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ツール単体からコンテンツパッケージへとフィールドを拡大

マニュアルを通して“伝える”を変革する「Teachme Biz」の哲学

2015年10月19日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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スマホで簡単にマニュアルが作れる「Teachme Biz」を手がけるスタディスト。作成が面倒で、共有も難しかったOfficeベースのマニュアルを脱却し、新しい「伝え方」「学び方」を提案するスタディストの鈴木悟史代表に起業の経緯とサービス概要を聞いた。

デスクに座らないでもマニュアルを作れるように

 Teachme Bizは画像を使ったマニュアルをスマホから簡単に作れるビジネス向けのクラウドサービス。画面を取り込み、切り取りや拡大、矢印やモザイクの追加といった画像編集を施した後、説明を書き込むだけで作成は完了。あとは公開ボタンを押せば、公開範囲にあわせて、マニュアルが共有される。「とにかくデスクに座らなくてもマニュアルが作れるようにしたかった」とスタディストの鈴木氏は語る。

4ステップでマニュアルが作れるTeachme Biz

 Teachme Bizのマニュアルはユーザーが親しみやすいよう画像と動画をベースとし、フォーマットもスライドショー形式で固定。画像は必須なので、文字ベースのマニュアルはむしろ作れない。「文字だけだと作り手は楽だけど、ユーザーはうれしくない。ツールとしても、WordやPowerPointと変わらなくなる。だから画像を必ず入れるというポリシーは曲げない」と鈴木氏は語る。

 当然、「WordやPowerPointでもできるのでは?」という声もあろうが、今までのOfficeで作られてきたマニュアルは多くが、いくつもの課題を抱えていた。作る人によってフォーマットは違うし、改定が大変。できたマニュアルを逐一配らなければならないので、結局作業が面倒でフローが形骸化してしまう。いろんな人がいろんな使い方をしてしまう多機能は必ずしもメリットではないと捉える。

 その点、Teachme Bizでは「手順を確実に伝えるための機能さえ付いていればいい」とシンプルさの美学を追究。プレゼンソフトのPowerPoint、表計算ソフトのExcel、文書作成のWordといった具合に、マニュアル作成専用ツールとしてTeachme Bizを位置づける。

プログラミングを学ぶところから自社開発スタート

 鈴木氏はもともとスタートアップを指向していたわけではなく、前職で担当していたIT系プロジェクトの仕事に疑問があったことで、スタディストの設立に進んでいる。「当時、担当していた業務改善コンサルの仕事は10億とか、5億とかコストの高い案件だった。人々の生活や仕事を楽にするとはいえ、ITサービスはあまりにもコストが高すぎると思った。導入するには腹をくくらなければならないし、感謝より効果を求めるギスギスした関係があった」(鈴木氏)。リーマンショックを機に退職した鈴木氏は、安価で効果の出やすいクラウドサービスに興味を持つ。

スタディストの鈴木悟史代表

 こうして生まれたのが、スマホやPCで簡単にマニュアルを作成・共有できるTeachme Bizになる。「会社でも人は必ず辞めるし、仕事自体も変わってくる。同じ仕事をやり続けていたら、他社に負けてしまう。だから、両方(人と仕事)とも、会社にとってみたら変数なんです」(鈴木氏)とのことで、マニュアルやOJTと異なる学びを実現するのがTeachmeのコンセプトだ。「たかがマニュアルってみんな言うんけど、マニュアルを作るのは大変で、ネガティブな作業。しかも労力はかけたわりに捨てられることも多い。そんな、みんながいやがるようなものに挑み、しかも圧倒的に安価にしてしまえば、市場は独占できると思ったんです」と鈴木氏は語る。

 その後、スタディストを立ち上げた鈴木氏は、まず本を買ってきて、iOSプログラムを学ぶというところから始めたという。「外注するか、自社開発するかという分岐点があって、僕はソースコードを書くところから始めた。メンバーもコンサルあがりなので、VBAしか経験なかったけど、自転車と同じで最初は本をいっぱい買ってきてとにかく真似た。1年半くらいで本読まなくても書けるようになってきた」と鈴木氏は振り返る。

 当初は個人向けアプリ「Teachme」としてスタートし、女子でも簡単に操作できる使いやすさを実現。「業務系イコール小難しいというのがいやだったので、個人向けアプリとしてUIを磨きました」とのことで、使いやすさには特にこだわった。その後、企業向けの機能を拡充し、B2B向けの「Teachme Biz」として3年かけてようやくリリース。この数年は、IPアドレス制限などのセキュリティ機能やマニュアルを特定ユーザーに割り当てるタスク配信などを追加してきたという。

マルチデバイス対応のTeachme Biz

 サービスは月額5000円(税別・編集5人)からで、機能がひととおり使える。メンバーやゲストの閲覧回数の追加、更新時の通知やコメント機能、動画数の追加、レポートやバックアップ、セキュリティ機能の一部、不特定多数にマニュアルを共有する「トリセツ簡単作成キット」などをオプションとして用意しているほか、導入や運用サポートなども提供。とにかく安く使ってもらい、効果を実感してもらった段階で、実運用に必要なオプションを追加していくというのが基本的なスタンスだ。

“弁当箱売り”から“弁当売り”にフィールドを拡大

 2014年夏の段階で50社だった有償の導入社数だが、今年(10月)はすでに10倍以上の550社で、売り上げも約17倍に拡大した。先日はカメラのキタムラが900店舗で導入し、店員の接客応対などに活用。また、クラウド型の請求書サービスのMisocaのようなスタートアップもユーザー向けマニュアルにTeachme Bizを使っている。損保ジャパン日本興亜のような金融機関でも使われているので、セキュリティやコンプライアンスの観点でも実績があるという。当然、スタディスト社内での利用はもちろん、Teachme Biz自体の使い方もTeachme Bizで提供している。

 現在、同社は“弁当箱(ツール)”から中身の入った“弁当(ツール+コンテンツ)”のビジネスへの拡大を進めている。「うちの会社も今は10人くらいですが、30人くらいに増えたら、冠婚葬祭の対応など総務的な仕事や規定が必要になってくる。当然、自社でマニュアル作るのは大変なので、ほかの会社のマニュアル買えないの?という話になってくる」ということで、マニュアル自体を販売するという流れに移っているわけだ。

 具体的には税理士法人の古田土会計と組んで、税理士事務所向けマニュアルをバンドルしたパッケージを開始。8月には売り上げのなんと3割がパッケージ販売になったという。税理士事務所の経営支援で有名な古田土会計は、もともと売り切り型のマニュアルを販売していた。これをTeachme化し、閲覧権を付与することで、システム開発投資なしで、月額のストックビジネスにできたという。「総務はもちろん、歯医者、整骨院、葬儀場、調剤薬局など、日本全国にあって、同じようなことをやっているところはドンピシャではまる」(鈴木氏)とのことで、こうしたコンテンツパートナーは今後も拡充を進める。

 さらにはグローバル展開を進める企業のマニュアル配信を手がけることで、日本のビジネスや文化の輸出も手がけていきたいという。「たとえば、日本食の作り方など、飲食店がグローバルでビジネスを手がける際にTeachme Bizを使ってもらう。ビジュアルは言語を問わないので、海外に進出する際に使っていただきたいです」と鈴木氏は説明する。マニュアルという古典的な伝承の取り組みをスマホとクラウドで変革するスタディストの挑戦は、今まさに始まったばかりだ。

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