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大幅に薄型化し、価格もだいぶ手ごろに

「素直にいい」と思えるハイレゾ機、AR-M20で時間を忘れた

2016年05月24日 13時00分更新

文● ASCII

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硬質で透明、そして空間の広さを感じるサウンド、

 以上がざっとした機能の紹介だ。

 表面はほぼ全面をディスプレーが占める。裏面はピアノ風のグロスブラック。サイドにはおそらくアルミ合金製のフレームが見える。電源をオフにする表も裏も漆黒。なかなかシックなデザインだ。スーツにも合いそうな見た目である。

 画面が大きいため、アルバムジャケットの画像も見栄えがする。音楽プレーヤーとしてここまでの大画面が本当に必要なのかと個人的には思うが、薄型なので上着のジャケットの胸ポケットなどにも入る。

 サウンドは一口で言ってクリアー。その実力は、パッと聴いただけでも伝わってくる。傾向としては、寒色系でワイドレンジ。音の透明感がすごい。ただし、少し硬質過ぎる感じもあったので、「長時間聴くと疲れるかもしれないな」と最初は少し心配した。しかしどうして、変な癖や強調感はなく、1時間、2時間と聴いていても問題ない。音の美しさ、楽しさに没頭できる。

 組み合わせるヘッドフォンは、VICTOR STUDIOの「HA-MX100-Z」を中心にした。この相性が抜群だった。相互の良さが引き出されているのだろうが、音の立ち上がりが非常に早く、高域も抜ける。低域に芯というか、パンチがあるし、中高域は曇りが晴れたように明瞭で、爽快感がある。

 マイケル・ジャクソンの「Thriller」(DSD 2.8MHz版)を聴いた。冒頭のギィギィいいながら開く戸、そして遠くから歩み寄ってくる足音が非常にリアル。40秒付近から入る手拍子がスパンとはじけてトランジェントがいい。同時に入るベースの音もぐいっと量感があることに加えてタイト。動きが明瞭だ。

 リファレンスにしている「AK380」と比べると、さすがに低域の押し出し感など一足譲る面はある。AK380との一番の違いはベースライン。量感は十分だが、生硬というか、若干ほぐれない感じがあった。もっともそれは、あえて比較したからで、AR-M20だけを聴いていたらそんな風には感じなかっただろう。逆に中音・高音の再現能力は引けを取っていない。左右のセパレーションがいいのか、定位も明確だ。ヘッドフォン再生でありながらも、かなり広い空間を感じさせる。

 何倍もの価格差がある、と考えればかなりスゴイことだと思う。

 AR-M20は先週から予約受付を開始したばかりで、現在8万円弱の価格がついている。これはウォークマン「NW-ZX2」やAstell&Kern「AK100II」よりは安価で、「NW-ZX100」や「AK Jr」よりは高価というポジションだ。

 AK Jrとも比較してみたが、音には当然のように差がある。AK Jrも悪くないが、AR-M20のほうが音の沈み込みや切れ込みの表現をより鋭く表現する。そう感じる理由は、音と音の間にある休符や無音部分がより明瞭に出ること、そして音がかなり急峻に立ち上がるためだろう。

オールラウンダーだが、空間表現が大いなる魅力

 試聴を重ねていく。ダンス系の楽曲はビートの歯切れがよく、特に楽しめるな、という印象だった。付帯音が少なく、立ち上がりが明確。そして音の見通しがいい。

 強いて言うとこうした歯切れのよさがある反面、余韻や残響の表現は控えめだ。音が完全に消え去る直前の部分など、本当に低いレベルの音は途中で切られているような感覚もある。この印象はソースによって変わるので一概には言えないが、ちょっと音が硬いように感じるのはそのせいかもしれない。

 ただしこの能力は、特定のジャンルだけに向けたものではない。例えば「ハイレゾで聴くジャズボーカル」に収録されているルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」(96kHz/24bit FLAC)では、少しレトロな声がリバーブ感を帯びてバックバンドがうまくなじむ。音の抜けも爽快だ。アナログ的な柔らかな表現も難なくこなせるのだと感心する。

 TM NETWORKの「CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991」から「BEYOND THE TIME(EXPANDED VERSION)」(96kHz/24bit FLAC)を聴くと、冒頭の強音・弱音のダイナミクス、そしてぴたりとフォーカスのあった宇都宮隆のボーカル。そして広大な空間に放り込まれ、音に包囲される感じなどが味わえて、なかなか楽しい。

 また、音と見た目が調和している点も好印象。黒をベースにした精悍でスタイリッシュなデザインにぴったりと合った、折り目正しい音がする。少し冷たくひんやりとして、ツルっと輝くような光沢感・色彩感を持つ。透明度の高いガラスケースの中に陳列されたオブジェを見るようだ。無音に近いところからのダイナミクス。マリンバ、トライアングル、グラスハープなど再生が難しい楽器の音色も、倍音がにごりなく響き、静謐さやきらめき感を感じさせる。このプレーヤーならではのメリットと思える個所が多々ある。

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