ビジネス領域の1つに据えたことに触れた。すでにOpenStack製品ビジネスは成長を始めているが、「その流れに沿うように、SDSのビジネスも、この数カ月で急速な立ち上がりを感じている」という。

 岡下氏は、これからのITインフラに求められるアジャイル性を実現するために、SDI(Software-Defined Infrastructure)には「4つの要素」と「4つの要件」があると説明する。レッドハットではそれらを満たすSDIを、OpenStackやOpenShift、そしてSDSという製品スタックにより、実現しようとしているという。

アジャイルなIT基盤を実現するSDIを、OpenStackやOpenShift、そしてSDSで実現するのがレッドハットの目標

 OpenStack、OpenShiftとの連携、組み合わせによるトータルなSDIソリューション化が、レッドハットのSDS戦略の1つだ。同社 プロダクト・ソリューション本部 シニアビジネスデベロップメントマネージャーの和田健一郎氏は、レッドハットの考えるSDSは「“Computing(の要素)”が間近にある」ものであり、単体製品としてだけでなく、IaaS(OpenStack)やコンテナ+PaaS(OpenShift)との連携ソリューションとしての販売にも注力していく方針を強調した。

 もっとも、これには現実的な市場判断もある。和田氏は、特にオブジェクトストレージ(RHCS)については、まだ国内市場で単体での導入ニーズが多くなく、一方でOpenStackのニーズが盛り上がってきたと説明する。そこで、まずは今夏、OpenStackとの連携ソリューションとしてのRHCSをアピールし、並行して単体導入のマーケットについても可能性を図っていくと語った。

単体ストレージ製品としてだけでなく、OpenStack/OpenShiftとの連携ソリューションとしての販売にも注力する

 また、SDS市場をブロック/オブジェクト、ソフトウェア/ハードウェアの4象限で区切った図を示し、レッドハットとしてはまず、SI/販社パートナーとの協力により「ソフトウェア」分野の市場を押さえていくと述べた。ハードウェア(アプライアンス)市場に関しては、今回発表したNECとのOEM提携のようなモデルを推進していく方針。

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