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いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第3回

立体的な音場表現に適した、マイクロスピーカー

スピーカーが消える!? ELAC BS302が得た小型ゆえの魅力 (1/3)

2016年04月13日 13時00分更新

文● 小林、編集●ASCII

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サラウンド以外にも使いたい、本格派マイクロスピーカー

 マイクロスピーカーは机上設置のデスクトップオーディオや、テレビサイドなど映像機器と組み合わせたAVシステムの構築などで活躍する。ただし、サイズの制約で低域が出にくい面もあり、本格的なHi-Fiシステムには不向きだと考える人が多いかもしれない。

 しかしこうした極小スピーカーには、理想的な点音源に近いという、大型のスピーカーにはない持ち味もある。最近ではAVアンプの音場補正機能が飛躍的に向上しており、サブウーファーと組み合わせた2.1chのHi-Fi再生を試すと、従来の常識を超えた発見をすることがある。

 ドイツのスピーカーメーカーELACの「BS302」は、そんな魅力的なマイクロスピーカーを探している人に勧めたい製品のひとつだ。従来機種のELAC 301.2の後継にあたる製品で、同社の代表的な機種となるコンパクトスピーカー“300LINE”の末弟的な存在となる。

小型かつ同軸スピーカーなので定位に優れるハズ

 まずはBS302と従来機種「ELAC 301.2」の比較から。ともにHi-Fiスピーカーとしては非常にコンパクトなサイズで共通点も多い。

 小型でもつくりは本格派。キャビネットは、継ぎ目のない、押し出し成型のアルミ・エンクロージャーを採用した密閉型。BS302は高域用に直径20mmのシルクドーム、中低域用に幅78×高さ108mmのアルミハイブリッド素材の楕円形ユニットを組み合わせた“2ウェイ構成”となっている。クロスオーバーは約2.4kHz(2390Hz)。ユニットの同軸配置など基本的な設計は共通している。

左が従来機種の301.2。右がBS302。正面から見た外観はほぼ変わらない。純正スタンドの高さはBS302のほうがだいぶ低い。

側面から見ると301.2の下側が少し出っ張っているのが分かる。

 これらのうち、ユニットを同軸配置にしている点は特徴的だ。一般的には円形のユニットの中心を揃えるが、BS302のウーファーは楕円形なので中心よりは若干上の位置(おそらくは楕円の焦点)に合わせてツィーターを配置している。

 担当する音域の異なる複数のユニットを使うマルチウェイスピーカーは、低音から高音までワイドレンジな再生を狙う“マルチウェイ”スピーカーでは、通常それぞれのユニットを縦(または横)に配置することが多い。しかしそうすると当然、各ユニットから発生する音の位置が微妙に異なる。そのため再生できる周波数帯域がワイドになる反面、音のフォーカス(定位)はぼやけがちだ。

 そこで考えられたのが、複数のユニットを同軸に配置する仕組みだ。ウーファーとツィーターの中心を揃え、ひとつのユニットに組み込む。音の発生する位置が面ではなく、点に近付くため、より明確に音像が定位するのだ。。

 Hi-Fiの世界ではよく「スピーカーが消える」という表現が使われる。左右のスピーカーからバラバラに音が鳴っていると意識させず、左右の広がりや奥行き、高さといった音の空間を再現する、理想的なステレオフォニックが得られた状態を指す言葉だ。左右のスピーカーから出た音のフォーカスがきちんと合うことが重要だが、バッフル面の小さな小型スピーカーはその表現が得意だ。

 ELACの販売代理店ユキムも「極限までバッフル面をなくす」「点音源に近い」という2点においてはBS312よりも有利に設計されており、低域の量感を除けば、BS312をも凌駕する「空間表現能力」を有しているとあり、5.1ch再生だけではなく、ステレオ使用においても他にはない魅力を備えているとアピールしている。

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