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プラグ&プレイのIoTゲートウェイ、モバイル回線、データ可視化アプリなど標準提供

IIJ、デバイス/NW/クラウドを一体化したIoT基盤サービス

2016年07月20日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 インターネットイニシアティブ(IIJ)は6月19日、モバイル回線やWAN、デバイス管理・制御機能、データ可視化・解析機能などをフルマネージド型で一括提供する「IIJ IoTサービス」を発表した。今年11月から順次提供開始する。

「IIJ IoTサービス」の概要

発表会に出席した、IIJ 代表取締役会長 CEOの鈴木幸一氏

IIJ クラウド本部 副本部長の染谷直氏

企業のIoTシステム構築に必要なインフラをフルマネージドで一括提供

 IIJ IoTサービスは、企業のIoTシステム構築において必要となるIT基盤を、「コネクティビティ(回線サービス)」「プラットフォーム」「機器(デバイス)」という3分野のフルマネージドサービスとして提供するもの。IoT活用に取り組む企業が個別に構築する手間や時間を省き、トライアル(POC)実施から本格活用までの迅速化をサポートする。

具体的な提供予定サービス群。まずは赤く示されている第一弾サービスを、2016年11月から提供開始する

 コネクティビティ分野ではまず、MVNOとしてのノウハウを生かした安価なモバイル接続サービスを提供する。具体的には「速度制限なし、上り0.2円/MB、下り0.6円/MB(夜間は下り0.2円/MB)」の従量課金回線を提供するとしている。

「コネクティビティ」ではまず、安価かつ高品質、セキュアなモバイル回線を提供

 またプラットフォーム分野では、デバイス管理/制御の機能と、デバイスから収集したデータの可視化の機能を統合して提供する。IIJでは、これまで自社開発ルーターのリモート管理機能で培ってきた技術を生かした「デバイスエージェント」を開発しており、“プラグ&プレイ”によるデバイスの自動設定とリモートからの管理/監視、制御を可能にする。

 なおIoTデータのリアルタイムデータ可視化機能や、データの変化に基づく予兆監視、自動制御などの機能も、同プラットフォーム上で提供する。

「プラットフォーム」では、デバイス管理/制御とデータ可視化などの機能を統合した運用管理基盤を提供する

デバイスの“プラグ&プレイ”自動設定やリモート管理が可能。またリアルタイムデータ可視化機能や予兆監視/自動制御機能も提供する

 「機器(デバイス)」分野では、前述のデバイスエージェントを搭載した自社開発のルータやIoTゲートウェイ機器を提供する。IoTゲートウェイは、各種センサーネットワークプロトコルやスマートメーター/HEMSコントローラー接続に対応しており、LTE内蔵モデルも現在開発中。今後もラインアップを拡充していく。

「機器」分野では、リモート管理に対応した自社開発ルーターおよびIoTゲートウェイをラインアップ

 IIJでは、今年はまず大規模企業におけるトライアル利用向けのサービス提供を開始し、来年(2017年)以降、本格的な利用を可能にするための閉域網サービス、デバイス自動管理サービス、ビッグデータ解析サービスなどを追加していく方針だとしている。また、同サービスにかかるパートナーも募集しており、今回のプラットフォームを利用して業種別のアプリケーションなども提供していく方針。

 なお、現段階では各サービスの料金は「未定」で、サービス提供開始時にあらためて発表される。料金の目安として、「基本的には、デバイスゲートウェイ、モバイル接続、プラットフォームの基本機能を含めて、1拠点あたり月額1000円くらいで提供できるような試算をしている」(IIJ)と述べた。

今後、さらに企業の本格利用に向けてサービスラインアップを拡充していく計画

IIJが考える「真のIoT世界を支えるIT環境」とは

 IIJ クラウド本部 副本部長の染谷直氏は、IIJではこれまでもIoT/M2M通信やデバイスのリモート管理、データ分析基盤としてのクラウドなど、IoT関連のサービスや技術に取り組み、電力/エネルギーや医療/ヘルスケア、製造業、サイネージ、交通/車両などの分野における実績もある。

 今回のIoTサービスは、こうした従来からのサービスノウハウや技術を集約し、さらに“IoT最適化”を図って「IIJが考える『真のIoT世界を支えるIT環境』を提供する」(染谷氏)ものだという。この“真のIoT環境”について、染谷氏は「デバイス/ネットワーク/クラウドの一体管理」「セキュリティ機能を備えるネットワーク」「デバイス進化と分散型データセンター」という3つのポイントを挙げて説明した。

IIJが目指すIoT環境の将来像

 3つめの「分散型データセンター」については、超低レイテンシ(超低遅延)な環境を実現するために必要だと、染谷氏は語る。「医療系のIoTやコネクテッドカーでは、求められるレイテンシはほぼリアルタイムの『数ミリ秒』クラス。しかし現状では、地方からのモバイルアクセスなどでは『数十~百ミリ秒』かかっている」(染谷氏)。全国に分散データセンターを配置することで、超低レイテンシ環境に対するニーズに応えていく構えだ。

 また同社クラウド本部 ビッグデータソリューション課長の岡田晋介氏は、「コンテナデータセンターよりもさらに小さいマイクロデータセンターが、地域に分散していく」うえでは、それぞれが自律的に稼働する必要があり、そのためにはネットワークやクラウドの管理/制御機能の自動化が必要になると指摘。IIJでは管理/制御の自動化に注力して開発を進めてきていると語った。

 なお発表会では、IIJ IoTサービスの売上目標として「2020年で100億円」という数字が挙げられた。同社会長兼CEOの鈴木幸一氏は、「とりあえず取りかかりの(スタート段階の)数字。先の話ではなく直近の世界として、100億程度を想定している」と説明し、将来的にはIoTサービスがさらに大きな事業へと拡大していくことへの期待を示した。

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