このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

国産クラウドのチャレンジ!「IDCFクラウド」徹底解剖 第5回

災害対策にも最適な元祖エコデータセンターを徹底解剖

6号棟も着工!西国の雄を目指すIDCF北九州データセンター

2016年03月28日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

白河を踏襲した5号棟と水冷採用の新6号棟

 一方、2013年に竣工した5号棟は白河データセンターを同じデザインを採用している。こちらは外気空調を主体的に使うべく、物理法則に則った空気の流れを建築自体で実現しようというコンセプト。鉄骨でやぐら状に建てられた建物自体が外壁から外気を取り入れ、排熱を上部の煙突口(チムニー)から排出する。ファンを極力使わないことで、年間負荷の約8割を外気でまかないつつ、PUE1.2台の運用を続けているという。

白河データセンターと同じ空調の仕組みとデザインを採用した5号棟

こちらは壁自体にファンが取り付けられ、壁吹き出しで外気を取り入れている

暖気が集まるホットチャンバー。煙突効果と上昇気流で上部のチムニーに排熱

ダンパーの開け閉めで外気やサーバールームからの環気とも混気できる

サーバールームからの暖気は煙突効果と上昇気流でチムニーへと上がっていく

外から見たチムニー。こちらから暖気が外に逃される

 省エネ効果の高い5号棟もほぼ満床の状態。IDCFクラウドの西日本リージョンも5号棟で展開されており、西日本リージョンからスタートしたオールフラッシュクラウドを担うEMCのXtremIOもきちんと実機を見ることができた。ユーザー増に耐えうるよう、ラックも数多く確保されており、拡張性も問題なさそうだ。

5号棟もほぼ満床となっており、ラックはギチギチに詰まっていた

IDCFクラウドの西日本リージョンもここに構築されている。オールフラッシュアレイ「XtremIO」の実機も動作していた

 そして、先週3月25日にはいよいよ6号棟の建設着工が発表された。1~5号棟までが外気冷却を採用したのに対し、新しい6号棟は水冷空調を全面的に採用。おもに外販とIDCFクラウドの用途で用いられ、1棟約610ラック規模が予定されているという。取材時は土地の造成中という感じだったので、2016年12月の竣工を待ちたいところだ。

水冷を採用する6号棟は5号棟の横に建設している

地方型のスケールと都市型の利便性を両立

 地方データセンターは必ずしも足の便がよくないため、リモートハンズサービスが充実していることが多い。実際、IDCフロンティアも「入館ゼロ」を目指し、ラック内構築やWebカメラを使った遠隔保守サービスも提供している。しかし、小倉から30分圏内の北九州データセンターの場合、SIerのサーバールームとして利用されることも多いという。実際、取材日にはかなり多くのエンジニアがサーバールームで作業を行なっていた。

 これに対して北九州データセンターでは、入館や入室においての認証も厳密に管理されているほか、機材搬入口が二重扉になっていたり、敷地にも監視カメラが取り付けられるなどさまざまな工夫が盛り込まれている。一方で、フロア丸ごと借りるといったDC in DCの事業者や大型プロジェクトで常駐するSIerのためのオフィスや打ち合わせスペースも充実している。地方データセンターならではの拡張性の高さと、都市型データセンターのような利便性が合わさっているのが、北九州データセンターのメリットでもある。

常駐SIer向けのオフィス棟も用意されている

トラックが横付けできる機材の搬入口。外シャッターが閉まらないと中の扉を開けない運用ルール

 北九州データセンターは単体での利用のみならず、他のデータセンターと併用することでさらに大きなメリットを発揮する。同データセンターは白河をはじめ全国9箇所のデータセンターと890Gbpsという大容量ネットワークで接続されており、主要なIXやISP、Yahoo! JAPANとのネットワークとも直結されている。こうしたネットワーク面の強靱さもIDCフロンティアの特徴。バックボーンは異なる経路で冗長化されているほか、DDoS攻撃対策の設備を標準装備。大阪からの遅延も10ミリ秒以内でのレスポンスを確保しており、複数のデータセンターやクラウドを統合して運用することが可能になっている。

890Gbpsのネットワークで相互接続されたIDCフロンティアのデータセンター

 しかも、全国9箇所にあるIDCフロンティアのデータセンターはそれぞれ異なる電力会社から電力供給を受けているため、災害対策やバックアップにも最適だ。同社が提供する広域負荷分散のサービスを用いることで、災害時にも意識することなく、データセンターを切り替えることができる。

 実際、首都圏の災害時は東日本の新宿NOCから西日本の北九州NOCに運用を切り替えることになっている。「切り替えの号令がかかった段階で、新宿で使っているシステムをアクティブ・アクティブで運用し、新宿の業務に加勢できるようになっています」(IDCフロンティア 土師和史氏)。訓練も逐一行なわれており、「分散こそ最大のリスク対策」というポリシーを現実解にできるのがIDCフロンティアの大きな価値と言えるだろう。

IDCフロンティア 北九州DC運用責任者 土師和史氏

 国民的サービスであるYahoo! JAPANはもちろん、企業やSIerの重要なサーバー、高い性能を誇るクラウドやデータの集積地まで、時代のニーズにあわせたサービスの根幹を支えるIDCフロンティア。昨年は白河データセンターを見学し、今回さらに北九州データセンターまで見てきたが、両者ともデータセンターとしての基礎的な強靱さ・信頼性はもちろん、省エネや運用面での工夫まで満たしたクオリティの高さが伺えた。さらに「クラウドは分散こそが大きな価値」と言われるが、全国9箇所のデータセンターを大容量のネットワークで結び、日本全国どこでも最適なレスポンスでリソースを提供できるのもIDCフロンティアの大きな価値だと思う。

■関連サイト

(提供:IDCフロンティア)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事