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マーケティングにも実は役立つ「人間中心設計」とは

2015年10月20日 11時00分更新

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"ラップの切り方"から学ぶユーザー行動マーケティング」の最後で、「人間中心設計(Human Centered Design)」というキーワードをご紹介しました。今回はこの「人間中心設計」についてお話しします。

キッチンスットカーをなかなか買えないワケ

今年もあと3か月。2015年にやり残したことを実施する時期としてはラストスパート!な時期ですね。2015年中にやりきりたいと思っていたことの1つに「備蓄用のミネラルウォーターを格納するキッチンストッカーを購入すること」があります。

さっさと買いなさいと突っ込みが入りそうですが、収納家具ってぴったりサイズが合うものが欲しいのです(きっと同じ思いの人は多いはず)。自分の目的にあったサイズとデザイン、希望価格にはまるものが欲しいのでまずはインターネットで探すことにしました。しかし、なかなかイメージに合うものが見つからない…。インターネット上にあふれている膨大な商品情報の中から自分がイメージしている商品にたどり着くのがとても大変でした。

たくさんある商品の中から自分のイメージにぴったり合う商品を選べない、という状況にはさまざまな問題が隠されています。在庫を確認したいがどこに書いてあるかわからない、背面が見たいのに写真が無いので選べない、サイトの表示が遅いのでイライラする、会員登録しないと購入できない…、など数えあげればキリがありません。

今回、商品を探している中で訪問したサイトはどれもユーザーの立場に立ったサイトになっていない可能性があります。こんな課題を解決する時にぴったりなのが「人間中心設計の基本プロセス」です。

人間中心設計の基本プロセスとは

人間中心設計の基本となるプロセス「ISO9241-210 (人間工学-インタラクティブシステムの人間中心設計)」は、下記の4つの主要な活動と1つの予備的な活動で構成されています。

02.png

ISO9241-210(人間工学-インタラクティブシステムの人間中心設計)

企業活動で使われるPDCAサイクルに良く似ていますが、タスクやプロジェクトの代わりに「ユーザー」を中心にすえたものです。このプロセス図は国際規格として運用されていて、海外などではこのプロセスに沿った開発をすることが発注の条件となっている場合もあるそうです。

家具を買う時の状況を人間中心設計の基本プロセスで整理してみます。上記のプロセス図に記載されている4つの要素を、マーケティングプランニングでよく使われる「現状の事実とあるべき姿」というフレームワークにプロットしてみました。

参考:Design it!w/love デザインと読解力(文章に書かれたこと/書かれていないことを読み解く)

  1. 人間中心設計の必要性の特定:サイトを運営する企業側が目指す姿を具体的にする
  2. 利用の状況の把握と明示:ユーザーの閲覧デバイスやサイトコンセプトなど現状を具体的にする
  3. ユーザーと組織の要求事項の明示:インタビューなどで得たユーザーの意見と企業のサイトコンセプトを照らし合わせてユーザーと企業の考えの違いを明確にする
  4. 設計による解決案の作成:現状起きている問題を解消するデザイン、デザインルールを作成する

人間中心設計の考え方を用いて現在起こっている問題を把握することで、企業が目指すユーザーとの「あるべき関係性」について改善などの活動を進められるようになります。ちなみに、問題を把握する方法は、前回の記事でご紹介したアクセス解析やユーザーインタビュー、ユーザビリティ評価など多くの手法があります。

人間中心設計はうれしい体験を提供する

ユーザーに商品を選んでもらうためのサイトが、ユーザーの視点に立ってデザインされていないことによってユーザーから商品を遠ざけてしまっていることが少なくありません。

しかし、人間中心設計の考え方を用いることで、ユーザーとサイトの間で起こるマーケティング課題をユーザーの視点に立って解決することができるようになります。ユーザー視点に立って設計されたサービスは、利用するユーザーの体験価値を高め、気持ちよくサービスを利用したユーザーはいずれ企業にとって価値ある顧客になります。

人間中心設計を活用したプランニングや分析などに興味をもたれましたら、ぜひお気軽にお問合せください。

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