すげー! 紙に書くだけデジタル化、最強ノート「CamiApp S」

文●盛田 諒

2015年12月25日 11時00分

 原理を知って驚いた。逆転の発想だ。コクヨはノートに書いた文字をデジタル化するのではなくノートそのものをデジタル化することにしたのである。

 コクヨ「CamiApp S(キャミアップ エス)」の話だ。

 実売価格は、A5メモパッド型が1万6000円前後、A5見開きノート型が2万円前後。それぞれiOS版、Android版がある。これはノートではなく、いわばA5用紙つきタブレット。書いた文字をその場でデジタル化する、新世代の文房具だ。

撮影・スキャン不要のデジタルノートCamiApp S。左はメモパッドタイプ(幅186×高さ243×厚さ17mm、重量約460g)、右はノートタイプ(幅179×高さ258×厚さ38mm、重量約730g)。どちらのタイプもAndroid版、iOS版の用意がある。

まるでデジタルカーボン紙

 CamiApp Sは、初代「CamiApp」の進化版。

 初代CamiAppはごく普通のノートだった。スマホで専用アプリを開いて、ノートの写真を撮るとデータ化される。事前に設定しておけば、クラウドにスキャンデータが転送されて、パソコンやスマートフォンから見られるようになる。

 これはこれで便利なのだが、写真を撮るのは面倒だった。取材先で書いたメモは素早く使いたい。なので結局はメモ帳をPCの隣に置き、必要な部分をタイプするというアナログ作業が一番効率的なのよホホホーイと考えていたのだ。

 そんな心を見透かすかのように、コクヨは思いきってコンセプトを逆転させた解決策を考えてきた。それがCamiApp Sで採用した電磁誘導方式のデジタイザーだ。

CamiApp Sのメモパッド型は、こんな断面になっている。上から紙製のメモパッド、デジタイザーの緑色の部分は、ペンの動きを感知するセンサーだ

ペン先の軸にはコイルが埋め込まれ、デジタイザーに反応する。つまり、リフィルの径が合えば他社製も利用できるという……

 デジタイザーは、専用のペンで入力するタブレット状デバイス。中面にセンサーがあり、ペン先に内蔵したコイルが近づくと、筆跡情報として記録していく。コクヨはこのデジタイザーの上に紙のノートを置いたのだ。

 専用ペンはノック式で、リフィルは普通のボールペンとなっている。軸が若干太いのはまあ慣れだろう。ボール径は0.7mm。リフィルは交換可能、みんな大好き三菱のジェットストリームなんかも使える仕様だ。

(どうせなら赤青ペン、シャーボ、フリクションペン、万年筆みたいにバリエーションが欲しいところだけど、そこは今後に期待という感じで)

 CamiApp SをスマートフォンとBluetoothペアリングさせ、この専用ペンでメモをとれば、自動的に筆跡情報が転送される。かくして、晴れてスキャナーいらず、カメラいらずのデジタルノートが完成するわけである。

 紙に書くとデジタルに転写される、まるで「デジタルカーボン紙」のようなCamiApp S(カーボンは感圧式だから厳密にはちょっと違うんだけど)。能書きはこの辺にしておいて、実際に使ってみるとどうかという話。

 iOS版のA5メモパッド型「NST-CAS-P5」を試してみよう。


(次ページ「落書きもきれいに転送」へ続く)

データが保存されると、右上のLEDが点灯し、完了/失敗を知らせてくれる

落書きもきれいに転送

 CamiAppアプリを起動し、CamiApp SとiPhoneをBluetoothでペアリング。

 設定はアプリがやってくれるので、難しいことを考えなくていいのが好印象。次はノートパッドを本体に粘着パッドで固定して、本体機能の初期設定。ボタンが電源とBluetoothの2つだけと少ないので、機械に弱い人も扱いやすいはず。

 テスト用のメモをとり、ペンを認識していることを確認したら、いよいよ記者会見をイメージしてメモをとってみる。重さはメモパッドを入れて約460グラム、ギリギリ片手で持てる重さだが、まあ普通に机上で使った方がよい感じであった。

 メモをとっているときは、当たり前ながら普通のノートとボールペンだ。

 メモがとれたら、メモパッド右下最後のSAVEボックスにチェックをつける。アプリを起動してデータ取り込みボタンを押し、しばらく待つと、筆跡データが取り込まれてきた。なぜかやけに感動してしまう。ウッ、わたしは何もしていないのに……君は……。

わたしの汚い字がデータ化していてまたウルッときてしまう

 感動はさておきデータを確認。筆跡データなのでボールペンの感じではなく、タブレットに書いた線のような文字になってはいるが、変な落書きもしっかりデータ化してくれていた。

 文字認識も働いてくれる。わたしの文字が汚かったためか「CamiApp」が「CaniAPP」になったりしていたのは泣けたが、文字起こしの精度は最大85%程度。完璧な文字起こしとはいかないもの、あとからメモを検索するときには便利だ。

 電源はリチウムイオンバッテリー、公称値は1日2.5時間使用で約5日間。実感としては1週間に2回ほど充電するくらいの感覚で使えた。USB給電で、残念ながらUSBからデータを転送することはできない。まあ無線で飛ばすほうが楽なのでそれでよいのだが。

 ちなみにメモパッドは、理論的にはたとえばRHODIAのような他社製品に交換できる。だが、実際のところはチェックマークの位置が分からないためそのまま使うのは難しそうだ……。

 さて、筆跡データはデジタル化できた。これをどうやって扱うか。


(次ページ「Googleカレンダーを手帳代わりに」へ続く)

右下の「SAVE」をチェックすると、Bluetooth経由でスマホに保存される。SAVEの隣の「ACTION」に任意の番号を書き込むことで、自動でタグをつけたりクラウドサービスにアップロードしたりできる。万が一、SAVEにチェックを入れずに次のページに書き進むと、文字が重なってしまうので気をつけよう

Googleカレンダーを手帳代わりに

 まずはデータ化したノートをアプリからパソコンに移したい。PDFもしくはPNG画像形式で送れるのだが、この送り方がなかなか便利でよかった。

 データを1つずつ指定してGmailなんかで送ることもできるが、ノートの右下にある「アクションマーカー」というのが便利だ。指定部分に数字を書いてSAVEにチェックを入れるだけで、自動でタグを設定したり、クラウドに保存したりできる。

 転送先は、Evernote、SugarSync、Google、OneDriveのような人気サービスをはじめとして、Yahoo!ボックス、SmartBiz+、フレッツ・あずけ~る、ShareFileと、なかなかラインナップが幅広い。

 とりわけ便利なのが、Googleカレンダーと同期する使い方。

 別売りの「打合せ記録タイプ」のメモパッドやノートを使えば、日時・参加者を書き入れてデータ化するとGoogleカレンダーにデータを同期できる。その日に書いた内容を「Googleカレンダーで確認する」という、まさにデジタル手帳のように使えるのだ。

 地味に面白いと感じるのは、線画化した文字の太さを五段階で変えられる機能。髪の毛のように細くすることもできれば、資料などで図形として使うため太い線にも変えられる。このあたりはデジタルならではの強みという感じだ。

 数日間使ってみて感じたのは、デジタルの良さがありつつ、やっぱり紙のノートならではのアナログな利点を生かせるところがいちばんの強みだな、ということ。

 普通にメモをとるだけならスマホでいいのだ。実際、取材のときはメモアプリを使っている。しかし、たとえば営業さんが大口の取引先に話を聞いているときのように、いくら仕事だと言い訳をしても、スマホをペタペタやっているのは微妙な場面もある。

 紙の良さは見た目だけではない。スマホの充電がなくなっても使えるし、起動にかかる時間もない。どれだけ汚くめちゃくちゃ書いても許されるし、なによりペンで紙に書くときの気持ち良さは、デジタルにはかえがたいものがある。

 今後の開発についてコクヨさんにお願いできるとすれば、デバイス・ソフト両側の認識精度を上げるかたわら、さらにアナログ感覚を活かしてほしいということだ。たとえば、もうすこしベゼルを狭くしてくれたり、冒頭に書いたようにペンやノートの種類を増やしてくれたら、さらに最強ノート感が高まりそうな気がする。

 ともあれ「逆転の発想」から生まれたデジタルノートは、とにかくデータ化の簡単さではピカイチだった。今まで紙のデジタル化はしたいと思っていてもスキャンの面倒くささで二の足を踏んでいた人にとってはいい選択肢になるだろう。




アスキーストア先行販売モデルとして、CamiApp Sメモパッドタイプに専用ケース「ブックマークホルダー」(写真右)をセットして販売。価格は2万7180円。ホルダーをCamiApp Sにセットすると、写真左のようになる

仕事が3倍速くなる? アスキーストア先行販売

 なおアスキーストアでは、黒×赤カラーのブックマークホルダーを先行販売中。専用ペンを入れて持ち歩ける便利グッズなのでこっちもよろしくね!

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(提供:コクヨ)


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