苦労はあるけど、新しいもの好きにはたまらないBluemixの巻

文●大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

2016年03月17日 07時00分

前回からスタートしたIBM SoftLayerとBluemixの飯田橋クラウドクラブ。前回はユーザー会に参加した背景や、SoftLayer/Bluemixの魅力を語りましたが、今回は140種類以上にのぼるサービスのカオスや荒削りな仕様に翻弄されるユーザーの苦労話をお聞きします。

今回の登場人物(敬称略)

NI+C常田:日本情報通信 ソリューションビジネス本部 常田秀明。クラウドエバンジェリストとし主にSoftLayer、Bluemixの普及活動をしながらコミュニティ活動に参加。






CTC原田:伊藤忠テクノソリューションズ クラウド・セキュリティ事業推進本部 クラウドイノベーションセンター 原田一樹。AWS、Azure、Bluemixを熟知したクラウドアーキテクト兼スクラムマスター。Bluemix/Watson系アプリケーションコンテストを3連覇。Bluemix UserGroup「BMXUG」のコミュニティリーダーとして活動しているが、AWS/Azureを愛しすぎてBluemixに厳しい一面も。




ブイキューブ原田:ブイキューブ 技術本部 テクニカルオペレーショングループ 原田紘。ISP、ホスティング事業者などを経て、2012年11月に株式会社ブイキューブ入社。オンプレミス環境からSoftLayerをはじめとしたIaaSまで、悪戦苦闘しながらブイキューブサービスのインフラ業務全般に携わる。




日立横井:日立製作所 研究開発グループ テクノロジイノベーション統括本部 情報通信イノベーションセンタ 研究員 横井一仁。Bluemix上でWatsonが使えるように なったことを知り、昨年6月からBluemixを使い始めた。アイデアを素早く形にできるBluemixの開発手法を活用し、これまでに国内外の開発コン テストで受賞した経験を持つ。BMXUGの活動にも参加。知識と人脈が広がり、自分の成長に役立っている。




オークファン大平:オークファン 技術統括部 大平かづみ。クラウドをつなぐをテーマに、AWS/Azure/SoftLayer/Bluemixなど分け隔てなくクラウドに接する。女性へのアプローチを増やすべく、SoftLayer女子部運営に属しつつ、Bluemix 女子部を立ち上げる。




ASCII大谷:TECH.ASCII.jpの担当記者 大谷イビサ。連載のホスト・執筆者。お酒で舌をなめらかにして、SoftLayer/Bluemixの話を聞こうとしている。相変わらず写真が荒くてすいません。


140種類以上のサービスが林立するBluemixを探る

ASCII大谷:それにしてもSoftLayerとBluemixはサービスの数が多いですよね。正直、私もまったく追い切れていません。

NI+C常田:AWSはサービスが体系付けられていて、マニュアルとか、サービスの説明もうまい。一方、Bluemixは良いサービスがあるのに説明が下手で、イマイチなにがあるのかわからない(笑)。サービス本体も、補助的なサービスもデータベースもすべてがぐちゃぐちゃに混ざっているので、どれがどの機能を提供してくれるのか、さっぱりわからない状態。使ったら便利だろうなというサービスが放置されていて、「こんな便利なモノ、昨日提案しなかったな」みたいな(笑)。

日立横井:最初、Bluemix勉強会に参加した時、サービス140種類以上ありますと言われて、どれを使えばいいかわからなかったです。結局、6回くらい勉強会に参加して、徐々に自分の作りたいアプリケーションに使えるサービスを見つけました。

ASCII大谷:ポートフォリオが見えにくいと。

NI+C常田:AWSのサービスって単機能なものの集合じゃないですか。その点、Bluemixの場合、Bluemix自体のサービス、IBMのソフトウェアをSaaS化したサービス、ComposeやStrongLoop、AlchemyAPIのように買収してBluemixに組み込んだサービス、BoxやSendGridのようにサードパーティーでエントリポイントだけあるものなど大きく4種類くらいあるんです。

CTC原田:あと、Bluemixからワンクリックで買えるモノと買えないモノが混ざっているんですよね。連携しているモノはクレデンシャル情報が環境変数で共有されているので、開発は容易。でも、ソフトウェアをSaaS化して、Bluemixに組み込んでいるものとかは、製品単体で認証情報を持っているので、APIを書かなければならない。結局、常田さんが話していた4種類でアプリケーションの親和性が異なるんです。

ASCII大谷:同じような製品がSoftLayerと、Bluemixで重複していることもあるんですか?

NI+C常田:たとえば、WebSphereとかはフルスタックのミドルウェアなので、ユーザー管理もクラスタ環境のデプロイの仕組みも全部自前で持っている。だからSoftLayerで立ち上げると、フル機能なサーバーが立ち上がります。一方、BluemixにはWebSphereのランタイムだけを動かせるLibertyがあります。ところが要望が多かったのか、最近はBluemixにも「WebSphere」というサービスが出てきました。こんな感じで重複している所があります。

ASCII大谷:私もサービスの密度が濃くなると、「林が森になる」みたいな書き方しますが、そういう意味ではBluemixは最初から森というか、百貨店化しているんですね。

NI+C常田:そうです。IBM側としては、百貨店でいいと思っているようです。AWSの場合、RDBだったらこれとか、NoSQLだったら、これという感じで決まっているんですけど、Bluemixの場合、同じ種類のデータベースがいっぱいある。今までお客様が使っていたデータベースや言語をそのまま使ってもらえますというのを、あえて売りにしています。

ASCII大谷:確か提供形態もいろいろあるんですよね。

NI+C常田:Bluemixは「Local」とか、「Dedicated」という提供形態があります。Localというのは自社のデータセンターにBluemixを導入する形態なんです。さらにDedicatedはSoftLayer上に実装したBluemix環境を貸してくれるというサービスなので、どちらの場合もマネジメントをIBMに任せられます。

ASCII大谷:うぉーっ。ややこしい。課金体系的にはどうなんですか?

NI+C常田:Bluemix Dedicatedはリソースの上限が決まっている固定料金です。その中であれば自由に使えます。いまはWatsonとかIoT FoundationとかDevOpsも今のところないです。

オークファン大平:それはなんだかもったいないですね。

NI+C常田:SoftLayerでは、先日はコロケーションも始めたので、サーバーとか、アプライアンスをSoftLayerの横に置けます。

ブイキューブ原田:コロケーション!激しく時代に逆行しているけど、いいなあ。

CTC原田はWatson使いすぎ!料金はここに注意

ASCII大谷:SoftLayerとBluemixって課金体系としてはどうなんですか?

NI+C常田:SoftLayerは従量も、固定も用意されています。サーバーが時間単位の従量課金か、月額単位です。

CTC原田:Bluemixはわかりにくいですね。基本従量課金なんですが、140くらいサービスがあるので、一個一個値段が違う。なので、構成を考え尽くさないと、カリキューレーターで料金が出せません。

ASCII大谷:まあ、クラウドの課金体系がわかりにくいのはSoftLayerやBluemixに限ったことじゃないんですけどね、と大人のフォロー。

オークファン大平:先日、メモリ量を多めにしたら、請求がやばかったです。節約しなきゃなと。

NI+C常田:WebSphere系とかメモリ容量が必要なので、インスタンス動かしてると、チャージはドキドキします。

CTC原田:一応、上限料金が来たら通知させる機能はあるんですけど、設定しないとアラートが飛ばない。たとえば、Watsonはトレーニングさせると1回で210円なので、頻繁に使うようなアーキテクチャにすると破産します。先日、私も月40万円の請求が来て、Watson破産したばかりです(笑)。上司に怒られました。

オークファン大平:まじですか?なにやったんですか?

CTC原田:R&Rという文書検索の仕組みを使ったんですけど、データ登録して、調子に乗ってトレーニングしていたら、気づけば20万円とかいっちゃっいました(涙)。

オークファン大平:SoftLayerも仮想マシンちょっと高くないですか? 止めてても4000円くらいかかっていて、AWSユーザーとしては驚きました。

NI+C常田:うーん。SoftLayerでは、サーバーを止めてても課金されるので、ここは注意したほうがいいです。とはいえ、サポートは無料だし、システム全体でみると安くなる場合もけっこうありますよ。また、仮想マシンとしては安いし、ストレージもS3と同じくらい。容量が多くなると、単価がオブジェクトストレージと同程度になります。使う機能によって向き不向きがありますね。

ブイキューブ原田:昔はネットワークもめちゃくちゃ安かったんですけどね。

NI+C常田:昨年の夏にアウトバウンドの無料枠が減ってしまった。物理で20TBあったのが、500GBまで減ったので、けっこう痛いです。データセンター間ネットワークが無料であるのはありがたいですが……。

CTC原田:とはいえ、Bluemixの多くのサービスで無償プランを作ってあるのはありがたいです。

NI+C常田:Bluemixで難しいのはサービスによっては無償プランだからといって全機能が使えるわけでもない。なので実際に有償プランで確認が必要なサービスもあります。

CTC原田:基本的にプランの切り替えができないんですよ。スタンダードからプレミアムへ移行すると、作り直しです。

SLAや仕様変更などBluemixのリアルな話

ブイキューブ原田:Bluemixってプロダクションとしてはどうなんですか?

NI+C常田:うーん。ストレージ容量が最大で20GBとか、まだプロダクションに値しないサービスもありますよ。

CTC原田:この前まで、BluemixはSLAがなかったんですよ。先日、ハッカソンで使うサービスが4日間くらいメンテナンスになっていて、デモが全然できなくて、ブチ切れそうになりました(笑)。サービスが140以上あるので、毎日なにかしらメンテナンスしている。Watson使いたいというところも増えているので、止められちゃうと影響でかいですね。

オークファン大平:私は記事を書いていたら、サービスがメンテナンスになってしまい、リージョン変えたら使えました。原稿間に合ってよかった。

CTC原田:あとは認証まわりはもっと細かく設定できるようにしてほしい。Bluemixって高価なサービスも、安価なサービスも、数多くのサービスが混ざっている。でも、現状はユーザー管理がイマイチで、ユーザーごとの細かいアクセス制御ができない。

オークファン大平:けっこうなくなったサービスもありますよね。

CTC原田:MongoLabがなくなったとか、Watson Question and Answerがなくなったとか。Bluemix Challengeでは両方使っていたので、ちょうど先週移行の通達が来たので、大変でした。

NI+C常田:確かオブジェクトストレージも2つバージョンあったのですが、1つはなくなりました。消して、再度アカウント作ろうと思ったら、もうなかった(涙)。

日立横井:仕様の変更もありますよね。Speech to Textも日本語化されたときに、仕様変更されて、今までに作ったアプリケーションはこのまま使い続けられないのだなあと思いました。

オークファン大平:ベンダーの仕様変更に振り回されますね。要注意ですねえ。

CTC原田:でも面白いですよね。新しいモノ好きにはたまらないです。

 SoftLayer/Bluemix編、次回に続く

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