このページの本文へ

急変貌する“巨人”―「IBM InterConnect 2016」レポート第2回

Appleの悲願をIBMが叶える

iPhone/iPadネイティブ言語のSwiftがIBM Bluemix上で走る衝撃

2016年02月23日 17時30分更新

文● 吉田ヒロ

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
OS X/iOSのネイティブ言語であるSwiftの実行環境を、IBMのPaaS「Bluemix」上に構築することを発表

 2月22日(現地時間)、米国・ラスベガスで開催されている「IBM InterConnect 2016」に、IBMフェローでバイスプレジデント兼MobileFirst CTOであるジョン・ポンゾ氏と、Appleのプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントであるブライアン・クロール氏が登壇し、Appleの「Swift」とIBM「Bluemix」の連携について語った。

IBMフェローでバイスプレジデント兼MobileFirst CTOであるジョン・ポンゾ氏(左)と、Appleのプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントであるブライアン・クロール氏(右)

 「Swift」とは、Appleが開発したプログラミング言語。MacのOS X、iPhone/iPadのiOS、Apple TVのtvOS、Apple WatchのwatchOSのネイティブアプリを開発可能だ。また、昨年オープンソース化したことで、Linux(Ubuntu)でも扱える。

Swiftはオープンソース化によって、ソースコード管理・共有サービスの「GitHub」上でApache 2ライセンスで配布されている

 一方の「Bluemix」は、IBMが提供しているPaaS。PaaSとは「Platform as a Service」の略で、かなりざっくり言うと、クラウド上に用意されたプログラム実行環境。具体的にBluemix上では、Node.js、PHP、Python、Rubyなどの言語で書かれたプログラムを実行できる。ちなみにIBMは最近、FinTech(金融系テクノロジー)分野にも積極的にBluemixを売り込んでおり、スタートアップ企業向けに低コストで始められる料金体系を整備している。

 AppleとIBMはというと、数年前まではシステムインテグレーターを介して間接的には繋がっていたが、2014年7月に両社が直接パートナーシップ契約を結んでからは主にiPhone、iPad向けの企業ソリューションについて「IBM MobileFirst fot iOS」として協業をスタート。

iPhoneやiPadを活用した企業向けソリューションを提供する「IBM MobileFirst for iOS」

 Appleは、過去にサーバー向けOSであるOS X Serverや、ラックマウントサーバーの「Xserve」などをリリースしていたものの、伝統的な法人営業力の弱さの結果、OS X ServerはOS Xのアドオン的な位置づけに格下げ、Xserveは販売終了という道をたどった。しかし、2014年以降はIBMを手を結ぶことで、フロントエンドのデバイスにはiPhone、iPadを提供、バックエンドのシステムはIBMが開発するという、両社の得意分野を組み合わせたことで成功を収めている。タブレットとしてiPadが法人導入される事例は多く、すべてがIBM提供ではないものの、外食産業やアパレル産業、航空会社、空港などに導入されており、街中で目にした人も多いはずだ。

 このたび発表されたAppleとIBMの連携は「IBM MobileFirst fot iOS」を開発面から強力に支援する取り組み。具体的には、Bluemix上にSwiftのランタイム環境を用意し、Swiftで記述されたプログラムを実行することが可能になる。Node.js(JavaScript)やPHP、Pythonなどと同様にSwiftでサーバーサイドプログラムを構築できるわけだ。

SwiftがBluemix上で動作することで、従来はネイティブアプリでしか実現できなかった機能をサーバーに直接アクセスして利用できようになる。クラウド上で実行されるため、クライアントOSの種類を問わない。Swiftで作られたウェブアプリケーションの増加を期待できる

 Appleの開発環境としてはこれまで、MPWやCodeWarrior(他社製)、Xcodeなどが提供されてきたが、68k/PowerPC時代のClassic OS時代はToolboxプログラミング、OS X時代はObjective-C言語の難解さなどが敬遠され、C/C++などのようにメジャーなプログラミング言語としての地位は確保できず、開発者が慢性的に不足するという事態を招いた。そこでAppleは、OS X/iOSのネイティブ言語であるObjective-Cとは別に、スクリプト言語的な特徴を備えつつネイティブアプリを開発できるSwiftを登場させたという背景がある。前述のようにSwiftはオープンソース化され、現在はLinuxで動作する環境を整い、OS X/iOS以外のマルチプラットフォームでの普及を目指していた最中だった。

 今回のBluemixとの連携によって、開発者にとっては同じ言語でローカルアプリとサーバーアプリを開発できるというメリットが生まれる。現状ではもちろん、Node.js(JavaScript)やPHP、Pythonなどのウェブサービスで主流の言語を習得したほうが即戦力だが、数年後にはApple系開発者が使い慣れたSwiftがこの一員に仲間入りするかもしれない。

 現在、スマホゲームはUnityやCocos(Cocos2d-x)、Unreal Engine 4などの強力かつマルチプラットフォームの開発環境が主流で、正直Swiftといえども勝ち目はないだろう。

 一方で業務で利用するアプリやサービスは、ネイティブ言語で開発したほうが実行速度が上がるうえ、移植性は低下するもののOS固有の機能を使いやすいというメリットがある。

Appleのブライアン・クロール氏によると、LinkedInやSlackなどはSwiftで書かれたプログラムとのこと。 そして、最も大きなSwiftデベロッパーはIBMで、すでに100本以上のアプリを開発しているという

 AppleはIBMとの協業で法人向けにiPhoneやiPadを販売するチャンネルを確立しているので、業務向けを中心にSwiftで書かれたアプリがさらに増え、その流れでサーバーサイドのプログラムもSwiftで書くのが当たり前になる日を期待したい。

クロール氏はSwiftを習得することのメリットとして「Learn Swift, Make something great」というスライドを表示

■関連サイト

カテゴリートップへ

この特集の記事

ASCII.jp RSS2.0 配信中