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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第97回

Apple TVとともに日本に帰省する

2015年12月18日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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サンフランシスコのApple TVの広告。街中がカラーバーだらけになっています。カラーバーといえば、一般のテレビ視聴者からすれば、放送休止や試験放送、不具合というイメージが強いので、「街中が調整中」に見えてきます

 今年のクリスマスから正月は、家族で東京で過ごすことにしました。実に4年ぶりとなる日本の年末年始。特に何をするという予定があるわけではないのですが、食方面も含めて割と好きな日本の冬を楽しもうと思います。あと温泉とか。

 今年のサンフランシスコは、きちんと雨が降る冬が訪れています。北太平洋で発達する低気圧の前線が頻繁にスイングするように通過すると、大雨や突風、雷が発生し、夜の時間に通るとちょっとした大騒ぎの様相を呈します。そして前線が通るたびにぐっと冷え込んできます。

 こうした雨が無かったから、カリフォルニアは渇水だったんだ、と感じるほどにまとまって降るので、少しでも山々に降水があれば改善に向かうのではないか、という期待も高まります。

年末商戦のAppleの目玉はApple TV?

 サンフランシスコの高速道路をドライブしていたり、都市間高速鉄道のBARTに乗っていると、ホリデーシーズンにAppleが何を売り込みたいかが見えてきます。というのも、かなりの数の広告を買い込んでいるAppleは、自社の複数の製品ではなく、1つに集中してプロモーションをするからです。

 そして2015年のホリデーシーズンにAppleが売り込みたいのは、Apple TVでした。

 テレビの試験放送などでおなじみのカラーバーを背景に、りんごマークと「TV」の文字だけの広告が展開されており、なぜかテレビのカラーバーはどことなくノスタルジックな印象を受けます。下の動画が、そのコマーシャルです。

 ところが皮肉なことに、Apple TVを使い始めると、米国でコマーシャルが流れる通常のテレビ放送は、アプリ化されていないローカルニュース以外見ることがなくなります。そのため、このコマーシャルを見たのは本記事に貼り付けるためにYouTubeで検索して見たのが初めてでした。

 なぜなら米国では地上波の主要チャンネルは、Apple TV用App Storeにアプリを提供しており、それを経由してライブ放送や過去のエピソードなどを見ることができるためです。

それでも切ることができないCATVの契約
CATVの契約でお金を払うことでネット経由の視聴が可能

 この話は以前も紹介したかと思いますが(関連記事)、ネット経由の映像視聴が主体になっても、アメリカではまだCATVの契約を切ることができないでいます。その理由は、CATVに契約しないことには、CATVの各種チャンネルのネット経由での視聴ができないからです。

 たとえばPBSやCNNといった、CATVでは一番安い契約でも視聴できる基本チャンネルは、Apple TVにアプリを提供しています。しかし、アプリの有効化にはCATVの視聴契約のアカウントが必要な仕組みで、それ以外にお金を払う方法が用意されていません。

 そのため、CATVに契約をしていながら、視聴用のセットトップボックスはテレビに接続していません。ケーブルが増えてゴチャゴチャするだけなので。しかし契約は継続していなければ、ログインしてストリーミングが見られないということです。

 おそらくAppleはCATVのチャンネルの視聴を、CATVの契約から切り離そうとしているのでしょう。しかし、最近の報道では、テレビのライブ配信については「棚上げした」という声が聞こえてきました。

 まあインターネット接続もCATVの契約と紐付いていて、テレビ視聴とセットの方が安いとのことなので、テレビ契約も続けています。ただHDすら映らない最低料金の契約にとどめています。

帰省の荷物に初めてSTBを加えた

 さて、今回の帰国の際、普段とは違うものをトランクに入れました。Apple TVです。

 スマートフォンやパソコンを持っていくのは当たり前ですが、Apple TVを帰省の荷物に含めたのは初めての経験でした。

 実家や滞在先のホテルなどにApple TVが設置してあれば、持っていく必要がありません。ただ、新しいApple TVは、アプリでカスタマイズできるため、事情が違ってきています。いつも見ているアプリ、遊んでいるアプリがセットアップされているApple TVと、実家やホテルにあるApple TVは、まったくの別物になっているからです。

 Appleはテレビの未来はアプリだ、としてApple TVにアプリ機能を加えました。そして、Apple TVを持ち運んで旅をするようになりました。モバイル時代、基本的に何でも持ち運ぶのが未来だとすれば、「テレビの未来化」は「テレビのモバイル化」と読み替えても差し支えないでしょう。

 テレビに接続するデバイスを持ち運ぶことで、普段観ているテレビが再現される、という仕組みには目からウロコです。さすがにテレビ本体を持ち運んで旅をするわけにはいかないので。その一方で、コンパクトとはいえ、旅の持ち物が増えてしまうことはスマートとは言えません。

 ここに、テレビの未来に対する過渡期感を感じました。Apple TVがHDMIに直接刺さるタイプのデバイスになればもう少し楽でしょうか。Googleが出しているChromecastは、電源以外は持ち運べるスタイル、といえますが。


(次ページでは、「垣根を越えているiTunesと、垣根が存在するNetflix」)

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