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いよいよ2016年4月から開始される電力小売全面自由化

電力小売自由化に向けたIT投資をにらむ日本ユニシス

2015年10月01日 07時00分更新

文● 大河原克行

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2016年4月からの電力小売全面自由化により、2016年は電力自由化元年となる。これにあわせて新たに小売事業に参入する新電力(特定規模電気事業者)の動きが注目されるほか、2020年に予定されている発送電分離による新たな市場創出やビジネスチャンスの広がりなどが期待される。「Enabilityシリーズ」を展開する日本ユニシスが戦略を説明した。

電力、ガスの自由化でIT市場が活性化へ

 現在開催中の第189回通常国会において、「エネルギー市場改革法案」が成立した。これにより60年間に渡って独占状態が続いていた電力、ガスの自由化が実現することになる。当然、こうした動きは、IT市場の活性化にもつながることなる。

 電力自由化に伴なう、新たなIT投資規模は数1000億円規模に達するとの見方もあり、国内外で電力分野において実績を持つ企業が、この領域での営業活動を積極化している。実際、新電力には、9月18日時点で762社が参入の届け出を行なっており、8月からは登録手続きが開始されている段階にある。参入企業は、エネルギー資源会社のほか、商社系、鉄鋼系、金融系、電機系、住宅系、自動車系など幅広い。

 こうした企業が、新たなIT投資を行なうことになる。日本ユニシス 公共第一事業部次世代ビジネス部・金井智部長は、「かなりの引き合いがある。電力小売全面自由化が開始される2016年4月にこだわらなくてもいいから話を聞きたいという問い合わせもある」という。

日本ユニシス 公共第一事業部次世代ビジネス部・金井智部長

 電力自由化に向けたITソリューションとしては、日本オラクルや東芝、NTTデータ、日本ユニシスなどが製品をラインアップしており、海外で先行した実績や日本における電力会社向け実績などを活用して、差別化している。

 こうした中、日本ユニシスでは、エネルギー市場向けクラウドソリューションとして、電力自由化に向けた「Enabilityシリーズ」を提供。電力小売参入事業者が必要とする機能を有したパッケージ製品と位置づけている。顧客料金クラウドサービス「Enability CIS」、契約受付の「Enability Order」、お客様ポータル「Enability Portal」で構成。「長年、電力会社を担当していたノウハウを活用しており、信頼性の高いサービスとして提供できる」(金井氏)とする。

電力自由化に向けた「Enabilityシリーズ」を提供

 主な特徴として、あらかじめ国内一般電気事業者の標準的な電気料金メニューをセットにした利便性や、自社開発の国産パッケージである点を生かしたワンストップでの24時間365日体制での運用監視、保守体制の実現、コンポーネント指向のプログラムとしたことで、柔軟な料金メニューの構築が可能であることなどの特徴を持つ。

電力の自由化で柔軟な課金体系やアライアンスが可能に

 1社1ライセンスの価格体系と、需要家数に応じた従量課金のクラウドサービスとして提供しているのも特徴だ。

 これまでは、世帯主が電力会社に直接料金を支払うという方法しかなかったが、料金計算を行なうEnability CISでは、コンポーネントの組み合わせによって、親元を離れて暮らしている子供の家の料金も、ひとつの電力会社との契約により、複数契約をまとめた支払いや割引といったことも可能になる。これは、電力自由化によって、参入企業によって、戦略に直結することになるという。

柔軟な支払い形態が選択できる「Enability CIS」

 また、「顧客接点窓口となる顧客ポータル、営業管理、戦略的分析、需給調整などのフロント業務、ミドル業務、バックエンド業務などとの連携により、数多くの参入企業に対して、最適化したソリューションとして提供していくことになる」としている。使用量などを分析して、最適な料金メニューを開発するためのデータ分析システムや、契約者獲得のためのプロモーションを行なうためのキャンペーン管理システムなども提供。「今後、ニーズにあわせた形で開発しながら、新たなソリューションを提供していきたい」(日本ユニシス 公共第一事業部次世代ビジネス部・金井智部長)という。

 さらに、1社完結型のシステムではなく、複数の企業とのパートナーシップを前提としたシステム構築を行なうといったニーズが多いのも特徴だ。

 「再生エネルギーを持つ企業、調整電源を持つ企業、ベース電源を持つ企業同士がお互いに補完する形で連携するといったことも、今後は増えていくだろう。また、エリアの異なる電力会社との連携、エネルギーと関係のない企業との連携によるセット提案なども増えるとみている」とし、「電力会社と通信事業者の組み合わせでは、価値訴求、商材、エリアといった観点からのあらゆるアライアンスを模索、形成している」という。

(次ページ、欧州が先行する電力自由化の流れ)


 

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