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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 第11回

「未来がどうなるのか」ではなく「未来をどうしたいか」が問題

フォロワー20万人意味ない、サザエbot中の人が見るネットの今

2016年01月26日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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この記事は「五輪エンブレム騒動はクールジャパン、サザエbot中の人がネットを語る」の続きです。合わせてご覧ください。

なかのひとよ氏のスーツに興味深々な筆者

 前回に引き続き、20万人を超えるフォロワー数を誇る謎のTwitterアカウント「サザエbot」の中の人=なかのひとよ氏をゲストに迎え、インターネットを中心としたデジタルカルチャーの現在にまつわる対話をお届けする。今回はなかのひとよ氏が昨年ドイツのベルリンで行なったプレゼンテーションの様子から、「サザエbot」の今後、そして、なかのひとよ氏自身の次なる活動の構想にいたるまで幅広く話を聞いた。

「匿名性」の真意が理解されたベルリンでのプレゼンテーション

―― なかのひとよさんは2015年の10月、ドイツのベルリンで開催された国際会議「UN|COMMONS」に招聘されて、プレゼンテーションをされて来たんですよね。僕もYouTubeにアップされている映像を見ましたが、あのパフォーマンスはとても評判がよかったと聞いています。ご本人としては海外での初のプレゼンテーションはいかがでしたか?

「UN|COMMONS」プレゼンテーション

なかのひとよ とっても楽しかったわ。最初はサザエbotっていう日本のキャラクターの名を冠したものが、その背景を知らない人たちにどれだけ伝わるのか心配もあったけど…。だってサザエbotって、日本の中でさえ認識のされ方がバラバラでしょう? 単に「格言めいた言葉をつぶやくbot」として見てる人もいれば、「実験的なイベントをするアカウント」として見てる人もいる。「コピペBot」の文脈のまま時間が止まってる人もいるしね。だけどあの会議では、活動の軸にある「Anon-ism」という概念、「匿名性」をポジティブに活用することの重要性や、インターネットのいたるところに聞こえる心の声を可視化する行為の必要性を、かなり深い部分まで理解してもらえた実感があった。

―― あれはベルリンのインターネット新聞「Berliner Gazette(ベルリナー・ガゼット)」が主催する国際会議のシリーズですよね。僕は2014年の9月に札幌で行なわれた「Slow Politics」というテーマのときに「創造都市はコモンズですか?」というトラックのモデレーターを担当させてもらったことがあります。さまざまな分野の研究者やアーティスト、ジャーナリスト、編集者、アクテヴィストたちが集まるとても知的興奮に満ちた場ですね。

なかのひとよ ヴィム・ヴェンダース監督の1980年代の映画に「ベルリン・天使の詩」という作品があるけど、あの中では人間たちの心の声が天使たちに聞こえているのよね。そのベルリンでサザエbotを紹介できて、なおかつ多くの人に関心を持ってもらえたというのは余計にうれしかった。

―― 「ベルリン・天使の詩」はまだインターネットが一般に普及する以前の時代の作品ですけど、まさに前回話した「匿名の心の声がインターネットによって可視化された」という話とおそろしいほど通じている部分があるますね。

なかのひとよ もう30年くらい前の映画なのに、いま観直すとびっくりするくらいインターネットと匿名性というものを象徴的に描き出している作品だと思うの。人生を悲観している人達を天使がそっと抱きしめると、ネガティブな心の声がポジティブなものに変わっていったりするところも興味深いわよね。

YouTube「ベルリン 天使の詩」予告編/ ヴィム・ヴェンダース監督による映画「ベルリン・天使の詩」(1987年)。天使ダミエルに扮するブルーノ・ガンツのほか、ダミエルが心を寄せるサーカスの女性役にはソルヴェーグ・ドマルタン、さらにピーター・フォークが本人役、ニック・ケイヴが本人役で出演している

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