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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 ― 第42回

【前編】『KING OF PRISM by PrettyRhythm』西浩子プロデューサーインタビュー

社長に「1000人が10回観たくなる作品です」と訴えた――『キンプリ』西Pに訊く

2016年03月21日 15時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●村山剛史/ASCII.jp

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前売券は「わがまま言わせてもらい」裸に

―― 『キンプリ』の制作費はリピーターの方々によってゴーサインが出ました。では、観客動員もその方々に賭けたんですか?

西 プラス、新規を増やさないといけませんでした。

 そのための施策として、まず、前売券を裸にしたかったんです。

―― “裸の前売券”。『キンプリ』が最初にネットで話題に上った理由がそれでしたね。なぜ裸にしたんですか?

前売券は5枚綴り。クリアファイルに挟むと、正装Ver.になる。前売券の上に服を描いた透明のクリアファイルを載せると着替えられるというアイデアは、キャラクターデザイン兼作画監督 松浦麻衣さんの発案。(c) T-ARTS / syn Sophia / キングオブプリズム製作委員会

西 この作品自体、アニメファンに知られていないという大前提があります。すべての施策は“拡散しなきゃいけない”という考えの下に組みました。前売券すらも宣伝媒体として使いたかったんです。

 この作品をまったく知らない人に、いかに『これは何だろう!?』と思ってもらえるかを考えると、もう裸だなと(笑)……というのは冗談ですが、プリティーリズムはもともとコーデを楽しむ作品なので、いつもキャラクターに何を着させよう?と考えるのですが、この作品は何の後ろ盾もないイチからのスタートに近い。まさに裸一貫の、初心に帰る意味も込めて、あえて服を着る前の姿にしていただきました。

 あまり簡単にキャラクターを脱がせるのはどうなんだろうという話にもなったのですが、もう、ここはわがまま言わせてください、とお願いしたぐらいの全裸です。おかげで、キンプリが盛り上がり始めた頃に『あの全裸前売券のやつ?』と心の隅に引っかかっていた方もいらっしゃって、点と点が繋がったシーンも目の当たりにしました。

 もちろん、抵抗があるというファンの方もいらっしゃいました。

―― ファンの方全員が賛成されたわけではなかったのですか。

西 先述の通り、『プリティーリズム』はコーデを楽しむ作品として始まっています。ファンの方からも「『プリティーリズム』は服を着替える女の子のためにアニメなのに、どうして服を脱いでいるんだ」というご意見もかなりいただきました。

 けれども、いちプリティーリズムファンとして語弊を恐れずに言うと、『キンプリ』を届けるにあたっては、“女児向けだから”というワクを取り払いたかったんです。

―― “女児向け”というワクは、西さんご自身のなかではどのように捉えていましたか?

西 『プリティーリズム』は、大映ドラマばりに人間関係を掘り下げた、挫折あり、成長ありの物語で大人の方にも見て楽しんでいただける作品です。けれどもアニメファンの方々に『女児向けだから』という理由で観る前に視聴リストから外されてしまう……というケースを残念に思っていたんです。

 そこで『キンプリ』は、『プリティーリズム』とは別のスタンスの作品ですという意味も込めて、ファンの皆さんもきっとわかってくださると信じて、前売券を作りました。

(c) T-ARTS / syn Sophia / キングオブプリズム製作委員会

すべては“絶対裏切れない1700人”のために

西 前売券を“5枚綴りグループ鑑賞券”として2種類作ったのも、“1000人が10回観る”というロジックを実現させなければならなかったので、“熱心な方が5枚綴りを2枚買ってくれたら10回になる”という単純計算のもとでした。

―― 5枚綴りを2種類出したというのは、何度でも見てくれるリピーターを想定したと。

西 はい。コアなファンの方々は、きっと私のように(笑)、何回も見に来て下さるだろうという。

 逆に言うと、『キンプリ』のファンも、それより増えることはないと思っていたんです。1000人というのは、厳密に言うと“1700人”なんですけれども。

―― 1700人という数字はどこから想定されたのでしょうか?

西 2014年に発売したキャラソンCDの予約数です。

 出たから買うのではなく、“出るから、好きだから買う”というお客さんが1700人ぐらい。『キンプリ』を制作する段階では、ファンが何万人もいるという見積もりはできませんでした。

 ただ、その1700人の方々を、私たちスタッフは仲間だと思っている……というとおこがましいですけれど、その方はきっと何回も観に来てくださるだろう、それは純粋に『プリティーリズム』が面白いから、好きだから観てくれるというところを信じていただけですね。こちらとしても裏切れない1700人なので、裏切らない作品づくりを目指したのみです。

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後編は……「一度観たら、誰かに話したくて仕方ない!」
アトラクション型アニメとして『キンプリ』は作られた

 劇場版製作のゴーサインをもぎ取った西プロデューサーだが、完成した『キンプリ』は封切直後から苦戦が続く。

 しかし、熱狂的なファン“プリズムエリート”たちの地道な口コミが実り、『キンプリ』のハッシュタグがTwitterのタイムラインを賑わすことに。そのきっかけとなったのは、スタッフたちが重視してきた「応援上映会」だった。

 後編では、『キンプリ』をあえてコール&レスポンス前提の作品として仕上げた意図などについて、引き続き西プロデューサーに伺う。

後編はこちら

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