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「さくらじまハウス 2016」セッションで披露されたCTOの本音

はてな×BASEのCTO対談が鹿児島の桜島で聞けるしあわせ

2016年07月20日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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CTOとして走り続けるための努力とは?

 もちろん、CTOにも向き不向きがある。えふしんさんは「最初はスタートダッシュできる人が必要。でも、どこからか人のマネジメントが必要になる」と答える。一方で、田中さんは「経営の中でテクノロジーの接点になるので、技術を知らない人に技術のことを知ってもらえる器用さが求められる」と語る。

「技術がわからない人に技術を説明できる器用さが必要」と語るはてなCTOの田中慎司さん

 CTOに定年はあるのか? えふしんさんは「技術のトレンドがきちんと追えれば特に定年はない」、田中さんは「『頼れる兄貴的なキャラ』など、まわりから認められ続ければ定年はない」と答える。とはいえ、グローバル企業に成長したために英語が不得意だと難しいとか、あまりにも周りのエンジニアが若くなりすぎて、会話が通じなくなると潮時になるという。

 CTOとして走り続けるには、やはり努力が必要だ。えふしんさんは、「受託時代は、案件の中で1つチャレンジしようというのを心がけてた。責任はうちが持つと言えば、だいたいできることがわかったので(笑)」と語る。実際、えふしんさんがペパボ時代にトラフィックが来るサービスということで、作ったのがモバツイだったという。

 田中さんは、「わからんことはないようにしよう」というチャレンジ。そのため、クラウドやインフラ、モバイル、JavaScript、機械学習などとにかく幅広く触って、現場の感覚をつかんできた。「テクノロジーでは苦手意識を持たずに、上から下まで全部やってみようかなと。もちろん、現場の人にはかなわないけど、おおまかな勘や感覚は理解できる」(田中さん)。

「上場してCTOの役割は変わった?」「もしCTOじゃなかったら?」

 続いては田中さんとえふしんさんが相互に質問し合う時間。えふしんさんが「前CTOとの違いは?」と聞くと、田中さんは「前CTO(伊藤直也さん)ははてなブックマークを作った人なので、ビジョンがあって、先頭に立ってプロダクトを盛り上げていた。インフラまわりの責任者だった僕はエンジニアの層を厚くするとか、教育にフォーカスしたというのが一番の違いかなと思う」と答える。

 えふしんさんはさらに「上場のフェーズを経て、役割は変わったか?」と質問すると、田中さんは「上場前は外部からの投資を受けなかったので、VCにいろいろ言われるプレッシャーがなかった。上場する際は一定の売り上げなどが必要なので、プレッシャーもかかるようになったけど、事業責任者というレイヤーがあるので、エンジニアが直接売り上げを意識することはない。ユーザー数やスケジュールのような中間指標の方を重視している」と語る。そもそも、はてなブックマークやブログの場合、ユーザーのUXがそのまま売り上げに直結するモデルでもなく、検索流入やGoogleの機嫌のような外部要素が多いため、評価するのが難しいという背景もあるという。

 今度は田中さんがえふしんさん質問するターン。「CTOでなければなにをやっていたか?」という質問に対しては、えふしんさんはまず「肩書きにこだわっているわけではないので、より技術にフォーカスする人がいたらCTOは譲ってもいいと思っている」と回答。その上で、今までのようにTwitterやBASEの世界に共感し、技術でサポートするという役回りではなく、自ら「GitHubみたいな世界を作りたい」と語る。後任CTOにモバツイの開発、起業、売却まで経験しているえふしんさんのような起業経験を重視するかという質問に対しては、「今後、アーキテクチャを変えていくことを見据えると、むしろ大規模なシステムの経験を持っている方がうれしい」という回答だ。

CTOじゃなかったら、自分自身で世界を作ってみたいと語るBASE CTOの藤川真一さん

「来たチャンスは断らない」「信頼と信用のサイクルを意識せよ」

 若いエンジニアにどのようなチャレンジを期待するか? 田中さんは、とにかく来たチャンスは断らないことと語る。「先入観を持って自分のやることを狭めている若い人の中にもいる。これはもったいないなと。得意・不得意を気にせず、チャンスをつかみとったほうがよいと思う」(田中さん)。

 さらに田中さんは、「技術を勉強するのが得意だけど、それを提案につなげるのが不得手な人も多い」と指摘。「勉強会花盛りだけど、なにかに役立てるという意識が低いのかもしれない」と法林さんが応じると、「マイナスをゼロにする仕事はわかりやすいので、そっちにみんな飛びつくけど、ゼロをプラスにする仕事も切り開いていったほうがよい」と田中さんは語る。

まさに安定のモデレートでCTO2人から本音を聞き出す法林浩之さん

 えふしんさんは、「期待されたことを期待通りにやったとき、相手が抱くモノが『信頼』。そして信頼できる根拠が『信用』」という言葉の意味を説明した後、「日常的な上司の依頼をいかに達成するか、期待通りにこなしているかを意識する。その結果で信頼が得られて、次の仕事にステップアップできる」と指摘。「信頼」と「信用」のサイクルを繰り返すことで、転職する際にも有意義に機能するという。

 会場からの質問にも対応。「コミュニケーション能力で悩んでいるエンジニアが多いけど、どうしたらよいか?」という質問に対して、えふしんさんは、「炎上しているブログに対して評論して、自分のブログが炎上するかどうか調べてみる。これは本当に鍛えられます」と爆笑回答。田中さんは「SOFTSKILLS」(日経BP刊)という書籍を推奨。「コミュニケーションが得意じゃない人は、アドリブでがんばるのは難しい。だから、場を設定するとか、シナリオをあらかじめ作っておくとか、事前準備をきちんとしておくとうまくいくと思う」とアドバイスした。

 法林さんのつつがないモデレートもあって、盛り上がったCTO対談。終演に際して司会のあやのちゃんが「この対談が鹿児島で聞けるとは思わなかったですね!」と会場に振ると、参加者からも大きな拍手がわき上がった。

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