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伊勢氏、及川氏、よしおか氏が登壇したCROSS 2016の名物パネルを実況

チーム作りやモチベーションをどうする?CROSSで先達の濃い話を聞いた

2016年02月15日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月5日、横浜市の大さん橋ホールにて「エンジニアサポート CROSS 2016」が行なわれた。「先達に聞くこれからのエンジニア像」と題されたパネルディスカションでは、Web業界を牽引してきた3人のエンジニアが自身の経験を元にした深みのあるトークを繰り広げた。

エンジニアは自身で条件を決めるようになれ

 昨年も行なわれた人気パネルに登壇したのは、元テコラスの伊勢幸一氏、元Googleで現在Qiitaを展開するIncrementsに籍を置く及川卓也氏、楽天 技術理事のよしおかひろたか氏の3人。エンジニア業界では知らない人がいないベテラン3人から含蓄のある話を聞き出そうと、CROSSのメインステージには多くのエンジニアが詰めかけた。

 冒頭、モデレーターのニフティ森藤大地氏が出したテーマは「与えられた条件で最高のパフォーマンスを出すために」。若い頃にエンジニアとして、どのような研鑽や取り組みをしてきたかが最初のお題だ。

 20代の頃はベンチャーにいたという伊勢氏は「若い頃は与えられた条件というのはなく、サーバーを小脇に抱えて、客先に走っていた。もう少し年をとると、納期や予算などの条件を自分で提案するようになる」と語る。

アウトロー発言で場を沸かす伊勢幸一氏

 よしおか氏は「僕が大学を卒業したのは30年前。ひょっとしたら生まれていない人が来ているかもしれないので、あまり参考にならないかもしれない」と前置きしつつ、「30年経ってわかったことは、世界はソフトウェアでできているということ。日本はいまだにハードウェア偏重で、ソフトウェアの価値に気づいていない人が多い」とアピールする。

 さっそく伊勢さんから「このテーマとどう関係があるんですか?」とツッコミを受けたよしおか氏は、参加者の多くがSIerではなく、(ソフトウェアをベースにした)Web業界で働いていることに対して、「みなさんは与えられたコンディションを自ら選んでいる」と満足そうに語る。

 テーマに沿った話に戻そうとする及川氏は、DECからマイクロソフトに派遣されて、Windows NTをAlphaに移植するプロジェクトにリーダーとして携わっていた頃の話を披露。「プロジェクトに参加してみたら、人がいない、ハードがないなど問題山積み。レドモンドから日本に電話会議しても全然解決しなかった。そのとき上司に言われたのは『結局、問題は解決しないんだから、その中でどうするかを考えろ。それができたとき、初めてリーダーになれる』ということ」(及川氏)。伊勢さんが話していたのと同じで、環境は自ら作っていくのが重要だということだ。

 もう1つ及川氏は前職のGoogleにおいてエンジニアに響いていたという「Creativity Loves Constraints」フレーズを披露する。「今、ヤフーでがんばっているマリッサ・メイヤーが語ったフレーズの1つで、日本語で言うと『創造性は制約を好む』ということ。制約があるからこそ、イノベーティブな考え方ができる」と及川氏は語る。実際、及川氏がChrome OSの開発に携わったときは、立ち上げて10秒でユーザーがGmailを使えるようにするという「制約」を課したという。これによって、OSやハードウェアで要らないモノをとことんそぎ落とすことができ、イノベーティブなものを作れたという。

 「1分かかるものを40秒にしろというのでは、全然イノベーションは起きない。制約条件が厳しければ厳しいほど、普通のやり方ではダメだという話に落ち着く。20%向上ではなく、10倍にしろと言われる」と語る及川氏。リーダーシップも同じで、制約条件の中でなにができるかで真価が問われると指摘し、「すごくきれいにまとまったね!」と自画自賛する。

10倍レベルのイノベーションを実現する方法

 では、実際10倍を実現するにはどうしたらよいか? 伊勢氏は、「エンジニアに限らないけど、人って社内初とか、世界初というプロジェクトに弱い。そう思わせるようにプロジェクトを立て付け、みんなでいっしょにやろうというチームメイキングをやっていく」と語る。大きな旗を振って、チームが自ら参加したいと思わせる雰囲気作りだ。

 及川氏は相手にモチベーションを持ってもらう方策として、相手に相談を持ちかけられるようし向けるという方法を挙げる。「お願いすると反発することもあるけど、相談にのってくれよという言葉を自分で発する時は、非常にモチベートされている」(及川氏)。実際、GoogleのIMEを開発していたときは、及川氏がリーダーとしての提案をあえて抑えた結果、失敗もあったが、違う方法でよいモノができたことも多かったという。10倍を実現するためには、エンジニア自らまず言わせること、そしてリーダーは部下から挙がった提案を採用することをやってみるのが重要なようだ。

 一方、よしおか氏はエンジニアと会社の利害関係という点に着目する。昔は1つの会社の中でプロジェクトは閉じていたが、最近では社外との共同作業が当たり前になり、オープンソースのようなコミュニティとコラボレーションするのも一般的だ。しかし、会社ごとの利害で対立する場合は、理想だけを共有して、調整するしかない。「僕自身はDEC時代に文字コードの標準化で、他の会社の人といろいろ議論を積んできた。その中には優秀なエンジニアもいっぱいいたが、会社の利害関係を考えた結果、まとまりに欠けた。結果として日本の提案は国際的な競争力を持たなかったなあという感想がある」とよしおか氏は振り返る。

 伊勢氏は「10倍の成果を出すには、やはり携わっている人の気持ちやモチベーションが重要。言われたことしかやらないヤツが100人いても絶対10倍にはならない」と語り、自発的に動き、提案できるエンジニアを育てることで、想定外のパフォーマンスが生み出されるとまとめた。

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