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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 第8回

『角川インターネット講座』シリーズ総監修者インタビュー

「壁をどんどん壊していってもらいたい」インターネットの父と呼ばれて~村井純氏

2015年11月28日 18時00分更新

文● 石井英男 写真●曽根田元 編集●村山剛史/ASCII.jp

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日本のスーパースターが勢揃い

―― 総監修者として、完結までにはざまざまなご苦労があったと思いますが、振り返ってみていかがですか?

村井 インターネットは、今や人類や社会全体に大きなインパクトを与えているわけですから、そのインパクトをどの視点で見ていただくか、そこにどんな超人がいるかっていうことを考えるところが、一番大事だったと思います。

 そのことは、編集の方ともたくさん議論して、「この視点では、この人には誰もかなわない」という人を長い間議論して見つけ出していきました。おかげさまで、日本のスーパースターを揃えることができたと思っています。

―― 村井先生からのご依頼だったら、みなさんお忙しくてもお断りできないというか。

村井 いや、そういう圧力をかけるつもりはなかったんですが(笑)。

 みなさん自分の分野においてインターネットがどういうインパクトを与えたのかを語ってくださると思いました。たとえば、政治学者が政治にどういうインパクトが与えられたかを自分の言葉で執筆していただいたり、監修していただくのは楽しんでいただいたと思います。

インターネット全体は氷山のようなもの

―― 第1巻「インターネットの基礎」は、執筆もほとんど村井先生が担当されていますけれども、まず、1冊読むならこの第1巻がお勧めでしょうか。

村井 私がよく講演で、氷山のスライドを使います。氷山は海の下に大きな氷があって、その浮力で浮いていますよね。

 インターネットも、社会に対してのインパクトは水面から出ている部分ですが、水面下にたくさんの技術があって、それが日々発展して動いています。ですから水面下の部分、すなわちインターネットの構造や原理を理解してから、全体の氷山の動きを見ていくことがとても大事だと思います。

―― 第1巻で書かれていたインターネット創世記の話は、当時実際に取り組んでこられた村井先生ならではの臨場感にあふれ、とても興味深く読ませていただきました。読んで欲しい層は?

村井 私が担当したところは、要するに原理とか技術、それから歴史です。テクノロジーはやはり基盤ですから、そういったことをわかった上で、インターネットを見るようにしてほしい。

 私はよく“すのこ”って言いますが、土台ができて、その上に人間が乗ると今度はその次のことにつながっていく。これまで手が届かなかったものに、手が届くようになる。基盤が少し高くなれば、その次のことに挑戦していけるようになると。

 そういう意味で、インターネットというものができたとすると、今度はこのグローバルなコミュニケーションとデジタルテクノロジーをもって、何に挑戦しようかということを、次の世代の人は考えていくべきだと思いますね。

 そのためには、(我々先人が)今まで苦労してきたこととか、どうやって出来たかといったことを記しておこうと。

 それを見て、次の世代の人が先に進んでくれる。つまり、我々が実現できなかった夢を実現してくれる。こういう想いを伝えたいと思います。それはまあ、若者かシニアか、どんな層かはあんまり関係ないですね。

 ヴィント*もだいたい似たようなことをいつも言います。彼自身も相変わらずかっとんだ夢を持ってますけれども、そのことを次の世代が正しく認識をしておけば、あとは任せておいていいだろうって。

*ヴィントン・グレイ・サーフ……TCP/IP開発者/米グーグル副社長。

 私も次の人たちに分かりやすい話を伝えておくっていうのがやっぱり大事だと思いますし、『角川インターネット講座』全15巻のなかには、そういった主旨が読み取れるものがたくさんあると思います。

これから研究を始めるとしたら2つのことに挑戦したい

―― 今はインターネットが普及して、こどもまでその恩恵を受けているわけですけれども、もし、先生が今の時代にこれから研究を始める、新しいテーマを見つけるとしたら何をやりますか?

村井 2つのことを挑戦すると思います。1つは“本当に人間に貢献できるデジタルテクノロジーとは何か?”を追求すること。でも、私が今までやってきたことは、世界中のコンピューターがつながり、分散処理が自然環境と同じようになったとき、それは人間にどう貢献できるかってことですから。

 もう1つは、ビッグデータの扱いですね。今は、データをすべて捨てていますが、捨てずにとっておけるようになったら、これは大変なことになります。そのデータを使ってディープラーニングのような、新しい人工知能みたいなもので役立てていくというのは、いくらでも可能性があると思いますが、そのためのインフラも社会制度もまだ全然できていません。

 やれば叩かれますが、叩かれるなかで、それでも進めるというのは、歴史を作るプロセスだと思います。30年後に振り返れば、『これを使うと大変だっていって大騒ぎして、データを全部捨てていた時代もあったね』と。それでもインフラや社会制度が整備されたから、こういう社会ができたんだねって、30年後は必ず言ってますから。

(次ページでは、「飛行機は人間の能力を超えているが、人間を支配してはいない」)

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