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地元愛あふれたヨコスカネイビーパーカーはどうやって実現したのか?

真紅の女子大生がYOKOS会議で訴える「地方創生=自分創生」

2016年07月04日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ヨコスカバレーの活動をアピールする6月26日のYOKOS会議において、もっとも大きな喝采を浴びたのは、横須賀を盛り上げる若者たちの「声」だった。強力な熱量で横須賀を盛り上げる2人のピッチ、若者らしい「本音」があふれたパネルをレポートする。

ワクワクを持っている若者とそれを後押しする大人

「吉田市長も熱い方ですが、負けず劣らず今の横須賀の若者も熱いんです」

 こう切り出したのは、スカペンゴという学生コミュニティを運営している竹岡力さんだ。竹岡さんは「横須賀で確実に育つ若者コミュニティ」というタイトルで、自ら考え、行動し、大人まで巻き込んできた横須賀の若者たちの活動事例を披露した。

学生団体スカペンコの代表竹岡力さん

 1つ目の事例は、脚本やキャストをすべて横須賀の現役高校生が手がけた高校生ミュージカルだ。発端は横須賀市主催の若者向けのミュージカルを観に行ったある女子高生のツイート。ミュージカル自身は非常に感激的だったのに、周りを振り返るとおじいちゃん・おばあちゃんばかり。もっと同年代に関心を持って欲しいというツイートをしたところ、それをたまたま見た市の職員が「だったら自分たちでやってみたら?」とバックアップを提案。結果として、女子高生自らが周りを誘い、学生だけのミュージカル楽団が結成されたという。もちろん、素人の集まりだったが、横須賀出身の劇団四季の関係者が演技を指導。1月には初公演にこぎ着け、体育館が同じ世代の学生さんでいっぱいになったという。

 もう1つの事例は、女子高生が考案した「ヨコスカネイビーパーカー」。竹岡さんたちが主催した学生向けのコンペで最優勝を獲得し、地元の経営者のバックアップのもと1000着が完売したという代物だ。

地元高校生によるミュージカル

1000着を売り切ったヨコスカネイビーパーカー

 こうした事例がなぜ実現したのか? 横須賀市の基本計画の中に「個性豊かな人と文化が育つ町」と謳われているほか、なにかをやってみたいというワクワクを持っている若者が多いというのがその背景。そして、こうした若者たちの背中を押す大人が多いのも1つの特徴。「ミュージカルであれば市の職員、ネイビーパーカーであれば地元の経営者が若者に対して、もっとやっていいんだと後押ししてくれる。そして行動を起こした若者に刺激を受けて、別の若者が行動を始める。これが今、横須賀で起こっているサイクルだと考えている」と語る。

 次の展開としては竹岡さんが進めてきた「ヨコスカ未来100人会議」を継続的に開催し、若者たちの巻き込みをますます進めていくという。また、行政との連携も深め、将来的には「若者のシンクタンク」としての役割を担っていく。「若者が主役になれる大人の町にしていきたい。若者がなにかをやりたいことを当たり前に発言できる環境作り、それぞ実現するための活動場所や基金、ネットワークが必要になってくると考える」という竹岡さん。次のステップとして、長野県の小布施町で毎年開催されている「小布施若者会議」のように、横須賀でも全国の若者が集まるような合宿を開催したいという。

アイデンティティのヨコスカネイビーパーカーを1000着を売り切るまで

 圧倒的なピッチで会場を沸かせたのは、若干19歳の八村美璃さん。真紅のドレスで登壇した八村さんは仲間と共に主導した「ヨコスカネイビーパーカー」のプロジェクトについて、情緒豊かに会場に語りかける。

ヨコスカネイビーパーカー (y.s.plus)代表の八村美璃さん

 横須賀市で生まれた八村さんは途中13年の川崎生活を経ているため、横須賀歴は7年。しかも7日前に横須賀を離れ、大学の近くに引っ越してしまうことになったという。こうした自身について「よそ者の目とふるさとの目を持っている貴重なハーフ」と説明する。

 横須賀の若者にとってみると、横須賀は決して誇り高き我が地元と言えないようだ。「横須賀は昆布臭くて、ワカメ臭い。鎌倉の海となんか違う。これが大多数の若者の本音なんです」と八村さんは語る。そんな思いを持った八村さんが女子高生だったとき、参加したのが竹岡さん主催の学生向けコンペ。「ヨコスカネイビーバーガーじゃなくて、ヨコスカネイビーパーカーを作ればいいんじゃね」という軽いノリでスタートした女子高生たちのプロジェクトだったが、コンペでは最優秀賞を獲得にするに至る。

 さらに八村さんたちは、このヨコスカネイビーパーカーを実際に発売することにする。「パーカーで一番重要なのは、ビジネスではなく、アイデンティティを示すこと。そして、まちを盛り上げること。だから、みんなが着ないと意味がない」(八村さん)ということで、デザインや地元とのコラボを八村さんたちが仕掛け、実際の制作には地元のコワーキングスペースであるヨコスカテラスや行政などの大人たちが手を貸すという体制で販売に挑む。地元商店街のコラボやSNSでの積極的な発信も功を奏し、結果的にネイビーパーカーは1年で1000着を売り切ることに成功する。

メンバーみんなで考えたヨコスカネイビーパーカーの施策

デザインはすべて自分たちで手がけた

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