このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第2回

クラプトン新譜など優秀録音も紹介!

麻倉特薦:原田知世のカヴァーハイレゾ、アイドル史上の名曲

2016年06月15日 09時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

スクリャービン:ピアノ・ソナタ全集
イリヤ・ラシュコフスキ―

推薦

 レンジの広さと、なまなましさ、立ち上がり/下がりの鮮明さ、音色の豊かさ、さらには音色のパレットの多彩さが堪能できるピアノハイレゾだ。オーディオ的に言うと、音の粒立ちが細やかで、その一粒一粒に違う色が与えられ、響きとして音場空間に勢いよく拡散する時に、色もキラキラとあでやかに舞う。スクリャービンは、音の色彩感を追求した作曲家。この演奏では単に正確に楽譜を音にするだけでなく、作曲家が追求した色のダイバーシティも、味わえる。ハイレゾだからスクリャービンの色が見えるのである。

イリヤ・ラシュコフスキ―IlyaRashkovskiyは2005年、香港国際ピアノコンクール、2012年、伊・ピネロロ市国際ピアノコンクール、第8回浜松国際ピアノコンクールにて、優勝したロシアのピアニスト。2015年11月23~24日、武蔵野市民文化会館小ホール録音。

WAV:192kHz/24bit、FLAC:192kHz/24bit
日本アコースティックレコーズ、e-onkyo music

Art
纐纈歩美

 纐纈歩美は1988年生まれ、岐阜県土岐市出身の女流サックス奏者。「かけつあゆみ」と読む。Artは、リーダーアルバムとしては通算6作目。ニューヨークシリーズの第3弾だ。Artとは、サツクスのレジェンド、アート・ペッパーのこと。CoolBunny、StraightLife、Diane'sDilemma……などアート・ペッパーの自作を含み、名演で知られる曲に挑戦した。ジェレミー・マナシアのピアノ、マイク・カーンのベース、マーク・テイラーのドラムスとのトリオ。

 これみよがし的な高解像度ハイレゾではなく、楽器が持つ特有の質感を丁寧に再現しているのが好ましい。息が勢いよく吹き込まれ、胴を共鳴させて音を出すというサックスの発音原理が体感できるような太く、剛性感の高い音だ。バックのピアノとベースはあまり目立たない。たとえソロの時でも音像的には控えめだ。リーダーに配慮していることが分かる。快速で進む音の流れが、心地良く、フラットで淀みの無さが音楽的な快感だ。

WAV:96kHz/24bit、FLAC: 96kHz/24bit
M&I、e-onkyo music

【サンダーバード音楽集~オリジナル・スコアによる
広上淳一指揮,東京ガーデン・オーケストラ

 1965年製作のマリオネットSF番組「サンダーバード」のテーマ曲集。最近発見された作曲者バリー・グレイのオリジナル・スコアに基づく演奏だ。ブリリアントで派手なオーケストレーション。弦も金管も打楽器も大活躍。濃い感情を込めた往年の西部劇のようなアメリカンな音楽は、映像と共に聴くにふさわしい。2曲目「原子旅客機組曲」。グローフェにような音の描写性が楽しい。音は解像度が高く、各プルト、楽器の音色がクリヤーに捉えられている。メインの弦楽だけでなく、木管ソロや打楽器ソロも明瞭だ。トゥッティでも粒立ちが良く、質感も高い。各プルトが思いっきり主張している音の集合だが、それらのバランスは好適。明るく、輝ける音色だ。2015年12月28日、杉並公会堂で録音。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit、WAV:192kHz/24bit、FLAC:192kHz/24bit
DENON、e-onkyo music

TONES
よしうらけんじ

推薦

 日本が世界に誇るパーカッション奏者よしうらけんじの4枚目のソロアルバム。e-onkyo musicサイトのインタビューによると「楽器の響きを活かすなら、石造りのホールで録音してみてはどうか?」との提案で、録音は河口湖の円形ホールに決定。「木と石とコンクリートを組み合わせた贅沢な造りのホール。響きを聴いて、即決しました。ここなら豊かな残響と共に"温かさ"も収録できる」と述べている。

 音にはいつくかの注目ポイントがある。第1に品位が高い。太鼓を荒々しさを粗々しく録るのではなく、細やかなグラテーション感で、打楽器の立ち上がりと余韻を描いている。そのキメの細かさがまずは特徴的。さすがはハイレゾの表現力だ。第2に音場が深くて、広い。メインの太鼓はセンターやや奥に位置するが、その他の打楽器は左右広くに、または奥行き深くに位置し、それらが発する音は2つのスピーカーの三角形の頂点で聴いている私の耳元まで飛んでくる。2015年7月1日、2日の2日間、河口湖円形ホールで192kHz/32bit録音。

WAV:192kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
FROG BEAT MUSIC、e-onkyo music

TheUnitySessions
PatMetheny

 2014年の北米・ヨーロッパのワールド・ツアーを行ったユニット「ユニティ・バンド」の、ニューヨーク 5ANGELSシアターでのスタジオ・セッション。1曲目の「Adagiaa」はアコースティック・ギターのソロ。音場内部に拡がり、消えゆく響きがとても美しく、耳の快感だ。音色はスウィートで、すべらかで、芳醇。2曲目「SignoftheSeason」。冒頭、細かく刻むドラムスのリズムにのって、テナーサックスとシンバルがのったり掛け合い、次第に参加楽器を増やし、音場密度が上がる。さらにパット・メセニーのソロが加わるが、各楽器の質感の違い、音色の違いが巧みに描き分けられ、音場の中に確固たるポジションを得ていく音像発展形が面白い。

FLAC:48kHz/24bit
NonesuchRecords、e-onkyo music

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中