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VRは二次元の世界に入る願望をかなえてくれる…『攻殻機動隊』神山健治監督

2016年03月09日 15時46分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 「『二次元がこっちに来てくれないか』とか、『二次元に行きたい』というあの感じ。あれを体験したというか、半歩くらいそっちに入った感じでした」

 アニメ『攻殻機動隊 S.A.C.』『009 RE:CYBORG』神山健治監督。VR初体験の神山監督はOculus用のVRアニメーション『Henry』の感想をそう話した。3月5日開催のセミナー「お父さんのための最新VR講座」(主催:パノラ)の1コマだ。

 Henryは、ハリネズミが主人公のアニメーション。ハリネズミなのにハグが好き。ハグをすると相手を傷つけてしまうため、友だちのいない孤独な誕生日を迎える。物語が進むにつれ、監督は思わずウルッと涙ぐむシーンもあったとか。

 「これちょっとやばいやつや、となったんですね。これって泣きそうになるやつなんじゃないの、と」(神山監督)

 VRが従来の映画と決定的に違うのは、ヘンリーがときどき目線を合わせてくるところだったと監督。友だちになった風船の犬が割れてしまったとき、シュンとした顔で自分を見てくると「彼のメンタルとかなりリンクしてくるんです」

違和感があるのは良いこと

 監督はバーチャル空間で立体オブジェをつくるゲーム「Mideum」もプレイ。攻殻機動隊 S.A.C.に登場する特殊な戦車「タチコマ」をつくった。

 そのとき監督は、VRゲームの世界に重力の概念がなく、やや違和感があることを“良いこと”と感じたそうだ。

 「なんでも全部入っていればいいというものではない。重力がない世界は維持したほうがいいのかもしれない。重さがあったら飽きてしまうんじゃないか」

 内視鏡手術のシミュレーションなどは現実に近づいてもいいが、ゲームの世界はリアルを追及すると飽きてしまう。現実にないもの、自分自身に欠落したものを埋めてくれるのがフィクションなんじゃないか、というわけだ。

 実際に体験するまではVRに懐疑的だったという監督。しかし現在は、以前に手がけた3D映画にもましてVR映画に意欲的だ。

VR世界でVR映画を撮る

 「3D映画の場合、2時間オーバーだと『見るのがしんどい』と言われて映画が短くなりましたがVRだと映画がもしかしたら長くなるかもなあと。(今までの映画と)違うところに答えがあるだろうなあと、それを探してみたくなるという気持ちが芽生えました。この先の作品で『VR版』を作れたら面白そうだなと」

 もし「Henry」のようなVR映画をつくるとしたら、Oculusのようなヘッドセットをつけて「このテーブルをもっと高くして」などと言いながらつくるんじゃないか──監督はそんなことも考えていたそうだ。

 実際UnityやUnreal Engineでは、VR世界で使うVR映像編集ソフトが開発されている。神山監督がVR世界でメガホンを握っている姿も想像に難くない。

 監督は5月末に新作映画の情報も公開するという。いつかもし『攻殻機動隊 S.A.C. VR』が制作される日がきたら、向こうの世界から帰ってこられなくなりそうだ。ソリッドステートソサエティの実現も近い。


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盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、記者自由型。好きなものは新しいもの、美しい人。腕時計「Knot」ヒットの火つけ役。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中

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