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東大ベンチャー・ダブルエル保手濱彰人社長インタビュー

「タルるートくんVR化したい」江川達也さんも認める“超ヘンな起業家”

2016年02月22日 17時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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漫画を武器に再起をめざす

 当時は市場に広告を入れた無料漫画アプリが出はじめたばかり。たまたま漫画家とつながりのある社員もいた。ソシャゲの仕組みを漫画に応用し、先行する競合に乗っかる形でビジネスモデルを築いたところ、ふたたび売上は上がりはじめた。

 しかし無料漫画アプリの参入障壁は低い。競合が急増、開発費も高騰した。これは最初こそ売上が立っても、いつかソシャゲと同じ道をたどる。漫画家とのつながりを生かして本当に新たな道をつくらないと死んでしまう。

 危機感をおぼえてつくりあげたのが現在のビジネスモデル。法人向けマーケティング、海外向けの権利管理を事業の柱とするライツマネジメントビジネスだ。漫画やゲームのキャラクターを持ち前の営業力で売っていくことが強みになる。

 「マーベル(現在はディズニー資本)がベンチマークになっているんです。彼らは『スパイダーマン』などを何回も焼き増し、リメイクし、映画をグローバル配信していますよね。コンテンツを知的財産とみなしてマネジメントする市場は海外にはすでにある。そこならお金も集まりやすいし、潜在市場も大きいはずだと」

 出版社をはじめコンテンツホルダーも海外展開はしているが、こぼれるコンテンツは出てくる。加えて、今までは日本国内市場が大きかった。漫画でいえば雑誌をつくって単行本を売ってメディアミックスすればビジネスになる。わざわざ苦労して海外に出なくてもいいと考える側面があったのではないかと予想する。

 「海外には『海賊版』という潜在市場もある。日本はもう成長市場でなく、新興国のユーザーや企業が狙いになります。海外相手にライセンシングしてもいいし、ユーザー相手に課金でコンテンツを配信してもいいなと」

 ビジネスモデルに自信を持つと、つながりのある漫画家にかたっぱしから口説きに回った。持ち前の営業力で、多くの漫画家から許諾を獲得。コンテンツ使用権を拡充させた。『特命係長只野仁』『まじかる☆タルるートくん』などの有名作品の配信も手がけた。

 中でもまじかる☆タルるートくん作者の江川達也さんは、保手濱社長のヘンなところを気に入ったようだ。江川さんは自身が持つ作品の権利を「こいつならまあいいか」と保手濱社長に預けた。そこでタルるートくんを再興しようと、新人作家に“今風の絵で”二次創作をさせるリメイク企画を進めたこともある。

 「それでは江川達也先生の絵が今風ではないと言っているようなものだ」と関係者にビックリされたこともあったが「あ、先生は絵がうまいんですね。知りませんでした」と平然としていたそうだ。江川達也氏本人からは「バカだがバイタリティはあるからまあ頑張れ」と、元気のある若者として認められているという。

 そんな中、まさにいま進めている企画が『VRタルるートくん』だ。

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