2020年の東京五輪や既存産業の活性化にも有効
さらに、観光・ツーリズムの領域においてもCPS/IoTの活用は有効だとする。
「2020年の東京オリンピックに向けて、外国人観光客が増加するなかで、最適な行き先や見所を提案し、快適に、無駄なく観光してもらうためには、CPS/IoTの実装が不可欠になる。多言語翻訳にも生かされることになる。世界の方々と問題のないコミュニケーションが取れる時代が、2020年に実現する」と語る。
また、農業人口の減少と高齢化の課題に対しても、「CPS/IoTを活用することで、日本の農業が世界でもっとも競争力を持った第一次産業に進化させることができる。そして、そのノウハウを輸出するという新たな産業も生まれる」とする。
CPS/IoTは、既存産業のイノベーションと、新たな産業の創出という2つの成果を生み出すものになるとする。
センサーデバイス市場はこの5年で2倍以上に成長
今後5年でさらに2倍に
水嶋会長が、日本がCPS/IoTが、新たなエンジンになると指摘する理由のひとつに、CPS/IoTの根幹を担うセンサー技術で日本が先行していることがあげられる。
「CPS/IoTで重要なのは、センサーから出た情報を、蓄積し、解析することで、ソリューションを創出して、出力へとつなげること。ポイントとなるのは一番最初のデータ。いかに多くのデータを、精度よく、サイバー空間に持ち上げることができるか。ここでは、高品質な処理が求められている。日本の電子情報産業は、そこに力を発揮できる」とする。
センサーデバイス市場は、2011年には1兆8290億円だったものが、2015年には3兆527億円へ拡大。さらに、2020年には5兆8661億円になるとみられている。今後5年で市場規模は倍増すると見られているのだ。
「これだけの高い成長が見込まれる市場において、日本は有利なポジションにある。日本はセンサー大国であり、新たなセンサーを開発する能力は世界のどこよりも長けている。センサーは、CPS/IoTのなかで、日本が打ち勝つことができるためのバックボーンになる」とする。
センサー市場全体に占める日系企業のシェアは54%。その内訳をみても、イメージセンサーなどの光度センサーのシェアは69%、温度センサーは67%、慣性力センサー(加速度センサー、位置センサー、流量計など)は34%、圧力センサーや気圧センサーでは30%、磁界センサーや電流センサーでは23%、化学センサー(湿度センサーやガスセンサー)は17%のシェアを持つ。また、超音波センサーやタッチセンサーなどのその他センサーにおいても36%のシェアを持つ。
CPS/IoTの進展とともに、家やクルマのなかには数多くのセンサーが、これから利用されていくのは明らかだ。そのなかで、日本のセンサー技術がCPS/IoTをリードするというのが、今後の日本の電子情報産業の成長の姿というわけだ。
そして、水嶋会長は、「18世紀の産業革命では、その流れにいち早く乗った国が栄えた。CPS/IoTによる新たな産業革命に乗り遅れると、日本の産業、経済は致命的な打撃を受けることになる」と警告を鳴らす。
「CPS/IoTを日本の社会に実装するには、現行制度の見直し、ユーザードリブンアプローチ、社会基盤強化が重要。また、CPS/IoTにおけるビジョンを、国民と共有し、改革を進めなくてはならない。企業、産業の垣根を超えた取り組みが必要であり、産官学で、やるべきことの整理をする必要がある」
日本が、CPS/IoTをリードする仕組みを早急に作る必要があるといえそうだ。そうしなけば、日本の電子情報産業の成長は、これまで同様に限定的なものになりかねない。
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