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2000億円規模の企業を育てるSupernova第1期

Google超える住宅ローン比較サイトも 狙いは既存産業の革新

2015年12月07日 06時00分更新

文● 北島幹雄/大江戸スタートアップ

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 12月3日、既存の産業構造を革新するスタートアップを継続輩出するための共創型シードアクセラレータプログラム「Supernova」(スーパーノヴァ)の第1期の参加起業家が発表された。

 Supernovaは、これまで大規模なイノベーションが起こりにくかった既存産業での新事業創出挑戦を支援する起業家支援プログラム。複数の企業が共同運営を行って起業家を育成する共創型アクセラレータである点が特徴だ。

 「10年間で2000億円規模の企業を育てる」ことをミッションに発表された既存領域に切り込む第1期アクセラレータ選抜者をピッチ内容とともに紹介する。

最安・最適な住宅ローンが瞬時に見つかるWhatzMoney

 WhatzMoney(ワッツマネー)は、金融とITを融合させたFinTechサービスを手がけるスタートアップ。

 ユーザーに最安・最適な住宅ローンを、無料で比較・検索できるインターネットサービス「WhatzMoney住宅ローン」を11月16日にリリースしたばかりだ。

  WhatzMoney住宅ローンは、主要金融機関の新規・借り換えのほぼ全ての住宅ローンプランを網羅した比較・検討サービス。日本全国の大手銀行、地銀、ネット銀行、信金、JAバンク、ろうきんを含む753の主要金融機関の16600超の住宅ローンから、国内ほぼ全ての金融商品情報を整理し、最安・最適なものを提供する。

 住宅ローンにフォーカスした新規の借り入れ・借り換え需要を狙ったサービスはほかにも存在しているが、プラン数には10倍の開きがあるという。全国的な網羅をしたことで、これまで見えていなかった実は身近にあった地銀や信金での適したプランが排除されずに確認できる。

 ビジネスプランは送客手数料モデル。申し込み既存の不動産ポータルや金融機関と話を進めているという。

 登壇したWhatzMoneyの前田一人代表取締役は、「検索レスポンスも0.1秒と圧倒的なスピードを誇っている。11月24日にGoogleも住宅ローンの比較ツールを公開したが、現段階ではまだまだ遅い」と自信を見せた。

画像一枚に全部埋め込み 新形態コンテンツを創造するPulit

 Pulit(プリット)は、ウェブ上などで広く共有される「画像」にスポットを当てた新しいサービス。

 ウェブやアプリ上のpulitで作成した画像に、写真や動画、音楽、コメント、電子書籍、などさまざまなコンテンツを簡単にひもづけができる。展開する内容は、pulitのアプリまたはウェブサービスでの閲覧のみだが、ライブラリ提供で一気に可能性が広がる。

 たとえばGoogleの画像検索でpulitに対応した画像が出てきた場合、ブラウザによっては、画像から直接各種コンテンツの利用ができるようになる。

 pulitを手がけたKunwoo Lee氏は、コンテンツタイプの新形態だと主張。「インターネット上の既存サービスにとらわれないプラットホーム外の技術にしたい。革新的なマーケティングツールにもなりうる」と意気込んだ。

 現在のサービスはiOSのみのベータ版。本格的な展開は来年からとのことだ。

日本酒を世界的な文化にして消えゆく酒蔵を救いたい WAKAZE

 「プロジェクトチームの一員は、実際に日本酒を作りたいとして、秋田で最も流行っている酒蔵で職人として修行中。2年後ぐらいに合流しようかと話をしている」と語ったのはWAKAZE(ワカゼ)の稲川琢磨代表。

 クラウドファンディングでの新しい日本酒の飲み方のアプローチや、海外への輸出事業、さらにはビジネスパーティに向けた日本酒コンシェルジュなどを現在の事業で行っているWAKAZE。だが同社の最終目標は、”日本酒の海外現地生産”。ワインのような”世界酒化”が目標だ。

 現在、日本酒の出荷量は年々減り続けており、この20年で全国の酒蔵も1000に半減するなど、国内需要の影響を受け続けている。たとえ今後海外での需要が伸びるとしても、後継者不足は避けられない状態になっているのだという。

 だが、日本酒の海外展開には問題が多い。繊細な商品のため輸出コストが高く、海外では日本の3倍近い値段になってしまう。またたとえ品質が優れていても、商品力の面でローカライズされていないため、海外ではまだまだ受け入れられていない。メディア活用や販路開拓の面でも遅れをとっているという。

 そこで将来的にはフランスを起点に日本酒ブランドを作り、欧州・アジアでの展開を狙う。職人・酒作りのノウハウ、設備や土地、販売先の確保、資金、収益源などが必要となるため、現地生産での成功率を高めるためにも、踏みきるまで2~3年のスパンを考えているという。

 「消えゆく酒蔵をどうにかしたい。海外にきちんとパイをつくって、酒蔵のモノを輸出できるようにしたい。海外の食文化をよくして酒蔵を救いたい」(稲川代表)

投資信託業務に特化したコミュニケーションロボットrobofund

 robofundは、投資信託業務に特化した業務支援サービス。

 既存事業の変革という点でいうと、株式の取引額はすでにネットを介したものが80%となっているが、投資信託のネットのシェアは3~4%の間と非常にニッチなまま。大和証券や野村證券などの店頭窓口での申し込みがほとんどだという。

 「投資信託の主な説明先は高齢者。ネットに頻繁にアクセスしているわけではないため、どうやって店頭に行かずに資産の増減を知るのかというと、みなさん電話をしている。そのため、コールセンターは常に混雑している」とrobofundの野口哲代表は語る。

 一般紙には200銘柄しか掲載されていないが、じつは日本には5000もの投資信託の銘柄がある。ただ、それぞれの表記は複雑で、似ているものも多い。販売側でも、営業やサポートセンターが全データを常に把握し続けることは不可能なレベルだという。投資信託関連の企業に在籍していた野口代表は、顧客への説明をするなかでこの問題を解決するものをつくりたいと決心してrobofundを作り上げた。

 たとえばrobofundでは、登録しておいた電話番号にかければ、商品の最新データを自動的に更新し、あらかじめ登録しておいた聞きたい銘柄についてのデータを人工音声が教えてくれる。

 投資信託でのコストの半分はコールセンターなどの人件費。これまでコールセンターでかかっていた固定費を、電話がかかってきたぶんだけの変動費にコストダウンできる。

 このような人工音声による案内以外にも、公募株式投信の資金流出入推計やデータ自動収集といった範囲で業務の自動化を実現させるのが目的だという。

町の花屋をつなぐマッチングサービスBloome

 Crunch Styleの武井亮太代表が解決をもくろむのは、3~4割にも上る生花の廃棄率。

 1兆円の市場規模をもつ生花業界だが、そのほとんどは個人店、いわゆる町の花屋さんが中心だ。商品の性質上、ECも普及してはいない。そこでユーザーのニーズと店舗をつなぐマッチングサービスとして、2015年1月にBloome(ブルーミー)という花屋のプラットホームをローンチした。

 実際に花屋を利用する場合、リアルな生活導線上にある店舗での相談がほとんど。しかし店頭での受注となるためロスも多く、ユーザーも開店時間内に取りに行かなければならないなど手間が大きい。一方でウェブでの固定的なECのみでは、相談需要や在庫面で対応が難しくなる。

 そのため、Bloomeeでは欲しい花や予算感などを気軽にチャットで相談できるマッチングサービスを中心に展開。また一方でBloomeeに登録している花屋が常時お店でアレンジメントした商品をアップしている。相談の必要もなく、できあがった商品から花を選びすぐに贈れる。相手の住所を知らなくてもFacebook、Twitter、LINEなどでつながっていれば花をメッセージ付きで送れる連携機能もあるという。

 生花をネット上で気軽に購入できるようにして、ネットにつながっていなかった既存の花屋さんも含めたプラットホームの構築が狙いだ。すでに本格ローンチから5カ月で55店舗が加盟。今後は店頭で集客支援やSEOにも力を入れるという。

学校の生の声を届ける教育キュレーションメディア・教育図鑑

 最後に紹介するのは、教育領域での参加となる教育図鑑。同社の考える課題は、ウェブ上での”学校”に関する情報の非対称性だ。

 SEOなどに力を入れている大手塾関連の情報はウェブ上に多いが、当然宣伝も多いため、必要な情報を探すにはノイズが多い。また一方で学生が本当に求めている学校側の情報は、コストをかけられない学校によっては旧来のチラシくらいしかない。

 教育を受けたい人と教育機関などをつなげるマッチングサービスを行うキュレーションサイトとして、現在中学校図鑑塾図鑑を展開している。

 教育機関の側にはCMSを提供し、塾や学校担当者が進んでコンテンツを掲載できるようにしている。生の情報や分析での価値ある投稿から、集客につなげるのだという。

 ニュースキュレーションでは各学校、塾の更新差分も集めてくるため、受験生からの潜在的な需要に対応。さらに、Q&Aコミュニティの「教えてGoo」と連携して、さらに認知率を高める。

 主なビジネスモデルは、資料請求による成功報酬。一方で塾などの情報掲載を行い、定額課金+成功報酬もあるという。

 教育図鑑の矢野一輝代表は、「教育のキュレーションメディアとして、アクセスを広げたい。まずは首都圏の中学校に注力して、徐々に拡大する予定」と語った。

「10年を超える取り組みにする」

 会場ではこのほか、スクール選抜に選ばれた企業もプレゼン。すでにサービスを開始しているものでは、知的発達・言葉の遅れを伴わない高機能自閉症を持つ人を対象プログラミング教育などで雇用を増やす試みを行うGIFTED AGENT、ファッションのパーソナルな悩みに相談して答えるパーソナルなオンラインスタイリングサービスLet Me Know、アジアをつなぐ映像クリエイティブインフラを目指すLablatikなどがある。

 Supernova共同運営者であるスローガン伊藤豊代表は、「産業革新するという大きなミッションをかかげている以上、長い取り組みになる。ここから10年で産業規模といえる事業価値をもたらす企業をいくつか生み出したい。ぜひみなさんと一緒に挑戦していきたい」と意気込みを語った。

 アクセラレータープログラムの第2回募集は2015年12月中旬以降を予定しているが、すでに事前の問い合わせもあるという。第1回のラインナップは、投資信託から日本酒など幅広かったが、今回取り上げていないものも含めて、かなり多様な広がりとなりそうだ。既存産業を塗り替える、大きな刺激となることに期待したい。

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