このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

最新パーツ性能チェック 第196回

本日7/19発売のNVIDIA新ミドルクラスをレビュー

新ミドルレンジ「GeForce GTX 1060」ベンチマーク VR元年に相応しいお手頃&ハイパワーGPUなのか?

2016年07月19日 22時00分更新

文● 加藤勝明 編集●ジサトラアキラ

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

GeForce GTX 1060のVR性能は?

 GTX 1060はVRのためのGPUでもあるなら、ゲーム検証のラストはHTC「Vive」で締めくくりたい。描画負荷が高めのVRゲームの代表として「theBlu」を使用する。テストは「Reef Migration」を再生し、3分過ぎに出現するクラゲの大群の中に入る時までのフレームレートを「Fraps」を計測した。

↑「theBlu」のフレームレート

 VR推奨環境を満たせないGTX 960は論外として、GTX 970以上であれば現時点でのパフォーマンスに違いは出ない。Viveの場合はフレームレートが90fpsでキャップがかかるためだ。

 そこで各GPUがどれだけVRの処理に余裕があるかを見るためにtheBluにおけるフレームタイミング(1フレーム描画するのに要した時間)を比較してみた。90fpsを維持するには1フレーム11ミリ秒未満で描画を終えればよいが、強力なGPUになればこれがどんどん短くなる。短いぶんだけより重いコンテンツも表示できるという訳だ。theBluはPascalの目玉であるSMPには非対応だが、Pascalにはもうひとつ、VR処理時に効く機能としてグラフィックとコンピュートタスクを自在に切り替える「プリエンプション」がある。これの効果を期待したいところ。

↑GTX 1060のフレームタイミング。だいたい9ミリ秒以内で終了している

↑GTX 980はGTX 1060とほぼ同じ

↑GTX 970だと状況によって10ミリ秒を微妙に超えるフレームが出現する

↑VR環境の要件を満たせないGTX 960だと、常時11ミリ秒以上必要になる

 NVIDIAのいうところの「GTX 980並みの性能」は、Rise of the Tomb RaiderのようにVRAM使用量がネックになるシチュエーション、あるいはVRゲーミングにおけるパフォーマンスを示していると考えるべきだろう。だが今後SMPや物理演算を駆使したVRコンテンツが増えれば、GTX 1060のアドバンテージはさらに確たるものとなるはずだ。

温度とクロックもチェックする

 最後に高負荷時のGPU温度とGPUクロックの推移を確認しておこう。Rise of the Tomb Raider(DirectX 12)をプレー状態で放置し、30分間の推移を「HWiNFO64」でGPU温度とGPUクロックを追跡した。

↑GPUクロック(左軸)とGPU温度(右軸)の推移(30分間)

 GPU Boost 3.0の効果で最高クロックは1911MHzを記録したが、温度等の上昇により1822.5MHzで安定した。GTX 1060は1080等よりCUDAコア数が少ない分クロックを高めに振ってあるが、FEのGPU温度は79~80℃で安定している。シングルファンにしては冷却力は悪くない。

 以下にサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」による温度分布を示す。最も温度が高かったのはカード中央の黒いカバーのかかった部分で、68~69℃を記録。カードのど真ん中に高温の部分が露出するカードはなかなか見られないが、別に人の手が触れる所ではないので実用上問題ない。逆に後方に張り出した金属製ファンハウジングは温かくなる程度だった。

↑動作中のGTX 1060カードの状態をサーモグラフィカメラで撮影したもの

まとめ:バランスは良好だが、国内流通分におけるコスパは??

 以上様々な方角からGTX 1060をチェックしてきたが、“GTX 980並みの性能”という謳い文句は、やや誇張は入っているもののVRや一部ゲームではGTX 980に比肩するものがある。SMPやFastSync、HDR出力対応といったPascalならではのアドバンテージ、さらに省電力性能の良さ(ただし日本では直販ルートのないFEの場合)も考慮に入れると、実にバランスのとれた製品に仕上がっているといえる。Vulkanで驚くべき伸びを見せたRX 480も面白いが、新旧問わず安定した性能を出せるという点では、GTX 1060の方が優れている。GTX 960より下のビデオカードを持っているなら、ぜひこの機会にグレードアップを検討すべきだろう(GTX 970や980からGTX 1060への乗り換えはメリットが薄すぎる。こういう場合はGTX 1080を狙うべきだ)。

 ただ問題は国内価格の設定だ。メーカーこだわりの高性能クーラーや高耐久設計の開発費、さらに代理店などの利益が上乗せされた結果高価格モデルが登場するのは仕方ないところだが、“X60”番台のカードで4万円のモデルはちょっと厳しい値付けだ。 ビデオカード1枚に4万円出せる胆力と見識があるなら、GTX 1070まで頑張る人も相当数出てくるだろう。もちろん3万円台前半のモデルもあるが、クーラーまわりの性能が気になるところだ。

 GPUの設計は良いのに「性能がGTX 970相当だから同じような値段でいいよね」という理屈が見えてしまい購買意欲をそがれてしまうような国内での価格設定は残念でならない。“X60系なのに性能は1世代前のX80相当”というGTX 1060本来の魅力が引き出せないと、ライバルRX 480との差別化も難しい。

 ただこの状況を上手く利用できないのがAMDの運のなさ。日本ではGTX 1060はオリジナルクーラー搭載モデルが主力になる一方で、RX 480のオリジナルクーラーモデルは7月下旬から8月にずれ込む見込みだ。その間にいかにゲーマーの心をつかむかが、NVIDIAの急務となることは間違いない。

関連サイト

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

ピックアップ

ASCII.jpメール アキバマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中