このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

大谷イビサのクラウドコミュニティな日々 第6回

オオタニからJAWS-UGのみなさまへのお願い

JAWS-UG on ASCIIはなぜ生まれたのか?

2016年06月01日 15時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ASCIIの新サイト「JAWS-UG on ASCII」はおもにエンジニアと情シス担当者をターゲットに、JAWS-UGの活動を日々お伝えするコンテンツサイトになります。JAWS-UGやAWS関連の記事コンテンツを一手に集約し、ユーザーコミュニティ発のさまざまな情報をクラウドに興味を持つ多くの読者に届けたいと考えて企画しました。長文になりますが、長らくIT記者をやってきたオオタニが、なぜこうした企画に行き着いたのか、その経緯を説明させてください。

記者オオタニとJAWS-UGとの関係

 私とJAWS-UGとの付き合いは、3年前のJAWS DAYS 2014でスポンサーを持ちかけられたところからスタートしています。それまでもAWSの情報には触れていましたが、当時はあくまでAWSの広報からもたらさせるプレス向けの情報がメイン。AWSのようなクラウドが、クラウドの真価とはなにか、業界にどのようなインパクトをもたらすのか、エンジニアがサービスをどのように使いこなしているのか、あまり理解していませんでした。もちろん、JAWS DAYSというイベント自体もどういうものなのかわからなかったため、私はスポンサーになる代わりに、JAWS DAYSの告知記事を書き、2014年3月のJAWS DAYSに実際足を運んでみることにしました。

 JAWS DAYSに足を運んで、私は人の多さ、エンジニアの熱気に圧倒されました。同時に圧倒されたことしか記事にできませんでした。前述の通り、AWSの知識がほとんどなく、クラウドのインパクトを理解していなかったため、セッションに参加しても記事までたどり着けなかったのです。

 しかし、この熱気が停滞感のあるITの世界を変える可能性があることに気がつきました。そして、継続的にJAWS-UGについて取材してみることにしたのです。

 ユーザーコミュニティに記者として参加し、記事を書くというのはとても勇気のいることです。正直言って、メディアの記者はただですら怪しがられます。ネガティブなことを書かれるかもしれない、事実をねじ曲げられるかも知れない。さまざまな色眼鏡で見られます。しかし、大谷のJAWS DAYSの記事を読んでくれたJAWS-UGのメンバーは、「JAWS-UGの活動を日本の通津浦々にまで拡げたい」とFacebookのグループを作り、エンジニア取材の機会を作ってくれました。そこから生まれたのが、現在も続けている「日本のITを変える「AWS侍」に聞く」(通称「AWS侍連載」)です。

 AWS侍連載は、AWSが年に1回発表しているAWS Samuraiの制度にあやかり、侍の格好で自身のエンジニアとしてのプロフィールや哲学を語ってもらうという連載です。私が興味を持ったのは、「なぜクラウドに飛び込んだのか?」、そして「ユーザーコミュニティとは果たしてどんな存在なのか?」の大きく2点です。こうして私はエンジニアの生の声を聞き続けました。インタビュー相手にもきちんと記事内容を見てもらい、納得する形で世に送り出してきたつもりです。

 当初は似通ったストーリーになるかと思った連載でしたが、「リモートワーク」「非エンジニアのAWS」「クラウドを推進する情シス」などすべてストーリーが違っており、現在20回目までを数えるまでになっています。そして、この連載のおかげで、AWSの中の人だった玉川憲さんの卒業記事を書くこともできました。この記事は私の記事の中でもっとも読まれていると思います。

 もう1つスタートしたのが、「飯田橋クラウドクラブ」という座談会企画です。AWS侍の取材やイベントなどで得た人脈をベースに、お酒の場でクラウドについて語るという連載ですが、こちらもre:Inventなどの後に実施し、AWS以外も含め、幅広いクラウドユーザーの本音を掘り出してきました。

 スポット企画としては、昨年のJAWS DAYS 2015で、JAWS-UGの36支部に活動内容を聞くという取材を敢行しました。東北と九州のJAWS Festaにも参加したことで、ローカルコミュニティの人脈ができ、地方ならではの課題を共有することができました。

JAWS-UG発の情報の方が「リアル」だった

 こうしてJAWS-UGの活動を可能な限り追ってきた大谷は、過去20年の記者・編集者体験の常識を覆すような大きなインパクトを受けました。JAWS-UGから発信される情報が「リアル」であるという点です。

 ITの記者は、ベンダーの広報やPR会社から記事のネタをもらうことが多いです。「新製品が出るから取材してくれ」「米国から偉い人が来るから取材してくれ」といった具合です。しかし、こうしたプレス向けの情報は重要である一方、マーケティングメッセージが埋め込まれ、製品の実際の実力をきちんと見せてくれるものとは限りません。実際、記事にしても、読者は敏感に反応します。これは「リアル」な情報はないかもと判断します。

 しかし、JAWS-UGは実際に製品やサービスを使っているエンジニアが、そのインパクトや利用価値を判断しています。そのため、情報が「リアル」です。しかもプレスよりも速く、スキルのあるエンジニアが使って、評価しています。こうした情報が集まっているデベロッパーズブログは、広告に依存しなくとも、多くのトラフィックが集まります。エンジニアではないものがコンテンツを作っているわれわれのような商用メディアはスピード、数、深さ、希少価値、あらゆる面で太刀打ちできないと思いました。

 一方で、これまで手がけてきたAWS侍連載やイイクラ、JAWS関連のイベント記事はみなさまのご協力もあって、高い人気を得ることができました。しかも、通常われわれが掲出しているエンタープライズIT系のニュースよりも桁違いに読まれます。(一応)専門の記者が書くインタビューやユーザー同士をうまく盛り上げる座談会、ブログとは観点の異なったイベントレポートなど、アスキーが強みを発揮できるコンテンツもあることに気がつきました。

 この3年間のJAWS-UGへの取材で得たのはデベロッパーズブログには勝てないという「あきらめ」とアスキーならではのコンテンツを追求すればきちんと支持を得られるという「自信」でした。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事