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編集者の眼第66回

動画マーケターのための2016年10大トレンド

2016年02月01日 18時52分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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動画マーケティングのアンルーリー(Unruly)がデータ分析によるトレンドと2016年の予測を発表した。他のメディアはリリースをそのまま掲載しているが、日本の現状を考えると「これはちょっと」という項目もある。アンルーリーが得意とする動画マーケティングに絞ってトレンド分析と2016年の展望を紹介しよう。

2016年は、「戦い」で動画マーケティングの手法が磨かれる年

2016年にはUEFA欧州サッカー選手権、リオデジャネイロ五輪、米国大統領選挙など、各地で「戦い」が起きることで、世界の広告費は5.6%上昇すると言われる。欧州サッカー選手権の場外では「ナイキ対アディダス」戦が繰り広げられ、大統領選挙では10億ドルにのぼるとされる広告費が投入される。国内でも、7月ころには衆参同日選挙があると言われている。しかも、18歳が投票する最初の選挙になる。超一流のマーケターが、動画の表現や手法で最新のテクニックを駆使することで、2016年は、動画マーケティングの手法が磨かれる年になる。

「強烈な感情」に訴える広告が増える

2016年公開の洋画には『スーサイド・スクワッド』(2016年8月以降公開予定)、『プライドと偏見とゾンビ』(日本公開日未定)など、強烈な設定の作品が多く、時代の空気を作ると考えられる。アンルーリーの動画分析プラットフォーム「ShareRank」の調査では、2015年は幸福感や暖かみといった優しい感情に訴えることが多かった。対して2016年は、強烈な風刺やブラックユーモアが受け入れられやすい状態になる、という。ただし、日本公開はどちらも8月以降であり、米国で作られた動画の強烈さに、日本人がついていけない場合もあるだろう。

定量化の概念が個人の健康管理から資産管理まで及ぶ

スマートフォンとスマートウォッチの組み合わせで、歩数や心拍数など、個人のあらゆる活動を定量化する考え方「Quantified Self」が普及した。2016年は資産をリアルタイムで把握するアプリを銀行が提供するなど、この傾向はさらに進む。マーケティング動画でも、定量化するメリットの訴求を求める広告主が現れるだろう。

タテ型動画ブーム

タテ型動画広告の完全視聴率は、米国で普及しているSnapchat、Periscope、Meerkatで、ヨコ型動画広告の9倍高いことがわかった。日本版Snapchatの「winker」でも同様の傾向があるはずだが、国内で使われている動画サービスでは横画面が前提の場合もある。マーケターは日本の「モバイルフレンドリー動画」が縦なのか横なのか、試行錯誤することになるだろう。

仮想現実で疑似体験

オキュラス リフトは、一般販売価格599ドル(約7万円)で予約受付中、ソニーのPlayStation VRは、予想価格10万円弱で年内発売と見られるなど、2016年は仮想現実が家庭にやってくる年だ。すでに、VOLVOやNORTH FACE、マリオットホテルなどのブランドがVRを使った全方位動画を提供しており、Google Spotlight Storiesはモバイルアプリで疑似的な360度動画を楽しめる。「全方位動画」は提案の新たなキーワードになるだろう。

無音でも理解できる動画

アンルーリーによると、8割以上のユーザーは動画広告を無音で見ている。無音でも理解できるストーリーや、字幕で補助する工夫など、ユーザーの意向に沿った動画制作が重要になる。

絵文字の逆輸入に日本のユーザーはどう反応するか

ユーザーの感情表現手段として、欧米では「Emoji」が注目されている。共感でシェアを生み、話題を拡散させる目的で、コメントで使うべき絵文字を動画内で想起させる演出もある。しかし、LINEのスタンプになれた日本のユーザーに、動画内絵文字は相当奇異に映るだろう。日本生まれの「Emoji」は、日本ではもう流行後れかもしれない。米国本社から送られてきた動画にEmojiが使われていたら、日本支社のマーケティング担当者は苦労するだろう。

メッセージングアプリは、動画マーケティングの新領域

欧米では、フェイスブックのMessenger、WhatsAppやSpanchatといったメッセージングアプリが使われているが、動画広告の口コミがメッセージングアプリで十分に広まっているとは言いがたいようだ。外部から見えにくいコミュニケーションだが、新領域の開拓には十分巨大なマーケットで、国内でも研究が進むだろう。

動画広告もユーザーテスト

ユーザーテストによるクリエイティブの選択と最適化は、リスティング広告や記事の見出しなど、制作費が低いテキストコンテンツでは積極的に採用されている。しかし、動画は撮影から編集までに関わる人数が多く、A/Bテストのような手法を実際には使いにくい。とはいえ、デジタルマーケティングの運用で、効果の追求を止めることはない。やる気のあるマーケターによって、動画広告でも、最初に表示されるタイトルや無音動画の字幕といったテキスト部分から、ユーザーテストに基づく最適化が始まるかもしれない。

動画マーケティングにも「有機・無農薬」が求められている

ニュースサイトやまとめ記事には、【悲報】や【その発想はなかった】、【三度見必須】などの文字が躍っている。毎日のように新しい技術やアプリが現れて「次のブームはこれ」と宣伝される状態に圧倒されているユーザーも多い。人工的なブームを避け、友情や生活の中で発見したユーモアなど、シンプルで無害な情報が増えるだろう。動画広告も衝撃的な内容ばかりが受けるとは限らない。

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