このページの本文へ

「一社提供番組はオウンドメディアだ」理論とは?

2016年04月06日 11時00分更新

文●Web Professional編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

テレビ朝日の新番組「モデる」は5分間放送のミニ番組だが、デジタルマーケティングの支援企業アタラの有園雄一COOが関わっており、番組、CM、Webサイト、SNSが連携している点がユニークな企画だ。「一社提供番組はオウンドメディアだ」理論は、Google時代の有園COOが考案した「続きはWebで」のSNS版とのように、新しい潮流になるだろうか。



——デジタルマーケティングの戦略を広告主の背後で支える有園さんが、どうして20代後半以降の女性向け番組の構想に関わっているんでしょうか?

ここ最近のテレビCMは、空き時間に放送されるスポットCMのほうが、番組提供のタイムCMよりリーチがよく、費用対効果が高いと言われているんです。広告主もお金が有り余っている状況ではないから、CM予算はどうしてもスポットに流れてしまう。そうすると、タイムCMはなかなか売れない。特に一社提供のミニ番組は、そんなに視聴率を稼げるわけでもないし、固定の視聴者がたくさんつくわけでもないから、売れにくい。一方でコメ兵さんは、特に関東での知名度を高めたい希望があって、だったらミニ番組を使って、という戦略を私も加わって提案したのです。

コメ兵のプロジェクトサイト

——「一社提供番組」というと富士通の「世界の車窓から」もテレビ朝日系列ですよね。

一社提供のミニ番組ってオウンドメディアみたいなものだと思うんですね。いろんなスポンサーがついている番組は、コンテンツサイトでバナー広告にいろんな会社が出てくるイメージです。でも一社提供のミニ番組って、コメ兵が提供している、としか表示されないし、コメ兵がアピールしたいのは20代後半以降の女性です、という要望をテレビ局に伝えれば、20代後半以降の女性に受けそうな番組になる。これ、視聴者の体験としてはオウンドメディアとまったく同じですよね。

——番組とCMとWebサイトとSNSが連携しているのもオウンドメディアの手法ですか?

「#モデる」という番組は、インスタやFacebookでファッション好きの女性が自分の全身コーディネートを投稿すると、番組側が「この人いいよね」っていう女性を選ぶんです。その人の自宅に訪れたプロのモデルに、素人の女性が自分の服でコーディネートして着せ替える、っていう内容です。単純にいうとこれだけなんだけど、番組からもう一度SNSに戻す仕掛けをしています。まず、投稿した女性には何日にプロのモデルが行きますよ、とは伝えるんだけど、誰が行くかは伝えない。そうするとワクワクするだろうし、友だちにも、今度自宅にテレビの取材が来る。誰かわからないけどモデルも来るって話しますよね。で、当日玄関を開けると、テレビや雑誌で見たモデルが立ってる。キャーってなるじゃないですか。しかも、一般の女性がプロのモデルに自分の服を着せて、コーディネートできる。撮影後に友だちに話すし、本人も友だちも気になって番組を見る。番組とのエンゲージメントがこれで高まるわけです。さらに、番組終了後のCMでは、一般の女性のコーディネート写真が出てきて、コメ兵で買い取りと販売やってますよ、と流れる。「#モデる」で検索するとヒットするWebサイトには、撮影時の様子がアップされていて、本人も友だちも視聴者も番組の余韻みたいなものを楽しめる。

デ#モデるの公式Instagramページ

——完全にオウンドメディアの手法じゃないですか。実店舗に送客すれば「オムニチャネル」とか「O2O」とかも言えそうですね。

まだやっていませんが、プロジェクトには、Webサイトからコメ兵のECサイトにつないだり、実店舗で使えるクーポンを出したらどうだろう、とも伝えていますよ。番組を見てCMを見て、SNSに広がって、広告主のWebサイトに飛んで、ECや実店舗に行って、モノを売り買いする。これって、オウンドメディアがやろうとしているけれど、なかなかできないことですよね。一社提供のミニ番組ってそもそも枠の数が少ないですけど、60分の番組を提供することを考えたら、ずっと敷居が低い金額の話です。「続きはWebで」ほど横展開しやすくはないですが、他の会社にも声を掛けています。

リスティング広告、ソーシャルネットワーク広告のトッププロ13名がノウハウを解説した書籍運用型広告 プロの思考回路 AdWords/Yahoo!/Facebook広告の効果を最大化するベストプラクティス(Web Professional Books)が3月30日、KADOKAWAから刊行されました。

有園さんが本を書きました!

「リスティング広告 プロの思考回路」同様、ネット広告のトッププロたちによる運用改善事例を多数収録。マニュアル本では絶対に明かされないプロの発想が詰まった1冊です。

本書は、2011年に刊行した「リスティング広告 プロの思考回路」の続編です。この5年で、DSPやSSPを活用したRTB広告、DMPの活用、Facebook広告をはじめSNSのマーケティング活用、ターゲット・オーディエンスに基づいた広告の配信と、広告運用担当者の仕事は広がりつつあります。

運用型広告 プロの思考回路
AdWords/Yahoo!/Facebook広告の効果を最大化するベストプラクティス

佐藤康夫、杉原剛、有園雄一、岡田吉弘、高崎青史、坂萩馨、西原元一、清水一樹、和泉晴之、中川雄大、畑秀一郎、渡辺晃大、杉本晃一[著]

  • 価格: 2,484円 (本体2,300円)
  • 発売日:2016年03月30日
  • 形態:A5(224ページ)
  • ISBN:978-4-04-865489-0
  • 発売:KADOKAWA

Web Professionalトップへ

この記事の編集者は以下の記事をオススメしています