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ソニー、PlayStation 4好調で8年ぶり黒字もスマホが売れない

2016年05月01日 11時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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熊本地震の影響は半導体工場におよぶ

 一方、今回の決算発表では、熊本地震の影響についても触れた。

 ソニーには、熊本、長崎、鹿児島、大分にそれぞれ半導体工場があり、地震発生直後から、熊本の生産拠点は生産を停止した。また、長崎、大分の半導体工場も、建物や設備の点検のため、一時的に操業を停止したが、この2拠点はすぐに稼働を再開したという。

 熊本の生産拠点は、熊本県菊池郡菊陽町にある熊本テクノロジーセンターで、4月16日に発生した本震(マグニチュード7.3)の震源地から、12km弱の距離にある。4月14日の最初の地震での被害は限定的だったが、本震による影響が大きいという。

 熊本テクノロジーセンターは、2001年に設立した半導体工場で、現在、デジタルカメラや監視カメラ向けのイメージセンサー、プロジェクター用のキーデバイスの基幹工場と位置づけられている。

 熊本テクノロジーセンターの基本構造は、クリーンルームが二層に分かれており、低層のクリーンルームは、高い精密度を要求されるウェハー工程を設置。高層のクリーンルームには、測定工程やカメラモジュールの生産設備などを設置しているという。

業績見通しで気にすべきところはやはりデバイス

 吉田副社長は、「低層クリーンルームとそのなかにある生産ラインには大きな影響は生じていないが、高層のクリーンルームは、構造上、高い場所に位置することもあって、地震の揺れがより大きくなり損傷している。余震が長期間継続し、人員の安全確保を最優先したために、クリーンルームに入室しての確認作業が速やかに実施できず、状況の把握や復旧計画の検討に時間を要した。低層階のクリーンルームは、4月27日から設備の立ち上げを開始しており、5月末を目途に生産を開始する。高層階については、フロアおよび装置ごとに検証している。また、半導体部品としての完成品在庫については、被害は限定的である」とした。

 ちなみに、ソニーグループでは、約3500人が熊本地方に在籍。一部の従業員とその家族は避難所での生活を余儀なくされているが、人的な被害は出ていなという。

 なお、今回の熊本地震の影響により、2016年度の通期見通しの発表は5月24日に延期した。

 吉田副社長は、「熊本テクノロジーセンターでは、物的損害や、復旧費用、補強工事費用のほか、生産停止が一定期間継続することにより、主にデバイス分野およびイメージング・プロダクツ&ソリューション分野において、多額の機会損失が生じる可能性がある。さらに、デジタルカメラ向けセンサーを中心にした社外への販売においても、供給に支障が生じる。情報はリアルタイムで提供しており、信頼関係を損なわないように最善の努力をしていく。また、一部のサプライヤーの工場が被災地域にあり、部品供給に支障が生じる可能性があり、これが、モバイル・コミュニケーション分野、ゲーム&ネットワークサービス分野、ホームエンタテインメント&サウンド分野においても、事業に影響が出る可能性がある」と述べたほか、「ソニーの今後の成長戦略に影響があるかどうかは、現時点では見積もることができない。長期的な影響についても今後精査していく」とした。

 最終黒字とエレクトロニクスの黒字化によって、成長戦略に踏み出したソニーだが、成長戦略の鍵となるデバイス分野での課題にどう立ち向かうかが注目される。5月24日に発表される2016年度の業績見通しの行方が気になるところだ。

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