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GDC 2016レポート

クオリティーが異常、GDCの最新デモに見るVRの熱狂と成功の道筋

2016年03月23日 10時00分更新

文● 新清士、編集●ASCII.jp

わかっていても悲鳴が出るホラーゲーム

 ホラー映画「パラノーマル・アクティビティ」とタイアップして、今年の夏の発売を予定しているVRゲームのVive用デモも、VRならではの魅力が実現されていた。

 部屋の中を探索するアドベンチャーゲームだ。男性も女性も年齢も関係なく、プレーする人が次々に悲鳴を上げる姿に、一体なにが起きているのかと多くの見物人が集まっていた。

「パラノーマル・アクティビティ」をプレーしている様子。この女性は直前に悲鳴を上げて、固まっている

 ゲーム内では、部屋の鍵などを探したり、様々な部屋を物色したりして進めていくのだが、ホラーものは、VRではやっぱり相当怖い。映像の質は、決して洗練されているものではないのだが、最後に幽霊が登場し迫ってくるシーンでは、筆者も思わず悲鳴を上げてしまった。

 VRで恐怖感を感じさせるためのテクニックはそれなりにわかっているので、いつ来るかなと警戒しながらデモを進めていても、身体が反応することを止められなかった。

 VR関係者で、最近冗談としてよく言われるのが、「ホラーVRで驚いたのが原因で、心臓発作を起こす人が出て、そのうち死人が出るだろう」というものがあるが、冗談では終わらないときもすぐかもしれない。

 例え、そのリスクがあっても、VRでホラーゲームは人気を集める分野になるだろう。

視界の情報を減らすことでVR酔いを抑制

 最も技術的に先進的な取り組みをして、注目されていたのは、大手ゲーム会社の仏Ubisoftのフライトゲーム「Eagle Flight」だ。Oculusのローンチタイトルとして準備されている。

Eagle Flightのプレー中の様子

 このゲームは、パリ上空を鷲の視点で自由に飛び回れ、ほかのプレーヤーとレースなどをして競い合う。非常に速い速度で建物の間を抜け、橋の下をくぐるように飛び回る、スリリングな展開をする。

 筆者は、昨年プレー画面の動画が発表になったときにまず、VR酔いを避けることは難しく、長時間ゲームを続けるのは困難だろうと予想していた。

 車酔いに似た現象のVR酔いを克服できるかどうかは、VRHMDを普及させることができるかを決める重要なポイントで、GDCでも様々な議論が行なわれていた。自分の見えている映像が速い速度で変化するゲームは、VRには向かないと考えられている。

 ところが、Eagle Flightはその常識を打ち破っていた。実際にプレーすると速い速度で飛び回っていてもまったく酔いを感じなかったのだ。

 理由は、VR酔い対策として開発された新しい技術のためだ。

 速度が上がったりしているときに、人が意識して見ていないと思われる画面を意図的に黒くすることで、見えているものを制限するという手法が使われていた。

 人は自動車を運転しているときも、注目して見ている部分は、実際はそれほど広くない。特定の部分に集中して、それ以外の部分はむしろまったく見ていないことも少なくない。この現象を、VRにも応用していたのだ。

 プレー映像を見ていると、ピーク時には半分以上の画面が真っ暗になっている。ところが、おもしろいことに、実際にOculus Riftをつけてプレーしているときには、画面が暗くなっていることはほとんど気にならない。画面で黒い部分は、まったく視覚は認識していないのだ。

Eagle Flightのプレー中の画面。高速の状態で、左側に旋回しようとしているところで、映像の右側半分が完全に真っ黒に表示されている

 VR空間ではできるだけ、多数の映像を表示すれば、没入感を増すと考えられていたが、情報を制限することは、没入感を減少させる要因にはならず、VR酔いを減少させるという効果が発見されたことは画期的なことだ。VR酔い対策として、ほかのゲームにも応用が広がるのではと思われる。

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