“ブームとしてのIoT”を終焉させる国産IoTプラットフォームの正体
星の数あるIoTデバイスをつなぐSORACOMの全貌
IoT通信を細かく制御し、さらに自動化まで
こうしたクラウド型交換機をベースにするSORACOM Airでは、SORACOM自身がエンドユーザーにSIMを提供し、IoTデバイスとインターネットの接続性を確保する。当然ながらIoTに最適化されており、サービス仕様もユニークだ。
まず入手はネット経由で簡単に行なえ、契約事務手数料もAmazonでは888円/枚(SMSなし)、直販サイトでは580円/枚(ただし、20枚単位)で提供される。また、料金プランも変わっており、基本使用料として1枚あたり10円/1日(使用開始前は1枚あたり5円/1日)を支払えば、1MBあたり0.2円~のデータ通信料金で利用できる。「1GB単位で200円なので、かなり安い。SIMが何枚あっても、複数枚をまとめた全体のデータ通信量に対して課金されるので、非常にフェア」(玉川氏)。しかも2年縛りはなく、すぐに辞められる。MVNOになるための初期コストも必要なく、完全な従量課金で1枚単位でSIMを手軽に使い始め、IoTデバイス等の実験に使えるというわけだ。
また、交換機能を自社開発している強みとして、SIMの管理機能も提供する。「これまでのSIMサービスは土管に近くて、挿したらつながるだけだった。交換機も、ある意味ブラックボックスでユーザーは触れられなかった。でも、SORACOM Airはユーザーに対して、さまざまな管理サービスを提供しています」(玉川氏)とのことで、管理コンソールからSIMを一枚単位で管理できる。
使用を始めたり、辞めたりはもちろん、帯域を拡大したり、絞り込むことも可能。「IoTデバイスの場合、データは大量に流さないので、遅くても、安い方がよい。逆にカメラやスマホや多少価格が高くても速いほうが好まれる。こうしたお客様のニーズで、リアルタイムに速度を自由に変えられる」(玉川氏)。学校の監視カメラであれば、日中だけデータ送信するとか、通信料金の安い夜間にデータをまとめてあげるといった、柔軟な速度の変更が可能になるわけだ。
その他、SIMごとの通信状況をリアルタイムでチェックしたり、データ量に応じてアラートを挙げるといった制御も行なえる。さらにこれらの通信制御をすべてAPIでコントロールできるのもSORACOM Airのメリット。「われわれはクラウド出身なので、APIにはこだわった。今まで“堅かった”通信を“柔らかく”し、APIでコントロールできます。100個のSIMで同時に回線を開いたり、閉じたり、スピードを可変させるといった自動化が可能です」(玉川氏)。こうした交換機機能はもちろん、データ量の計測や監視、課金や請求管理、API、コンソールまで含めて、ワンストップで提供できるのがSORACOM Airの強みになる。
スタートアップからエンタープライズまで採用続々
約半年のステルス期間中、SORACOM Airはプライベートのβテストを進めていたため、すでに試験的な導入がスタートしているという。いくつかの事例を紹介していこう。
リクルートライフスタイルの無料POSレジアプリ「Airレジ」は、SORACOM Airと組み合わせて、すでに期間限定のイベントでの店舗POSで利用されている。期間縛りのないSORACOM Airならではの使い方だ。
また、スマートロックを提供するAkerun(アケルン)では、遠隔からの施錠・解錠を行なうAkerun RemoteにこのSORACOM Airを活用している。従来のAkerunはスマートフォンからBluetooth経由で施錠や解錠を行なっていたが、BLEゲートウェイとSORACOM Airを組み合わせることで、遠隔地からこうした操作が行なえる。コマンドを送るだけなので、データ転送料もほとんどかからない。「ホテルや倉庫の鍵を遠隔地から開けたいというニーズがあるとのことで、そこでSORACOM Airを使っていただく」(玉川氏)。
その他、同社の事務機器のソリューションを検証しているキヤノンや、与信審査の通らない利用者の車に遠隔から起動制御する車載器にSORACOM Airを搭載したGlobal Mobility Serviceのほか、AWS時代からの盟友である長谷川秀樹氏がシステムを手がける東急ハンズにおいては、国内店舗の業務システムのバックアップ回線にSORACOM Airを試験導入している。エンタープライズからスタートアップまでさまざまな企業でSORACOM Airが使われているわけだ。
このようにIoTからインターネットへの足回りをSORACOM Airが担うことで、初期コストをほとんどかけず、サービスを一気にスケールできるのが大きなポイント。エンジニアが新しいチャレンジを行なうのに最適なプラットフォームだ。「ものづくりのお客様がMVNOをやりたいといっても、今までは数千から数万回線という規模でないと割に合わず、手軽に始められるものではなかった。でも、SORACOM Airであれば1枚でも、10枚でも、100枚でもすぐに調達でき、運用の大変なところもわれわれが担う。規模が大きくなっても、コストの伸びは線形で予測可能だし、2年縛りもないので、すぐに辞められる」と玉川氏はアピールする。
(次ページ、IoTデバイスのセキュリティをクラウド側で高める「SORACOM Beam」)
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