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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第149回

人々をつなげるをミッションにするFacebook、無線インフラ技術プロジェクトを発表

2016年04月21日 17時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

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 Facebookが年次開発者カンファレンス「F8」で、ネットワークインフラ関連のプロジェクトを2つ発表した。ともに途上国向けにインターネットアクセスを安価かつ迅速に提供する技術で、インターネット普及に向けたMark Zuckerberg氏のあくなき追求の一環となる。

MWCのイベント登壇時のザッカーバーグ氏。最近はまだインターネットに繋がっていない新興国の人たちへのネット接続事業に力を入れている

60GHz帯を利用し
都市部で7Gbpsの通信速度を実現するプロジェクト

 Google(の親会社Alphabet)もバルーン(「Project Loon」)、ドローン(「Google Titan」)、Google Fiberなどのネットワークアクセス技術を開発しているが、Facebookも負けてはいない。

 F8でFacebookは「Terragraph」と「Project ARIES」の2つの地上無線アクセスシステム技術を発表した。

 Terragraphは都市など人口が集中するエリア向けのマルチノード無線システム。”V-Band”と言われるライセンス不要の60GHz帯を利用し、帯域幅は最大7GHzを利用可能。ポイントは、60GHz帯向けの無線通信規格であるWiGig。WiGigはWiFiのWiFi Allianceが推進する最新の規格で、最大7Gbpsの通信速度が可能と言われている。

 TerragraphはWiGigベースの無線システムを備え、既存のテレコムインフラと比較すると安価にノードを構築できるという。IPv6オンリーノード、SDNライクなクラウドコンピューティング制御、モジュラールーティングプロトコルなどFacebookのデータセンターインフラ技術も活用するという。ネットワーク効率は最大で6倍改善できるとしている。

 Project ARIESのARIESはAntenna Radio Integration for Efficiency in Spectrumの略で、データ信号の効率よい伝送技術のプロジェクト。周波数帯の効率化とともにカバレージの拡大も図る。96のアンテナを搭載した基地局を利用し、同一の周波数帯で24ストリームを同時サポートできるという。現在、1Hzあたり71bpsのスペクトラム効率を実現しており、最終的には1Hzあたり100bpsを目指す。

 TerragraphはFacebook本社のあるメンロパークで実証実験を行なっており、今後サンノゼでトライアルをする予定という。Project ARIESは最初のテストベットが稼働中とのこと。2つともFacebookのConnectivity Labで開発したもので、同社が推進するTelecom Infra Projectで仕様を公開する。

新興国向けにインターネット接続をInternet.orgと推進する
ただし、インドでは挫折

 TerragraphとARIESはFacebook初の無線アクセス技術ではない。Facebookはすでに衛星を使ったものや、ドローンによる無線通信プロジェクトAquilaを進めている。同社の共同創業者兼CEO、Mark Zuckerberg氏によると、Aquilaは「ボーイング747ぐらいの大きさで重量は車並み」。太陽熱を利用し、赤外レーザービームを使うことで、少ない電力で光ファイバーレベルのデータ通信が可能という。2月末時点で2機目を構築中とのことだった。

 これらの取り組みは、Facebookが中心となってすすめるInternet.orgの一部だ(Connectivity LabはInternet.orgの下に入っている)。Internet.orgは同社が2013年にNokia、Ericsson、MediaTek、Qualcomm、Samsungらとともに立ち上げた非営利団体。その名のとおり、インターネットへのアクセスが困難な途上国などの地域でインターネットを普及させるというものだ。

 他の設立メンバーがInternet.orgをプッシュする場面はあまり見かけないが、Facebookは積極的にInternet.orgを推進している。最初の取り組みである「Free Basics」は、各地のキャリアと提携し基本的なサービス(ヘルスケア情報やビジネス関連の情報など「基本」の定義は地域により異なるが、Facebookはもちろん必須)へ無料でアクセスできるというもの。

 インターネット上のサービスを体験すれば、対価を払ってでも利用するようになるだろうというのがZuckerberg氏の読みだ。アフリカ、アジア、南米の3地区で合計35ヵ国以上でローンチしている。

 だが、このFree Basicsは今年初めに大きな障壁にぶちあたった。インド政府がネット中立性に反するという理由でFree Basicsを禁止したのだ。インドはInternet.orgがターゲットとする新興国市場では最大規模であり、インパクトも大きい。

 重要な市場で失敗した格好だが、Zuckerberg氏は2月末のMobile World Congress(MWC)で「残念だ」としながらも、「我々は失敗から学ぶ。インドで学んだことは国により異なるということ」と持ち前の前向きさをアピール。「(Internet.orgは合計で)1900万人がインターネットに接続するのを支援した。すばらしい第一歩を踏み出している」と成功を強調した。

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