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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 ― 第104回

Apple vs. FBIについて、銃社会のアメリカで考える

2016年02月26日 21時30分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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iPhoneのロック解除を巡るAppleとFBIの戦い。Appleに対する「広報戦略だ」との批判と、顧客のプライバシーを守る正義を貫くべきとの声の間で、世論も割れています

 ぽかぽかと暖かい雰囲気のバークレーをかき消すのは、花粉によるくしゃみだけではありません。先週から、米国ではAppleとFBIの争いについて、大きく取り上げられています。

 この議論については、明日身近に同様の事件が近くで発生するかもしれない、カリフォルニアで暮らしている筆者にとっては、他人事ではありません。

 日曜日の昼下がり、近所の公園のベンチでピクニックをしていた人たちも、この話題について議論をしていました。何が問題で、どうすればよいのか、どう考えるべきか。個人の自由と身の安全を天秤にかけるべきか否か。非常に関心の高い話題になっているのです。

Apple vs. FBI、これまでの流れ

 2015年12月に発生した、カリフォルニア州サンバーナーディーノ市での銃撃事件では、3人の犯人が14人もの命を一瞬にして奪いました。3人はISへの忠誠を示していたとされ、テロ事件扱いとなりました。しかしながら、これまでテロに対して組織に対する捜査で対処してきた当局にとっては、これまでの方法ではテロが防げない可能性を示す、非常に頭が痛いケースということになります。

 なぜAppleがこの事件に関わることになったかというと、犯人の1人が所有していたiPhone 5cのロックをFBIが解除できず、中のデータにアクセスできない状態にあるからです。そこでAppleは、FBIに対してこのデータへのアクセスを実現する協力をせよ、という命令が出される流れとなりました。

 これに対してAppleはすぐに、Tim Cook CEOの名前で公開書簡をウェブサイトに公開しました。その中で、FBIによる要求は行き過ぎたもので、容認できないとして、拒否する考えを述べました。裁判所への回答期限は2月22日で公開書簡はそれよりも早く出されたものでしたが、回答日にも、Appleは同様に協力を拒否する回答をしました。

なぜAppleが拒否するのか

 ここで問題になっている端末データへのアクセスは、我々にとっても非常に身近で、iPhoneユーザーなら毎日使っている機能です。それはロック画面の解除。パスコードを入力して、端末のロックを解除する話です。最近ではTouch IDを使って指紋で解除することもできます。

 問題は、このパスコードを10回間違えると、端末の中身のデータが消去(スワイプ)されてしまう点。4桁であれば最大1万通りを試せば済むのですが、それはできません。FBIを持ってしても、この最も初歩的な関門を突破できずにおり、Appleに対して、中身を消さずにロック解除できるよう、協力を求めているのです。

 Appleは、FBIへの協力に対して拒否している理由は、例えば今回引っかかっているロック画面の解除を行うためのソフトウェアや仕組みを世の中に存在させてしまうことを問題視しているからです。

 たとえばiOSに対して、捜査協力時のロック解除機構を設けたり、ロック解除ができる外部ツールを開発することは、Appleや操作当局者以外にも、この仕組みを活用できる人、組織、国家の存在を許す“可能性”を作り出してしまうことになります。

 AppleはiPhoneに対して、コミュニケーション以上の役割を担わせようとしています。例えば、Apple Payでお金を、そしてヘルスケアアプリで健康を、iPhoneの機能として取り込みました。今後、スマートホームや車との連携が進めば、より大きな財産の管理を、iPhoneを通じて行う状況が生まれることは、想像に容易いのです。

 そして、こうした生きる上で大切なものとの連携に納得してもらうには、公的機関に対しても、プライバシーをきちんと守ることができるブランドでなければなりません。Appleとしては、そうしたブランドを守るのか、捜査機関に屈してしまう存在なのか、という瀬戸際に立たされている、と見ることができます。

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