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兵役出身、グローバル念頭がキーワード

日本と大きく異なるイスラエルスタートアップエコシステム

2016年05月30日 12時30分更新

文● 植野力(Aniwo) 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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イスラエルのスタートアップと日本の投資家結ぶイベント「PitchTokyo」を手がけるAniwoの植野力氏による現地アクセラレータープログラムについてのレポートをお届けします。

 日本国内でも「第二のシリコンバレー」「スタートアップ大国」としてイスラエルがメディア上で取り沙汰されることが増えてきたように思う。今回は、「軍隊の技術を積極的に民間転用」、「創業当初からグローバルマーケットを想定」、「世界のトップ企業がスタートアップとの協業を模索している」という点において、日本と大きく異なるイスラエルのスタートアップエコシステムの様相を、現地のアクセラレータープログラムを通して見てみようと思う。

1.イスラエルスタートアップの成長

 現地クラウドファンディングプラットフォームZirra社のレポートによると、「第二のシリコンバレー」とも称されるイスラエル企業への年間投資額は5000万円以下の投資を除いて2015年で約4000億円($1を\110で換算)にのぼり、イグジットの評価額合計は1兆円を超える。

 これは直近の記録を塗り替える額で、2016年についても第一四半期ですでに1000億円を超えるペースでの投資が動き、昨年に引き続き好調を見せている。本記事では現地で活動している特徴的なアクセラレーターの事例を踏まえながら当地のスタートアップエコシステムについて紹介する。

2.「西へ東へ」グローバル展開を支えるアクセラレーターUpwest, Startup East

先頭左からAmos氏(CEO, Startup East)/ 榊原氏(CEO, Samurai Incubate)/ 寺田(CEO, Aniwo)/ Noa氏(COO, Startup East)

 イスラエルの人口は約850万人。人口が1億人以上いる日本などと違って、国内のマーケットを念頭にプロダクトや技術、ビジネスの開発を行うスタートアップは稀だ。実際にイスラエルの起業家と数多く会う中で、母国語であるヘブライ語でプロダクトおよびサービスを開発している起業家はむしろ少数派、グローバルなマーケットを念頭に英語で開発を行っていることが多い。

 人口の少ないイスラエルだけにおさまるつもりのない、イスラエルのスタートアップの海外進出を中心に支援を行うのがUpwestStartup Eastだ。読んで字のごとくUpwestは主に米国西海岸へ、Startup Eastは中国を含む東アジアへの進出支援を行う。両社ともに米国および東アジア諸国とのネットワークを強みとし、各地でのデモデイの実施などによる投資家やパートナーの発掘やビジネス開発を支援するだけでなく、商習慣の違いや言語面でのサポートも行う。

3.兵役時の「所属部隊のネットワーク」を活用する8200EISP

 イスラエルは男女ともに兵役の義務があり、兵役時の所属部隊が就職やその後のネットワークなどに大きな影響を及ぼす。インテリジェンス、諜報部隊はエリート部隊とされ、スタートアップ業界でも強い影響力を持ち、その中でも”8200部隊”の功績は傑出している。時価総額1兆円越えのサイバーセキュリティ企業CheckPointや、昨年マイクロソフトに買収されたクラウドストレージ向けセキュリティサービスのAdallomの創業者を輩出している。

 コンピュータサイエンスにおける高い専門性と、成功をおさめた同部隊出身者のネットワーク、ナレッジを活用することで8200部隊出身者によるスタートアップの支援を行うのが8200 EISP(Entrepreneurship and Innovation Support Program)だ。成功した起業家が後輩起業家の支援を行う点と、軍隊での経験、取得した技術を積極的にスタートアップに転用する点がイスラエルのスタートアップエコシステムの一つの特徴となっている。

4.「イノベーションのジレンマを打破」するコーポレートアクセラレーターRunway, FutuRx

 コーポレートアクセラレーターの活動は日本でも最近活発になってきているが、イスラエルでも同様に大企業が積極的にイスラエルの企業との協業、技術の発掘を模索するために活動をしている。

 RunwayFutuRxはそれぞれサムスンとジョンソンアンドジョンソンによるコーポレートアクセラレーターであるが、イスラエルの各社企業を買収後、国内でのプレゼンスを向上させ、さらなる技術の発掘、共同開発のためにプログラムを実施している。

 Runwayでは600万円ほどのキャッシュとサムスン研究チームとの協業により、シード期のスタートアップのグローバルマーケットへの「滑走路」となることを目指す。一方のFutuRxはバイオテックアクセラレーターで、製薬、創薬の研究開発のために必要な施設や2億円以上の資金を提供することで新たな研究や開発を支援している。

 スタートアップのプロダクト、サービス開発のためのデータや施設、潤沢な資金を提供する大手企業が多く存在することもイスラエルのスタートアップエコシステムを支える大きな要因であることが、コーポレートアクセラレーターからも見て取れる。

 ここまで、イスラエルのスタートアップエコシステムにおいてキーワードとなる「軍隊の技術の積極的な民間転用」、「創業当初からグローバルマーケットを想定」、「世界のトップ企業がスタートアップとの協業を模索」を、各アクセラレータープログラムから紐解いてみた。同アクセラレータープログラム出身企業とは、イスラエルの厳選スタートアップ企業をピッチ動画などを通して知ることのできるイベント「PitchTokyo」でもコミュニケーションができるので、ぜひ足を運んでみてほしい。

PitchTokyo

東京にいながら毎月、IoTや人工知能、AR/VRなどの領域のイスラエルの厳選スタートアップ企業を現地の起業家のピッチ動画などを通して知ることのできるイベント。

植野 力

COO & Co-Founder, Aniwo。2014年にイスラエルに渡り、イスラエルのスタートアップと世界の投資家をアルゴリズムを用いたマッチングプラットフォーム「Million Times」を運営するAniwo社を共同創業。日系メーカーやベンチャーキャピタル、外資系コンサルティングファームや国立大学等にサービスを提供。オイシックス株式会社(2013-2014)、京都大学法学部(2013年卒)。

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