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Windows 10 Mobileを知る 第3回

出遅れた感があるけど、実際のところどうなの?

Windows 10 Mobileスマホの発表ラッシュに見る、期待と課題

2015年12月03日 09時00分更新

文● 山口健太 編集●ナカムラ/ASCII.jp

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 2015年も残すところあと1ヵ月という11月末になって、Windows 10 Mobile端末の発売ラッシュが起きている。現在オープンになっている情報を、改めて整理してみよう。

 11月24日にはFREETELがKATANA 01を発表、11月30日に発売することで「Lumia 950に次いで、世界で2番目」の投入を狙った。だがその翌日、意外な伏兵としてヤマダ電機が「Every Phone」を発表、11月28日に発売することでFREETELの先手を取る形になった。

国内ほぼ最速で発売に漕ぎ着けた「KATANA 01」

一般ユーザーに最速でWindows 10 Mobileを届けたのは、MADOSMAかもしれない。

 だが国内最速で提供を開始したのは、マウスコンピューターというべきかもしれない。11月27日にはMADOSMAのWindows 10 Mobile対応を発表し、秋葉原の直営店で有償によるアップグレードサービスを開始したためだ。2015年末~2016年始めには、ジェネシスホールディングスも端末の投入を予定している。

SIMフリーの拡大やビジネス需要が追い風に

 なぜこの時期に、各社はWindows 10 Mobile端末を相次いで発売したのか。2012年に登場したWindows Phone 8では端末開発を表明していた日本のメーカーが外されてしまった。次に2014年のWindows Phone 8.1では新興市場への展開に注力しており、日本向けサービスの対応を充実させるなどという空気ではなかった。しかしWindows 10 MobileではPCとOSを共通化したことも相まって、日本向けに地図や音声認識が搭載されるという大きな進展があった。

 国内のスマートフォン市場でも追い風が吹いている。これまでキャリアスマホが中心で、低価格プリペイド機の需要も低い日本国内では、SIMフリー市場が事実上存在していなかった。しかしMVNOや格安SIMカードが登場したことで、まだまだスマホ市場全体の5~10%未満とみられるものの、SIMフリーは拡大傾向にある。とはいえAndroid端末は価格競争が激しくなっており、差異化を求める端末メーカーはWindows 10 Mobileの動向を注視してきた。

 特に目立っているのが、PCメーカーの参入だ。10月14日に日本マイクロソフトが開催した「Windows 10 Partner Device Media Briefing」に登場した6社の中でも、マウスコンピューター、サードウェーブ、VAIO、AcerはPC業界で定評のあるブランドだ。Windows 10 MobileではPCとの垣根が取り払われることで、組み合わせによるシナジーを期待できる。

PCが中心だったブランドが参入を表明したのも、Windows 10 Mobileの特徴だ

 多くの端末メーカーが熱い視線を送るのが、ビジネス需要だ。Androidのセキュリティに不安を覚える企業ユーザーは少なくなく、ビジネス市場でもiPhoneがシェアを伸ばしている。筆者の知り合いでも、会社用と個人用のiPhoneを2台持ちする人が日に日に増えている印象だ。だが、iPhoneは高価すぎるという難点もある。企業ユーザーからは、フィーチャーフォンからの置き換えや、Officeや社内業務アプリへのアクセスに特化したセキュアなスマホを求める声が多かった。

 こうした国内のスマホを取り巻く状況は、端末メーカー各社も注視してきた。調査会社が提供するデータを見て、ユーザーの声を聞いていれば、そこから導かれる答えが各社ともに似通ったものになっても不思議はない。とはいえ、これまで日本ではWindows Phone端末の発売がほとんどなかっただけに、これほどまでにバリエーション豊かなWindows 10 Mobile機が世界最速レベルで充実したことは、大きなサプライズといえる。

アクセサリーメーカーの知見が詰まった「NuAns NEO」

 Android同様、Windows 10 Mobile端末においてもローエンドからミドルレンジの機種については、中国のODM企業が製造するリファレンスモデルをベースに、カラーリングなどをカスタマイズしたものが中心になるとみられていた。

 こうした状況に待ったをかけたのが、トリニティの「NuAns NEO」だ。同社代表取締の星川哲視氏は10月14日の日本マイクロソフトのイベントで実機を初披露した。だがプロセッサーなどの詳細はオフレコでも語らず、同社代表取締役の星川哲視氏は「発表会を待ってほしい」の一点張りだった。

発表会までスペックを内緒にした「NuAns NEO」。最新プロセッサーやContinuum、本体デザインなど見どころは多い

 そして11月30日の発表会では、NuAns NEOがQualcommの最新チップ「MSM8952」(Snapdragon 617)を採用し、「Continuum for Phones」に対応することを発表。国内外から大きな注目を浴びた。現時点でマイクロソフトが公開するContinuum対応の仕様ではないものの、これはNuAns NEOが一号機のため。MSM8952で快適にContinuumが動作することが分かれば、正式なサポート対象となるだろう。

 NuAns NEOはデザイン面でも面白い。本体は最近のスマホとしては分厚いが、持ちやすさやバッテリー容量を重視した。背面カバーを完全に別売りとする異例の売り方で、モジュール性を強調する。USB Type-Cケーブルは、反対側のタイプAコネクターもリバーシブルのものを採用するなど、アクセサリーメーカーとしてのトリニティが温めてきた構想を満載したという印象だ。

 すでに11月30日から同社のウェブサイトなどで予約が始まっており、筆者も黄色の「クラリーノ」と天然木の「テナージュ」の組み合わせで注文してしまった。

端末の次はアプリの充実を

 端末の発売が相次いだこともあって、Windows 10 Mobileの話題は各端末がどのように違うのか、という点に集中している感がある。だが、今後の普及を見据える上ではアプリが重要になるだろう。

 企業ユーザーからはOfficeや業務アプリを使うためのウェブブラウザーを求める声が多く、アプリは必要に応じて内製するといったレベルにとどまっている。だが、NuAns NEOのようにコンシューマーにとっても魅力的な端末が増えてくれば、アプリやゲームの充実が求められるだろう。

 これまでWindows Phone用のゲームといえばXboxのタイトルが中心だったが、Windows 10 Mobileでは「Candy Crush Soda Saga」や「クロッシーロード」のように、他OSでも人気の高いゲームが登場している。2011年の「IS12T」向けにアプリを作っていた国内の開発者を呼び戻せるか、日本マイクロソフトの施策にも期待したい。

山口健太

 マイクロソフトとスマートデバイスの話題を追いかけて、世界中を旅する若手ITジャーナリスト。著書に「スマホでアップルに負けたマイクロソフトの業績が絶好調な件」(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)。

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