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ASCII STARTUP 今週のイチオシ!第31回

目指すは物流業界の標準となるプラットフォーム作り

Amazonと異なる流通最適化とは?オープンロジの倉庫ハック

2016年07月15日 07時00分更新

文● 三浦優子 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田 元

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核になるのはこれまでとは異なるITシステム

 オープンロジ設立からサービスを提供するまでの10ヵ月間は、「仮説を立て、現場で検証を行うことの繰り返しだった」と伊藤氏は言う。

 現場とは倉庫の中だ。そこで冒頭に紹介した池袋にオフィスを置く意味が出てくる。電車に乗ってすぐ倉庫に出向ける場所にオフィスがある必要があった。

 業務提携を行った倉庫とは全く新しいルールを決め、ゼロから新しい仕組みを構築した。Fujisan.co.jp時代の付き合いから、倉庫側との信頼関係もすでにあったのが大きい。

 「念頭に置いたのは、物流ビジネスの経験者ではなく、ソフトウェアエンジニア主導による物流倉庫の新しいシステム開発だった」(伊藤氏)

 物流事業の経験者ではなく、まったく異なるソフトを開発していたエンジニアがシステム開発を担当したのは狙いがあってのことだ。通常、倉庫にはエンジニアは存在しておらず、システムを利用している場合でも、今となってはかなり古い在庫管理システムなどが使われている。

 「見せてもらうと使いにくいものが多い。そこで、特別なトレーニングを受けていない人でも使うことができる、誰でもわかるUX(ユーザーエクスペリエンス=ユーザー体験)が必要だとわかった。そこで、従来よりも生産性が10倍高いUXでのシステムを作ることで、物流の現場を根本から変えていくことを目指した」

埼玉県にある提携先の倉庫の1つ(画像提供:オープンロジ)

 当然だが、物流の現場には倉庫を管理するスタッフがいる。現在でも、倉庫のビジネスはシステムというよりも、この倉庫を管理するスタッフ個人が持つ属人的なノウハウによるところは多い。

 「倉庫には、”倉庫の神様”のような人が支えている倉庫もあれば、そこまでスキルを持っていない人が管理している倉庫もある。我々が提供するシステムを利用することで、誰が管理しても、”倉庫の神様”が管理しているのと同等の効率的な倉庫管理ができるシステムを目指している」

 効率的な倉庫管理といえば、機械を取り入れた管理を行うアマゾンを思い浮かべる。比較して、オープンロジの倉庫管理はどうなのだろうか。

 「我々が目指しているのはアマゾンの機械で自動化された倉庫とは目的、狙いがまったく違うもの。アマゾンの物流事業は、マーケットプレイスで売上をあげるためのものととらえている。一方で当社はアマゾンで商品を販売するお客様をはじめ、複数のモールで商品を販売する際に利用できる物流インフラで、細かい業務や要望にも柔軟に対応している。複数モールで商品を売るお客様にとってメリットがある倉庫を目指している」

 事業者にとってのメリットを志向したこのような倉庫を実現するためには、エンジニアも含めて倉庫に出向き、課題を見つけ出し解決することを繰り返し、最適な倉庫のためのシステムを作りあげていくしかない。実際オープンロジでは、倉庫での細かな導線を記録し、人・モノの動きを最適化するためのオペレーションを検討し続けている。

 「システムを使うことで、人よりも早いスピードで改善するシステム作りを進めている。現在、スタッフは15名だが、もっとエンジニアの数を増やしていきたいと毎日のように面接を行っている」


倉庫の最適化は日本だけでなく、世界共通の課題

 出版関係者の視点からすると、北池袋というスタートアップには珍しい立地の理由にも納得できた。レガシーな業界を変革するならば、エンジニアチームと現場の近接性の重要度を忘れてはならない。

 かつての経験が現業につながることは当然のことだが、アマゾンと同様に本(こちらは雑誌だが)から始まったテストケースでの”経験”を一段階昇華させ、システムそのものに移している部分は注目すべき点だ。

 出版というじつは大変レガシーな分野における流通では、いわゆる取次会社がその役割を長く担ってきた。雑誌についても多くのルールがあり、各プレイヤーがなかなか踏み出せなかった領域で、ベンチャーならではの身軽さでやってのけた経験を拡大させただけでなく、「流通」という仕組みそのものへとフォーカスし、それを最適化させる姿勢には学ぶべきところが多い。

 ビジネス向けSaaS分野のように、大口顧客ばかりで見向きもされなかった中小をテクノロジーでまとめあげ、どこまで規模を拡大するのかが楽しみだ。

 伊藤氏によれば、現段階のオープンロジは「事業の黒字化には至っていない」が、徐々に利用者が増えることでスケールするポイントは見えているという。

 「日本でのビジネスをさらに強化し、黒字化することが必須ではあるが、そもそも倉庫の最適化は日本だけでなく、世界共通の課題。培ったノウハウやシステム運用は海外でも事業展開していくことは可能だと考えている。2017年には現地企業と提携し、まずはSaaSとしての仕組み提供で東南アジア進出を検討している。これがうまくいって、さらに資金調達ができれば、アメリカ、中国へと進出したい」(伊藤氏)

 「物流倉庫ビジネスに関しては、独占的といえるブランドを持っている企業がない。荷主と物流倉庫にとってもWin-Winとなるようなプラットフォームをつくり、物流といえばオープンロジと言われるような存在を目指したい」(伊藤氏)とのことで、同種のベンチャーで存在していない。では、既存の物流会社はこのとき競合となるのか。

 「既存の物流倉庫会社はパートナーだと思っている。単に物流業務をアウトソーシングするだけではなく、プラットフォームとしてのシステム。低価格で、使いやすく、効率的なシステムを荷主、物流倉庫双方の視点で提供することが重要となる。また、荷主にとってみれば、オープンロジに在庫を預ければ、世界のどこでも商品を売ることができたり、一方で物流会社からは、さまざまな荷主の物流業務を簡単に請け負ったりできる。そういう仕組みを作り、ゆくゆくは根本から物の流れを変えていけるような取り組みをしていきたい」

 この目標に向け、今日もシステム開発、顧客獲得のための努力が続いていく。

●株式会社オープンロジ
2013年12月25日設立。物流をもっと簡単・シンプルにをコンセプトに、シンプルでわかりやすい物流アウトソーシング事業を展開するスタートアップ。
直近では2016年5月にIMJ Investment Partners、SMBCベンチャーキャピタル、インフィニティ・ベンチャーズなどから2億1000万円の資金調達を実施。東南アジアを中心に海外展開を狙う。
社員数は20名弱で、エンジニア比率が半数以上。「次世代の物流インフラをつくる」というビジョン達成のため、エンジニアを中心に増員予定。

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