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Amazon・楽天が扱えない品で勝つ BASEがつくる20万超のネットショッピングモール

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 2012年11月のサービス開始から約3年間、公式発表ではすでに20万アカウントを超えて利用されている人気のネットショップ開設サービスが『BASE』だ。

 初期費用ゼロ・月額無料のフリーミアム型。「お母さん」でも作れる手軽さの一方で、アクセス解析や多彩なカスタマイズ、さらには仲介決済機能も備えている。

 BASEはサービス自体が管理画面内で完結するようにできており、ECサイトの構成から売り上げの振り込みまで簡単に操作できる。振込申請からの入金手配も10営業日(土日祝除く)と、中小企業にとってキャッシュフローがコントロールしやすい環境を作っている。

 「流通総額は発表していないが、それなりになっている。当初、母親のようなリテラシーが足りない人向けに作ったが、現在は幅広い需要にプロダクトを提供できるようになり、より多くの人に使ってもらえる環境になっている」と語るのはBASEの鶴岡裕太代表取締役CEO(最高経営責任者)。

 BASEは開設当初、1000店を集め話題になったスタートアップで、昨年には決済の新サービス『PAY.JP』も始めている。次の段階が見えてきたベンチャーの展望をうかがった。

クレジットカード、コンビニ・Pay-easy、銀行振込、後払いの4つの決済方法に対応したエスクロー決済「BASEかんたん決済」。ショップ側と購入者との間で取引を行う。

ショップをつくる点においては国内随一

BASEの鶴岡裕太代表取締役CEO(最高経営責任者)

 鶴岡代表によれば、現在のBASEの店舗伸長数は新規で月間1万店舗が増え続けている状態。純増は日に日に大きくなってきているという。好調の要因については、「他のサービスと比較するなど外部的要因で見ても、ショップをつくる点においては国内で一番条件が良いと思う」と語る。

 当初は創業理念にあるような、個人店舗のお母さんや、地方の小売店でも簡単にネットショップをつくれるものだった。そこから広がりを見せた現在は、HTMLをいじれるほか、リッチなテンプレートも備えているが、「簡単にできてわかりやすくシンプルといったBASEらしさ」(鶴岡代表)の維持も忘れてはいない。

つくったあとの「BASEApps」でのフォローも堅い。人気は「商品ラベル」「送料詳細設定」「納品書ダウンロード」。個人レベルのショップ開設での需要が見て取れる。

 外からはわかりにくいが、直近ではより機能的なネットショップの開設も増えている。誰でも利用できるシンプルさが売りのBASEで立ち上げたとは一見思われないような、既存の他社ECサイトのほとんどが備える機能を実現できるようになったらしい。いわゆるウェブリテラシーに強い層、より売りたい層にも使われるようにするためだ。

 従来推し進めていた小規模の小売店や農家、ハンドメイドのグッズ、クリエイターズアイテムの店のか、現在ではガジェットを取り扱うショップ、アニメの公式グッズ販売、アパレルショップのEC、さらには芸能事務所での利用もあるという。着実にその土壌は広がりを見せている。

口コミで毎月1万の増加
いよいよ本格モール化も見えてきた

 月に1万ものショップオーナー増加の秘訣は、直近だとウェブマーケティングのみだという。

 「これまで積み重ねた資産がたまってきている。ユーザーがたくさん使ってくれているのが大きい。1万が新規というのも、ほとんどが(有料登録やスポンサー広告などの結果を含まない)オーガニックからの流入。バナー、アドネットワークからの流入も多くはなく、いまだに口コミベース。予算をかければもっと増やせると思う」(鶴岡代表)

 一番の利用層はアパレルだ。幅も広く、アウターから手袋、靴下の専門ショップも含めて数が多いという。だが、BASEのプラットホーム上でアパレルを推すようには見せていない。「BASEには色を付けたくないと思っている。ハンドメイドしか使えませんではなく、ネット上で商売をしたいすべての人に使ってもらえるように」

 しかし、そのような個別店舗中心の流れにも変化が訪れている。BASE社内では、モール強化の準備が進んでいるという。「今年はタイミングがきている。アプリの拡充を進め、さらにモールを強化しようとしている」と鶴岡代表は語った。

2015年6月に、ショッピングアプリとしての、iOS・Androidでのアプリはリリース済みだ。

 これまでもBASE店舗からの購入ができるショッピングアプリはあった。ただ、完全なモール化とはなっておらず、あくまで20万店舗の中からBASEのスタッフが厳選して商品をセレクトしたもので、検索性での使い勝手も弱かった。

 外側から見えなかった20万規模のショップ群が、どのように姿を現すのか。それぞれの規模は小さいとはいえ、現在4万店舗超の楽天に対して、数では圧倒する形だ。鶴岡代表によれば、BASEのショップにはアマゾンや楽天にはない、パーソナルな作り手のアイテムが多いという。

 「アマゾンはモノをつくっている人と販売している人が分かれている。一方でBASEはつくっている人=売っている人がほとんどなので、第三者からでは魅力を伝えづらいものが多い。BASEは作っている方が直接売れることを大事にしている。これまで店舗ごとの存在感を強くするため、あえてモールはやっていなかった。3年たってみて、20万のショップ群が楽天やアマゾンにはないものになってきた。今後はアプリのモールにおいて購入者側の環境を整えることで、各ショップの販促につなげたい」

 モール強化はリアルな店舗数が直接見える機会にもなる。BASE自体のアクティブユーザー数は出していないが、「それなりにはいる」(鶴岡代表)ということで、それだけ準備は整っている状況のようだ。「それぞれのショップの規模感もサービスと共に成長し、BASEのモールでもほかのECに負けないものができると自負している。アプリのモールを強化し、これまで以上に購入者側のユーザーに使ってもらうことで、それがネットショップ開設のプラットホームの価値に代わるタイミングになる」

 モール強化に向けた大きなチームも、BASE社内では今期から組んでいるという。「BASEではこれまで『簡単につくれるか』にリソースを注いでいたが、それを『どう売っていくか』についてのチームも半分くらいのリソースをつぎ込んでいる。使ってくれる人に、今まで以上に売れるという体験を提供できるようにしたい」

 Amazonやヤフー、楽天がライバルとして本格化するわけだが、得意領域の違いを強調する。「楽天にあるような店舗よりも小さい規模だが、サービスとしては近い仕組み。今後はモバイルが先行するため、すべてアプリで進めている。未来のインターネットに最適なソリューションを使って提供したい。ビジネスモデルはまだまだ変化の余地のある市場」だと鶴岡代表は語った。

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