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全国1340の医療機関が賛同

スマホからいつでも遠隔診療、「ポケットドクター」開始へ

2016年02月05日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 スマートデバイスを用いる遠隔診療サービス「ポケットドクター」が2月4日、発表された。すでに全国1340の医療機関から賛同を受け、4月から提供が開始される。

 遠隔診療は従来、離島や僻地など物理的に対面診療が困難な場合を除き、原則禁止されていた。一方で通院が困難な高齢者が今後急増すると考えられることから、2015年6月30日、政府の「経済財政運営と改革の基本方針 2015」で、「遠隔医療の推進」が盛り込まれた。

 しかし、気軽に遠隔診療を受けられるような身近なサービスはまだ存在しないのが実情という。

 そこでリモートテクノロジーに強い株式会社オプティムと、東京大学医学部附属病院の医師の互助組織としてスタートし、独自の医療情報プラットフォームを提供しているMRT株式会社がタッグを組み、開発したのがポケットドクターだ。

医師の互助組織を母体として設立されたMRT東大卒医師3人に1人はMRT会員

スマホからいつでも遠隔診療

 ポケットドクターは、MRTの医療機関・医師ネットワークを活かし、医療を必要としている人と遠隔地の医師をつなぐサービス。従来の電話診療では、相談者が話す内容でしか症状が判断できなかったが、ポケットドクターなら、患者のスマートデバイスで撮影した顔色や患部の状況、あるいはウェアラブルデバイスから収集される様々なバイタルデータを確認しながら、より具体的なアドバイスや診療が行える。

 また、会社員など体調がすぐれないけど忙しくて病院に行けない場合も、スマホを通じて即座に医師のアドバイスが受けられるため、より身近な遠隔医療が実現する。

 サービスメニューは、「かかりつけ医診療」「予約相談」「今すぐ相談」の3種類。

 「かかりつけ医診療」では、いつもの先生にどこからでも再診が受けられる。患者はスマートデバイスでポケットドクターのかかりつけ医診療機能にアクセスすることで、先生と画面越しにつながれる。忙しくて通院(再診)できない時や、高齢者など通院自体が困難な患者が、気軽に自身の体調を相談したり、怪我などの患部の状態を診察してもらえる。保険適用できるのも特長だ。現在、全国1340の医療機関が賛同しており、参画する機関には4月から無償で提供する。

 「予約相談」では、ポケットドクターのアプリから医師の時間を予約し、全国にいる各専門医に直接健康相談できる。医師ネットワークを保有するMRTならではのサービスで、近所に専門医がいない場合のファーストオピニオンや、かかりつけ医とは別の医師に意見を聞きたい場合のセカンドオピニオンとして利用できる。加えて、産業医やメンタルヘルスチェック義務化に伴う企業利用も視野に入れる。こちらは4月以降順次提供を開始し、1500円/5分という価格体系。

 「今すぐ相談」では、24時間365日、いつでもどこからでもすぐに医師に健康相談できる。例えば、子供が夜中に体調を崩した場合、あるいは健康診断でD判定になったけど追加診察をうけるべきなのか、何科にかかればいいのか、判断に迷うような場合に、短時間で気軽に相談できる。2016年度内に提供開始する予定。価格は月額500円。

 いずれも、アプリから相談したい内容やプロフィールを入力し、表示される医師の中から任意に選択して、スマートデバイスごしに患部の映像などを共有しながら、診療・相談できるのが特長だ。

 MRT 代表取締役社長の馬場稔正氏は「以前激しい腹痛になった時に友人のドクターに相談し適切なアドバイスを受けた。その時、これをサービス化して世に広めたいと思った。今の時代、クラウド、モバイル、IoT、通信が発達しているので、本当に実現できるのではと考えた頃に、(オプティムの)菅谷社長と出会った」とコメント。これに対し、オプティム 代表取締役社長の菅谷俊二氏は「馬場社長との出会いは大きな意味があった。当社では『ネットを空気に変える』というミッションに向けて事業を進めているが、一番役に立てるのが医療分野。ところが当社自身はIT企業なので、なかなか医療分野に進出できなかった。そこで馬場社長と出会って、医療にオプティムの技術を活かせる機会ができた。これをやるためにオプティムは存在したと言ってもいいくらい、やりたかったことだ」と応えた。

MRT 代表取締役社長の馬場稔正氏オプティム 代表取締役社長の菅谷俊二氏

この業態は日本の医療を変える

 発表会には、医師も多数参加しており、代表として、医学博士 慶応義塾大学名誉教授の相川直樹氏が「この業態は日本の医療を変える。寝たきりの患者も診察が受けられるほか、地球の裏側でも可能になる。また、女性の医師は産休などがあって現場を離れることがあるが、そういう人たちの能力もうまく活用できる。これはぜひお手伝いしたいと思った」とコメント。

 医学博士と衆議院議員として活動する、眞愛会理事長 伊藤くりにっく院長の伊東信久氏は、「2015年の遠隔医療の推進という緩和から、さらなる緩和を目指したい。医療現場を知る議員として、法改正も含め、必要なら超党派組織を作りながら推進したい」とコメント。

在宅医療に
ちょっとした気になる症状の相談に

賛同する医師をどれだけ増やせるかが鍵

 今後の目標については、MRTの馬場社長が「まだ始まったばかりで課題もあるだろうが、2019年3月までに国内の全医療機関のうち10%、1万以上にかかりつけ医診療として参加してもらえるよう進めたい。また、予約相談については参加医師数1000人以上、今すぐ相談については1万人以上を目指す」とした。

 また技術面では、今後さまざまなヘルスケア機器やウェアラブルデバイスとの連係を進めていく。これらにより、利用者自身が自覚していないような情報を医師や医療機関と共有することで、深刻な疾患の悪化を予防できると期待される。

ヘルスケア機器やウェアラブルデバイスとの連携イメージ

 オプティムの菅谷社長は「サービスを開始する4月ごろには数種類の機器が利用できるのでは。シングルサインオンでデバイスメーカーの垣根を超えて参照できる仕組みを想定している」と説明。また「電子カルテとの連携も検討する。こちらは各医療機関によって作りこみが様々なので、現在とある病院の協力の下、患者のスマホに電子カルテをダウンロードして、他の病院とは画面転送する形で共有できないか検証している。患者の許可があれば当社のクラウドにアップロードする仕組みも考えられる。夏以降には対応できるのでは」とした。

 一方、薬をどうするかについては、まだ不透明な部分も。「処方箋を郵送するなど、医療機関毎に対応は異なる見込み。これはネット医薬品販売と同じ課題があると思うので、法改正も必要になるかもしれない」という。

 それでも、遠隔診療が当たり前の世界へ、期待したくなるサービスだ。

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