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1.7㎏の銅を4時間かけて削り出す、限定・ド級モデル

超ハイエンドな質感を備えた「AK380 Copper」が国内でも限定発売

2016年01月29日 11時00分更新

文● きゅう

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 Astell&Kernのハイエンドプレーヤー「AK380」。その本体素材をジュラルミンから銅に変更した限定モデル「Astell&Kern AK380 Copper」の発売が決定した。発売日は2月12日。本日から先行予約を開始する。価格は54万9980円。

AK380 Copper

ずっしりとした筐体は、大量生産が難しくプレミアム

 本体サイズは幅79.8×奥行き17.9×高さ112.4㎜で、重量は約350g。サイズは変わらないが、重量はAK380(約230g)に対して、120gも重くなっている。

 AK 380 Copperでは、重さ175gの筐体用に、実に「約1.7㎏」もの無垢の銅ブロックを使用するそうだ。5軸加工のCNC削り出しで、1台当たり約4時間をかけて製造されるという。ちなみに銅の重量はジュラルミンの3.2倍とのことで、通常版のAK380用のジュラルミン55gを削り出すためには530gのブロックが必要とのこと。この重量を聞いただけでも、贅沢さを感じる。

 さらに銅は柔らかいため、切削時に内側にカールしやすい。これが切削機の刃を傷つけてしまうこともあり、製造は熟練したオペレーターが担当し、大量生産が難しいのだという。

インターフェースやデザインは従来と共通

 切削が済んだ後、ヘアライン加工と研磨をし、さらに酸化防止のため、「グリス除去」「エッチング」「皮膜処理」「乾燥」という4段階にわたるコーティング処理を実施するとのこと。また背面に使用するプレートは、カーボン繊維とケブラー繊維を併用。従来のカーボングレーに加え、ブルーの色も入ったツートンとなっている。

AK380の通常モデルとの比較。

 青はオレンジに近い筐体と補色の関係になるため、華やかな印象がある。

トルコ産の天然皮革を使用しているケース

 付属の専用ケースにはトルコ産(Sepiciiler Caybasi製革所)の天然皮革「The V1」を採用。この素材はルイ・ヴィトンの高級バッグのハンドル部分などにも用いられている最高級素材とのこと。表面コーティングはあえて施さず、使い込むことで趣と深みのあるキャメル色に風合いが変化していくとする。

デザインを含めてスペックはAK380と同様だが、重量はずっしりとくる。

 スペックに関しては、従来のAK380(関連記事)に準ずるが、標準のAK240とAK240 SSの違い(関連記事)同様、本体素材による音質の変化はあるようだ。その理由としては、GNDなどの違いがあるためとのこと。同素材は導電性が高く、オーディオ機器のGND強化のために使われることも多い。

 ポータブルハイレゾプレーヤーの常識を破るスペックと価格で話題となった「AK380」だが、回路部分は変えず、筐体の違いでプレミアム感や音のちょっとしたニュアンスの違いを楽しめるようにするのはAKシリーズの開発元、アイリバーの得意とするところなのだろう。

情報量の豊富さは維持しつつ、柔らかくほぐれる

 この記事を書くにあたって短時間であるが、AK380 Copperのサウンドを確かめることもできた。

 まずAK380のサウンドのおさらいから。32bit/384kHzのPCM/11.2MHzのDSDなど最新フォーマットに対応した、旭化成エレクトロニクス(AKM)の高性能DAC「AK4490」を左右独立で使用。さらに200フェムト秒という超低ジッターのVCXO(電圧制御水晶発振器)を使用しているが、簡単に言うと、非常に情報量が多く、正確で研ぎ澄まされた印象がある。

 キレが良く、S/N感が高く(要はノイズが少ない)、静寂からの音の立ち上がり、あるいは埋もれがちな音のディティールを的確に再現する能力が非常に高いプレーヤーだった。ハイエンドヘッドフォンとの組み合わせで聴くと、その高い潜在能力を実感する。

 ではAK380 Copperはどうかというと、この研ぎ澄まされたディティールの再現性が少しほぐれ、ナチュラルで落ち着いた印象になる。感覚的には冬と春の空気の違いといったらいいだろうか。柔らかく暖色系のニュアンスが加わる。

 圧倒的な情報量を持つAK380のサウンドは非常に凛としていて、音の見通しもいい。細い筆で描かれた線画あるいはCGのように緻密だ。ホコリが少なく、気温や湿度も低い澄んだ冬の空気をイメージさせるが、多少の緊張感も強いる。一方でAK380 Copperはその情報量の豊富さは兼ね備えつつも、タッチはより柔らかとなり、色彩感も出てくる。ただしそれは「突如満開の桜が咲く」というほど華美なモノではなく、梅が彩りを添えるぐらいのちょっとした味わいが加味される感覚に近い。ジュラルミンに比べて銅は柔らかい金属だが、その質感の違いが音に出ている感じがするのは面白い。

 例えばDSD 2.8MHzのサンプル音源から10曲目を聴くと、ベースのごりっとした感じやバンドネオンの音色などに結構な差がある。AK380はシャープな音作りで、Hi-Fi的で圧倒的な性能を提供するという意味ではAK380のほうがより分かりやすい面もあるのだが、聴きこむとAK380 Copperには独特の風合いがある。試聴自体はシンプルなシングルドライバーのBA型イヤフォンを使用したが、マルチドライバーの製品になるとそのあたりの感覚もより一層明確になるかもしれない。

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