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Windows Phoneは出ない? HTCの戦略を読む

2015年10月08日 10時00分更新

文● 山口健太

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 日本では「HTC J butterfly」シリーズなどで知られるHTCが、国内SIMフリー市場へ「参入」した。10月1日にはミドルレンジのAndroidスマホ「HTC Desire EYE」と「HTC Desire 626」の2機種を発表。今後はキャリア向けとSIMフリーを両立させながら、端末ラインアップも拡大させる構えだ。

HTCがSIMフリー市場に参入、実際には過去にキャリア以外からも端末を発売したことがあり、「再参入」となった

 一方、HTCは海外でWindows Phone端末を展開するものの、日本市場への導入は様子見の姿勢を貫いている。果たしてHTCの日本戦略とはどのようなものかを分析していく。

HTCが日本のSIMフリー市場に「再参入」

 都内で開催された発表会には、台湾HTC Corporationで北アジアを統括する代表取締役ジャック・トン氏が登壇した。トン氏は「日本のスマホ市場は特殊」と指摘する。その根拠は、キャリアが季節ごとに発表会を開催し、多数のハイエンド端末を一斉発表するという点だ。

HTCの北アジア地域を統括するジャック・トン氏。日本のスマホ市場の特殊性を指摘

 海外メーカーの多くは、「日本はiPhoneのシェアが高すぎる」という認識を共通して持っている。しかし、キャリアの商品戦略にまで踏み込んだ分析は、KDDIなどキャリア向けに端末を供給してきたHTCならではの視点といえる。

 一方、こうした特殊性があるからこそ、対抗する戦略を立てやすいとも考えられる。トン氏も、「KDDIとのビジネス経験でノウハウがあり、品質基準も高い。HTCのハイエンド技術をミドルレンジから低価格帯に応用することで、キャリア発表の隙間に我々の端末を投入できる」としてチャンスを見出している。

 続けて、HTC NIPPON 代表取締役社長の玉野 浩氏が日本におけるHTCの歴史を振り返り、ドコモに納入した初のAndroid端末「HT-03A」や、2007年にはWindows Mobile端末「X7501」をSIMフリーで発売したことを紹介。HTCにとって、日本のSIMフリー市場に「再参入」する形になった。

X7501、HT-03Aなど、HTCはスマートフォン黎明期から日本市場に参入してきた

 日本ではキャリア向け事業を展開してきたHTCが、なぜ再びSIMフリー市場に挑戦するのか。これまで市場調査を続けてきた結果として、このタイミングしかないと判断したという。

 玉野氏は、日本のSIMフリー市場の規模はスマホ出荷全体の「一桁%」程度だという。販売店などにSIMフリー端末売り場が広がっていることを考えれば、意外にも小さい。2014年の日本のスマホ出荷台数はIDCの調査で約2654万台、その5%としても約130万台に過ぎない。カウントの方法にもよるが、別の国内メーカー幹部は「100万台にも届かないのでは」と指摘しており、さらに少ない可能性もある。

質疑応答に応じた玉野氏と、トン氏。日本のSIMフリー市場の拡大に期待を寄せる

 だがHTCでは、このSIMフリー市場が来年にも1割を占めるほど拡大していくのではないかと見ている。この市場拡大に応じて期待されるのが、Windows Phone端末の投入だ。

海外ではWindows Phoneを展開も、日本では?

 HTCはWindows Mobileの頃から、Windowsベースのスマートフォンを多数展開。海外でもWindows Phone 7の初期からWindows Phone 8.1まで、端末を展開している数少ないメーカーのひとつだ。

 日本での発売可能性はあるのか。囲み取材に応じた玉野社長は、「法人からは多くの声をいただいているが、ニワトリが先かタマゴが先か、という議論が続いている。個人のお客様に、本当に買ってもらえるのか」と疑問を呈しており、様子見の姿勢を明らかにしている。

囲み取材に応じるHTC NIPPONの玉野社長。Windows Phoneの法人需要は認めつつ、個人向けには厳しいと見る

 この見方は、すでにWindows Phoneを発売した、あるいはこれから発売するマウスコンピューターやFREETELも同様だ。Office 365との親和性が高く、Windowsデバイスとして管理しやすいWindows Phoneは、法人用途に魅力的だ。一方、生産性だけでなくエンタメ系のアプリやゲームを楽しみたい個人にとって、Windows Phoneは積極的に選択する理由に乏しい。

 SIMフリー市場が100万台に満たないことから、Windows Phoneのシェアを5%と見積もったとしても、その市場規模は5万台未満。なにか市場が急拡大する要素がない限り、その小さな市場を数社で分け合うことになるだろう。

SIMフリー端末は「格安スマホ」か

 端末メーカーの次の一手として、圧倒的なハイエンド仕様のWindows Phoneを投入し、市場拡大を狙うというのはどうだろうか。HTCのWindows Phone 8.1端末としては「HTC One (M8) for Windows」がある。

 さらに米マイクロソフトは、10月6日に新たなWindows 10 Mobile端末「Lumia 950/950 XL」を発表し、これまでのWindowsベースのスマートフォンとして最高級のスペックが注目を浴びている。

Lumia 950と950 XL。Snapdragon 808/810や、Quad HDディスプレーの採用などハイエンド仕様が特徴だ

 だが、HTCは日本における「格安スマホ」という呼称に悩んでいる。日本のSIMフリー市場では、「格安SIM」や「格安スマホ」との呼称が広まっており、これらを一括りにして全体を「格安スマホ」と称することも多い。「MVNO」や「SIMフリー」といった専門用語に比べて、一般メディアなども使いやすい用語であることが、その背景だろう。

 問題は、こうした認識が広まることで、端末メーカーがSIMフリー市場で展開できる戦略が限られてくることだ。SIMフリー端末メーカーは「格安スマホという呼び方はやめてほしい」と口を揃える。

HTCも「格安」のイメージ払拭のため、サポートにも力を入れる。SIMフリー各社にみられる傾向だ

 今後、SIMフリー市場で端末バリエーションを拡大させるにあたって、「格安スマホ」という呼称は確実に足を引っ張ることになりそうだ。HTCを含め、このカテゴリーに新たなブランドイメージをもたらすために各社の連携が必要ではないだろうか。


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