1万円台からのスティックPC、使ってわかった便利な点&苦労する点

文●二瓶 朗

2015年11月16日 12時00分

 「若者のPC離れ」なんてことも言われる今日この頃。確かに、スマホやタブレットが手元にあれば、わざわざPCを買わなくても……などという向きもあるのかもしれない。

 しかし、PCにはPCの使い勝手のよさがあり、やはり1台ぐらいは手元に置いておきたいものだ。最近では「でもお高いんでしょう?」ということもなく、3万円台で十分実用となるPCを入手できる。

 しかも、ノートPCはもちろん、スティック型PCや小型デスクトップPCと、コンパクトなサイズで生活の邪魔にならず、スマホやタブレットなどと共存できる製品も多数登場している。本特集ではそんな3万円前後で買える低価格PCの魅力を解説していく。

 第一回目となる今回は、スティックPCについて紹介しよう。

似ているけれど個性もあり!
満足できるスティックPCを選ぶ

 USBメモリーをちょっぴり拡大したぐらいのサイズの筐体に、HDMI出力端子が直付けされた、いわゆる「スティック型PC」。

 テレビやディスプレーのHDMI入力端子に直接差し込めばそのままPCとして利用できる。何しろ小型・コンパクトなので、持ち歩いても苦にならない。普段は自分のデスクの液晶ディスプレーに差して使っていて、持ち出して出先にあるディスプレーにスティック型PCを差し込めば、自分の普段使いの環境をそのまま持ち出して、マイPCとして使うことができる。

 もっとシンプルに、居間の大型テレビでPCを使いたいというときやYouTubeなどのネット動画を観たいなんてときだけに起動するお手軽リビングPCとして活用することもできる。

 そんなスティック型PCだが、キーボードやマウスといった入力装置は付属しない。当然ながら光学ドライブも物理的に搭載不可能。そういった共通点と、スティック状の外観からほとんど製品差はないように見える。

 実際のところ、スペック的には現状(2015年11月初旬)時点で購入できるスティック型PCの基本スペックはほぼ共通で、以下のような感じだ。

  • CPU:Atom Z3735F(1.33GHz、クアッドコア、Intel HD Graphics内蔵)
  • メモリー:2GB
  • ストレージ:eMMC 32~64GB
  • インターフェース:USB 2.0、Bluetooth 4.0、IEEE 802.11b/g/n、microSDカードスロット
  • グラフィック:フルHD(1920×1080ドット)
  • OS:Windows 8.1 with Bing 32bitまたはWindows 10 Home 32bit

 これらの基本スペックを比較すれば、どの製品を選択しても「ほぼ同じ使い心地」と言っても過言ではない。ただし、価格は1~3万円とやや開きがある。

 2~3万円のややお高めの製品では、内蔵ストレージが一般的な32GBから64GBに倍増されていることがある。また、当然といえば当然だが、「Microsoft Office」がプリインストールされている製品もお高めクラスとなっている。

 搭載OSは徐々に「Windows 10 Home 32bit」へと移行しているようだ。同一ハードながらWindows 10搭載製品はWindows 8.1搭載製品より数千円高額となる。もちろん「Windows 8.1 with Bing」もWindows 10への無償アップグレード対象なので、購入後すぐにでもアップグレードが可能ではあるが、その一手間を省く意味合いのある価格差といえるだろう。

 また、現行のスティック型PCはすべてCPUに「Atom Z3735F」を採用する。このAtom Z3735F、基本的にはファンレスで動作するが、先行した一部製品が排熱不十分で動作が不安定になるという評判が広まった。

 そのせいか、現行製品では小型ファンを内蔵する製品が多くなっている。今後の製品もファン内蔵型が主流となるだろう。

 スティック型PCの使い勝手を左右する1つの要因に、搭載されているUSB 2.0の端子数がある。詳しくは後述の製品レビューで触れるが、USB 2.0ポートを1基搭載している製品では、初期設定でUSBハブがほぼ必須となる。

 手軽にセットアップを済ませてすぐ運用を開始したいというなら、搭載USBポートの数のチェックは欠かせない。

 いずれにしても、1万円台から高くても3万円台で購入できるスティック型PCはいまオススメの低価格PCであるのは間違いない。

(次ページへ続く、「いまどんな製品が売っているの?スティック型PCカタログ」)

いまどんな製品が売っているの?
スティック型PCカタログ

1万円ちょっとで購入できるファンレスモデル
サードウェーブデジノス「Diginnos Stick DG-STK1B」

 前ページでも少しご紹介した「Diginnos Stick DG-STK1B」は、ドスパラが直販で提供するスティック型PC。ファンレスモデルで、直販価格は1万778円。なんと1万円強だ。

 フルサイズのUSB 2.0ポートとmicroUSBポートの2つを搭載しているのが特徴。USBハブなしでマウスとキーボードを接続できる(microUSB→USB変換ケーブルも付属)。キーボードセットモデルなどもある。また水濡れや物損をサポートする月額680~1580円(税別)の「セーフティサービス」がセットになったモデルもある。

  • CPU:Atom Z3735F
  • メモリー:2GB
  • ストレージ:32GB
  • インターフェース:USB 2.0、microUSB、Bluetooth 4.0、IEEE 802.11b/g/n、microSDカードスロット
  • OS:Windows 10 Home 32bit

約1.5万円で買えるスティックPC
サードウェーブデジノス「Diginnos Stick DG-STK2F」

 同じくドスパラで直販されている「Diginnos Stick DG-STK2F」は冷却ファン内蔵のスティック型PC。直販価格は1万5984円。

 上述のDG-STK1Bと同じくUSBポートを2つ搭載。基本スペックを変更するようなBTOはもちろん不可能だが、本体「DG-STK2F」をベースとしてディスプレーやキーボードなどをセット購入することが可能。この製品については次ページで詳しく紹介する。

  • CPU:Atom Z3735F
  • メモリー:2GB
  • ストレージ:32GB
  • インターフェース:USB 2.0、microUSB、Bluetooth 4.0、IEEE 802.11b/g/n、microSDカードスロット
  • OS:Windows 10 Home 32bit

インテル純正のスティックPC
「Compute Stick」

 インテルの名を冠した、ある意味ある意味珍しいPCがこのスティックPC「Compute Stick(STCK1A32WFCL)」。実売価格は2万3000円前後。

 ファンレスモデルでUSBポートは1基搭載。ストラップホールが設けられており持ち運びに便利。OSはWindows 10だが、Windows 8.1を採用したモデルも販売されている(実売価格 2万3000円前後)。扱っている店舗を見ると、むしろWinodws 8.1モデルの方が多いようだ。

  • CPU:Atom Z3735F
  • メモリー:2GB
  • ストレージ:32GB
  • インターフェース:USB 2.0、Bluetooth 4.0、IEEE 802.11b/g/n、microSDカードスロット
  • OS:Windows 8.1 with Bing 32bitまたはWindows 10 Home 32bit

Windows 10/8.1を選べる
マウスコンピューター「m-Stick MS-NH1」

 マウスコンピューターの直販スティック型PC。ファンレスモデルとなる。ストレージが32GBのものと64GBのものがあり、前者はOSにWindows 10を、後者はWindows 8.1 Proを採用する。直販価格は32GBモデルが2万800円、64GBモデルが3万9800円だ。

 BTOではマウスは用意されていないものの、タッチパッド付キーボードが選べる。USBポートが1つしかないので、このキーボードをセット購入すると便利だろう。

  • CPU:Atom Z3735F
  • メモリー:2GB
  • ストレージ:32GB/64GB
  • インターフェース:USB 2.0、Bluetooth 4.0、IEEE 802.11b/g/n、microSDカードスロット
  • OS:Windows 8.1 with Bing 32bit/Windows 10 Home 32bit

ThinkPad好きにはいいかも
レノボ「IdeaCentre Stick 300」

 レノボらしいブラックの外観が特徴的なスティック型PC。直販価格は2万1384円とやや高めとなる。

 HDMI端子を覆うキャップが付属するため、持ち運び時も端子を保護できる。ファンレスタイプで、OSはWindows 8.1を採用。ストレージは32GBとなっている。

 なお、初回出荷モデルはにはマイクロソフトのタッチパッド付キーボードが付属する。記事執筆時(11月13日時点)で残り9台となっているので、購入を考えるなら急いだ方がいいだろう。

  • CPU:Atom Z3735F
  • メモリー:2GB
  • ストレージ:32GB
  • インターフェース:USB 2.0、Bluetooth 4.0、IEEE 802.11b/g/n、microSDカードスロット
  • OS:Windows 8.1 with Bing 32bit

(次ページへ続く、「初期セットアップは意外に面倒? スティック型PCを使ってみた!」)

初期セットアップは意外に面倒?
スティック型PCを使ってみた!

 前ページで紹介した中から、今回はサードウェーブデジノスの「Diginnos Stick DG-STK2F」(Windows 10 モデル K/05436-10a)を実際に使用してみた。Windows 10を搭載したファン付きのスティック型PCだ。

 持ってみると、すっぽり手に収まるサイズ感。筐体はプラスチックで、ファンなし製品のようなアルミボディーのひんやり感はない。

 サイズ的には持ち運びに支障はなさそうだが、HDMI端子がむき出しでカバーやキャップなどは付属しないので、カバンなどに入れてそのまま持ち歩くのには若干の不安があるかもしれない。

 DG-STK2Fを箱から取りだしたら、さっそくセットアップといこう。

 運用するときの入力デバイスはBluetoothキーボードと同マウスでワイヤレス状態が最適。しかし初期設定では、基本的に有線マウスとキーボードが必須となる。このスティック型PCの初期設定で1つのポイントとなるのが搭載されるUSBポートの数だ。

 DG-STK2Fは、入力用のUSB端子を2基搭載する。うち1基はmicroUSBポートだが、USB(メス)変換プラグが付属するので、普通のUSBポートと同様に使える。

 USBポートが2基搭載されていると何がいいのかといえば、この初期設定のときにUSBハブを用意しなくて済むことだ。これは運用するときにも同様のメリットとなる。USBハブなどを介さずに2台のUSB周辺機器を接続できることになるからだ。

 初期セットアップの手順は、キーボード・マウスの接続→電源USBの接続→ディスプレーのHDMI端子に挿入→電源スイッチオンとなる。これでWindows(このモデルの場合はWindows 10)が立ち上がる。

 ここで注意したいのは付属のACアダプターと給電用のUSBケーブルの組み合わせだ。スティック型PCは、テレビやディスプレーのHDMI端子に差し込む以上、設置場所が限られてしまう。

 もちろん、このDG-STK2Fも同じだ。キーボードやマウスは初期セットアップ後にワイヤレス化するとしても、DG-STK2Fの場合は電源供給に専用ACアダプターと給電用USBケーブルの組み合わせが必須とされている。

 付属する給電用USBケーブルが約60cmとあまり長くないため、電源供給のためのケーブルの取り回しを考慮する必要がある。

 ちなみに、USBケーブルを手持ちの長めのものと交換してみたが、ケーブルによっては起動できないことがあった。また、ACアダプターを使わずにPCやUSBハブのUSBポートから給電しようとしたときも起動不可となった。安定した動作のためには、付属のACアダプターと給電用のUSBケーブルの組み合わせが必須となるだろう。

 初期セッティングの完了後、無線LANの設定、Bluetoothキーボード/マウスのペアリングを完了し、これで一通り使えるようになった。

(次ページへ続く、「ゲームはキビシイ 使ってみてわかるスティック型PCのあれやこれ 」)

ゲームはキビシイ
使ってみてわかるスティック型PCのあれやこれ

 セットアップ後、いろいろとDG-STK2Fを触ってみた。

 まずその起動時間だが、電源オフ状態から電源スイッチをオンにし、Bluetoothキーボード、マウスが有効になるまでは約20秒(パスワード設定なしの状態)。HDMI端子に差して「すぐ」使えるというのは事実のようだ。

 なお、[スタート]メニューの「電源」には「シャットダウン」「再起動」のみが表示されている。「スリープ」させることはできないようだが、起動が速いので使わないときはサックリとシャットダウンしてしまえばいいだろう。

 次に「Amazonプライムビデオ」でフルHDのストリーミング動画を視聴してみた。フル画面にして某海外ドラマ作品などを視聴したのだが、約60分のストリーミング再生中、ほぼ常時HD画質で再生できた。

 バックグラウンドでおそらくWindows更新ファイルのダウンロードか何かの作業が行なわれているときに若干レートが落ちる現象もあったが、気になってドラマの内容に集中できなくなるようなほどではなかった。

 リビングでネットのストリーミング動画を見るようなときも、サッと差してすぐさま再生を開始するような操作も問題なさそうだ。

 ゲームに関してはやや荷が重そうだ。「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」では「動作困難」と表示された。

 低スペックPCにも優しいとされる「ドラゴンクエストXベンチマーク」でも「重い」という結果に。ゲームに関しては、どこでも快適プレイということはなかなか難しそうだ。もちろん、Microsoftストアで提供されているような落ちモノゲームなどの動作に支障はないが、果たしてスティックPC+大画面の環境でプレイする必要があるだろうか?

 そして、ある程度操作している内に、内蔵冷却ファンが回りはじめた。CPUの負荷に応じ、2段階程度の回転数でファンが回るようだ。

 小型ファンのためかやや高音のノイズ的な音はするものの、うるさいというほどではない。スマホの簡易騒音測定機で計測してみても、およそ30db程度だ。

 なお、ファン部分に手をかざしてみても、「熱い」と感じるほどの排気ではない。ただ、本体を握ってみるとそれなりの高温となっているのがわかる。ファンレスモデルに比べると音は気になるかもしれないが、熱暴走などを気にしながら使うよりはよっぽどいいだろう。

気軽に使えるPCとして1台あると便利

 3~4年ほど前、ちょっとだけ流行りかけたスティック型Android端末を自腹で購入して使ってみたものの、非常に動作が重く、独特なUIもたたってその使い勝手はあまりいいとは言えず、ほぼ使わず放ってしまった筆者。

 なので今回も、それほど期待せずにDG-STK2Fを使ってみたのだが、Windowsの操作は普通に快適だし、ストリーミング動画の再生もまったく不自由なかった。価格も価格だし、それこそどこでも気軽に使えるPCとしてスティック型PCが身の回りに1台あってもいいかも、と思った次第である。

 次回は3万円前後のノートPCについて紹介する。

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