このページの本文へ

VRおじさんの「週刊VRかわら版」 ― 第4回

GoProやVideoStichがリリース

360度映像+HMDなら「あの日」に戻れる NABで登場した新型カメラをチェック

2016年04月24日 10時00分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

今週、米国ラスベガスにて開催された「NAB Show」でもVRが注目されていました

 どもども! VRおじさんこと広田です。VR業界は今週もメチャ濃いニュースが多かったです。個人的に一番びっくりしたのは、来週29、30日に幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議 2016」に、なんとマイクロソフトのARゴーグル「HoloLens」が出展するということ。PANORAでも書いたのですが、日本で一般公開されるのはこれが初! しかも先週紹介したアミューズメント施設「VR ZONE Project i Can」からも3つ展示が用意されたりと、今年の超会議はVR・AR関係者は必見の内容になるでしょう。

 しかし! それ以上に語っておかなければならないのが、4月18〜21日に開催した放送機器の展示会である「NAB Show」なのです。Adobe Premiere Pro CCが新バージョンで360度映像の編集が容易になったり、YouTubeが360度映像のライブ配信に対応したりと、新要素がモリモリでした。その中から、360度カメラを取り上げていきましょう。


映像はフラットから360度へ

 昨今の家庭用VRはゲームが主導している状況ですが、実写系のコンテンツもどんどん増えてきております。

 そもそも実写の360度というと普通の人が一番想像しやすいのは、Google ストリートビューのはず。PCの画面でマウスをドラッグしたり、スマホの画面を指で動かすことで、視点を変えて360度見られるのが便利ですよね。

 それがここ数年で静止画に加えて、動画で360度が撮影できるシステムが安価になってきました。最初にプロ向けで知られたのが、アクションカム「GoPro」を複数台用意し、固定具(リグ)で別々の方向に向けて、同時にシャッターを切るシステムです。撮影した複数の映像はソフトウェアで統合して、全周で4K相当の360度映像として書き出せます。既存のシステムでは数百万かかっていたところ、数十万円で構築できたということで、「じゃあ自分たちもやってみよう」と業界に大きなインパクトを与えました。

 さらに一般向けでは、リコーの「THETA」シリーズが2014年発売の2世代目「m15」にて、2K相当の360度動画撮影に対応しました。しかもお値段、4万円前後! 画質は2K程度ともちろん落ちますが、このタイミング、この価格帯で出してきたということが革命的にスゴいことでした。

Freedom 360THETA S

 そしてたまたま時を同じくして、Oculus RiftやGear VRなどのVRヘッドマウントディスプレーが登場。360度再生ソフトを使うことで、画面をドラッグやフリックせずに、頭を向けるだけで自然に360度映像を見られる状況が整いました。

 そんな360度映像+VRヘッドマウントディスプレーのスゴさは、言葉でなかなか伝えにくいのですが、映像の中に自分が入って現場にいる感覚というと分かりやすいかも?

 例えば、ドラマや映画で、俳優が自分の方向に近づいてきて誰かとつかみかかって争う……みたいなシチュエーション。日常で生活していて、なぜだか知らないけどスゴい形相の人が前から歩いてきたら思わず避けますよね? 視界いっぱいに映像がひろがって、リアルと同様に360度好きな方向を見られるVRヘッドマウントディスプレーの場合、そうした「近い」という感覚を引き起こしやすいです。

 ほかにもコンサートの最前列に座って隣の観客を目にして一緒に盛り上がったり、バラエティー番組のひな壇に自分が座って現場を体験しながら見られたり……。既存の四角いディスプレーでは引き出せない、「そこにいる」という感覚を呼び起せるのが新しいわけです。


PlayStation VRの価格が明らかになった記者発表会を、筆者が360度カメラで撮影したもの。PCのGoogle Chrome、もしくはAndroid/iOSのYouTubeアプリでご覧ください。

 それは決してプロが作る映像だけでなく、ホームビデオにも大きな影響を与えるでしょう。家族や友人と過ごした記念日やイベントなどの映像を360度で撮っておけば、あとで過去にタイムスリップしてもう一度「あの日」にいる感覚が味わえるわけです。

 あなたがこの記事を読んでいるPCやスマホは画面の中に別世界を映し出していますが、その四角い枠をぐいっと取っ払って見える範囲すべててが映像になる体験……という感じでしょうか。


GoProやVideoStichの新型カメラ

 前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、NABでまず注目したいのが米GoProの動きです。360度撮影システムについてGoProは今まで自社で出しておらず、昨年はグーグルのVRプラットフォーム「Google Jump」に基づく「Odyssey」をリリースしていました。

 16台のGoProを利用し、8K・360度の映像が撮れるというシステムで、お値段は1万5000ドル(約167万円)。高い! そしてカメラが16台もあると、マイクロSDカードを1枚1枚とりだしてデータを吸い出すことからして運用が大変そうです。画質はいいですけどね。

 このNABのタイミングで、ようやく6台のGoProを利用する「Omni」という撮影システムを出してきました。こちらの価格は、6台のGoProや充電用バッテリーなどを含めて61万4700円。リグのみなら18万4400円。専用のファームウェアなどを使うことで、「6つのカメラをピクセル単位で正確に同期できる」というのがウリです。

GoPro Omni

 ハードウェアだけでなく、ソフトにも着手してます。昨年4月、GoProは仏Kolorを買収しました。このKolorは、「Autopano」「Autopano Video」という360度写真/動画のスティッチング(統合)ツールや、「Kolor Eyes」という360度再生ソフトをあつかっている企業です。NABでは、ウェブ版/スマートフォン版のKolor Eyesを「GoPro VR」と名前を改めたのがニュースです。

 このGoPro VRはPCからのユーザーが投稿することが可能なので、ようやく360度の撮影から編集、ネットでの共有までGoPro1社でできるようになったということになります(現実的には、Adobeなどの動画編集ツールも併用しますが)。

 もう1つ語っておきたいのが、仏VideoStitchが発表した360度ライブ配信用の「Orah 4i」というカメラ。4つのカメラで360度の映像を撮影してインターネットに配信したり、SDカードに収録することが可能です。価格は3595ドル(約39万円)で、4月30日までのプレオーダーなら1795ドル(約20万円)。VideoStitchもKolorと同じスティッチングツールをリリースしている企業で、「Vahana VR」という360度ライブ配信ツールも手がけています。


Orah 4iのプロモーションビデオ。日本の渋谷も登場する

 ライブ配信といえば、2007年に設立されたUstreamあたりから出始めて、ニコニコ生放送、YouTube Live、TwitCasting、Twitchなどが出てきて、今や当たり前となったサービスです。360度ライブ配信でも、国内ではドワンゴや「HUG」のダッグリングズ、カディンチェが手がけており、実際に体験してみると自由に視界を切り替えられるのが新鮮です。

 ハードだけでなくコンテンツが追いついたら、数年後には、VRヘッドマウントディスプレーをつけて、ゲーム実況が目の前で見られる……という時代が来ているかもしれませんね。


広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


■関連サイト

  • GoPro
  • Orah 4i
  • カテゴリートップへ

    この連載の記事

    ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン

    ASCII.jp RSS2.0 配信中

    ピックアップ

    富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART