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200万社が参加する調達ネットワークサービス、日本でも成長が始まる

「調達のデジタル化」は何をもたらすか、SAP Ariba社長に聞く

2016年03月25日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「世界経済がスローダウンする中で、あらゆる企業で『コスト管理』が重要視されている」「日本ではバイヤーとサプライヤーの関係が特に密接だ。それを“デジタル化”すれば、さらに良い絆を作っていける」――。

 1996年、企業の調達業務を電子化でシンプルなものにすることを目的に創業した米アリバ(Ariba)。2013年からはSAP傘下となり、グローバル企業への浸透をさらに加速している。現在、同社が提供する企業間調達ネットワーク「Ariba Network」は、グローバルで200万社が参加し、年間1兆ドルの取引が行われる規模にまで成長している。

 同社のビジネスモデルは、SAPによる買収で生まれたシナジーは、そして日本市場でのこれからの戦略は。来日したSAP Aribaプレジデントのアレックス・アッツベルガー氏に聞いた。

SAP Ariba プレジデントのアレックス・アッツベルガー(Alex Atzberger)氏

200万社のサプライヤーとバイヤーをつなぎ、企業の調達業務をシンプルに

――まず、アリバの展開するビジネスとはどのようなものでしょうか。概要を教えてください。

 アリバは、「世界をコネクトして(つないで)、調達の業務をシンプルなものにしたい」というビジョンに基づいてビジネスを展開してきた。

 20年前の創業当時は、企業の調達業務をサポートするオンプレミスシステムを提供していた。その後、2005年には“B2B向けのAmazon.comを”というコンセプトを掲げて、クラウドサービス(SaaS)へとビジネスを転換した。さらに、バイヤー(購買側企業)だけでなくサプライヤー(供給側企業)も取引プラットフォーム(Ariba Network)に載せるようになった。

 Ariba Networkには現在、200万社が参加しており、このプラットフォーム上での取引高は年間1兆ドル近くに達している。日本でも近年、大きな成長を遂げており、現在は約2万社のサプライヤーが参加している。社名は明かせないが、日本の顧客企業としては、たとえば大手の建材メーカーや医薬メーカー、電機メーカーなどがいる。

Aribaは調達業務をサポートする。バイヤー企業は、このサンプル画面のようなセルフサービス型カタログを従業員に提供することも可能だ。これを利用すれば、社内稟議などに直結した調達プロセスを実行できる

 サプライヤーとバイヤーの両方が、1つのプラットフォームでつながっているのがポイントだ。たとえばバイヤー側には“リバースオークション”の仕組みがあり、入札を募ることで新しいサプライヤーと出会うことができる。

 調達プロセスやサプライチェーンがすでに成熟している大企業であっても、最適なサプライヤーを見つけることで調達コストを10~20%も削減できている。また、サプライヤー側から見ても、世界中のさまざまな規模のバイヤー企業と取引ができるチャンスが生まれるわけだ。

Aribaのバイヤー企業向けダッシュボード(左)と、サプライヤーの検索画面

 先日、東南アジアのある航空会社がバイヤーとして入札を募ったところ、米国のサプライヤーから応募があった。顧客は「まさか米国のサプライヤーから応募があるなんて」と驚いていたが、これがクラウドの力だ。このように、Ariba Network上では毎年何万もの新たな取引関係が生まれている。

 そのほかにも、たとえば支払の可視化や早期化を図る「AribaPay」など、バイヤーとサプライヤーの双方が望むイノベーションにも投資している。AribaPayの場合、いつ支払がなされるかがリアルタイムに可視化されるので、バイヤー、サプライヤー双方が運転資金を管理していくうえで非常に有益だ。

AribaPayは調達プロセスにおける請求や支払をオンライン化、迅速化するサービス

――「バイヤーとサプライヤーをつなぐネットワーク」という役割はわかりましたが、では、アリバ自身はどちらから利用料を得ているのでしょうか。

 バイヤーとサプライヤーのそれぞれに利用料を課している。この利用料は、アリバのサービスを使って得られた価値(バリュー)とシステム使用量に基づいて決まる。「どれだけ価値を得たか」に応じて支払えばいいというのが、最も重要なポイントだ。

 たとえば、アリバ上で何億ドルもの調達をした企業は、それだけ多くの利用料を支払うことになる。しかし、それでも十分にコストメリットがあるわけだ。バイヤー側の顧客企業に話を聞くと、「『調達』はかつてないほど戦略的な活動になっている」と口を揃える。

 また、サプライチェーンのリスク管理もバイヤー側企業を悩ませる問題だ。直接の取引先はまだしも、2段階先、3段階先のサプライヤーの状況までは見えないからだ。アリバでは「Made In a Free World」など幾つかの組織と協力して、たとえば違法な児童就労をさせているような企業がサプライチェーンにまぎれ込んでいないかどうかをチェックする取り組みも行っている。

――2013年には買収によってSAP傘下に入りました。SAPとの関係、SAPグループにおけるアリバの役割は。

 ご存じのとおりSAPの旗艦製品はERP、つまり社内向けの業務システムだ。一方でアリバのサービスは企業間をつなぐ。つまり社内と社外、両社は補完的な関係にある。

 買収後、アリバはSAPの中で最も成長の速いビジネスユニットとなった。今年1月には(米国Aribaの)社名を「SAP Ariba」に改め、企業ロゴも刷新した。新しいロゴでは上向きの2つの矢が重なっているが、これは「サプライヤー」と「バイヤー」がつながっていることを意味している。

米国では1月から「SAP Ariba」という社名になり、ロゴも刷新した。なお日本を含む他国でも、今後段階的に社名変更していく予定

 もちろんアリバは“SAPの一部”としてだけでなく、電子調達システム市場のマーケットリーダーとしても存在する。アリバのアプリケーションは、単独でも、SAPやサードパーティのアプリケーションと連携させても使用できる。

 ちなみに、SAPのBusiness Networks Group(ビジネスネットワーク事業部門)には、アリバのほかに経費管理SaaSのコンカー(Concur)や労務管理SaaSのフィールドグラス(Fieldglass)もそこに属しているが、昨年は、同事業部門全体で2倍以上の伸びとなった。

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