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上海で開催された「Huawei Cloud Congress 2015」レポート

ファーウェイ法人事業、「エコシステム重視」を強く強く訴求

2015年09月23日 09時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 華為技術(ファーウェイ)は9月18日~19日、中国・上海でプライベートイベント「Huawei Cloud Congress 2015(HCC 2015)を開催した。法人向け・キャリア向けのIT製品を紹介する同イベントで、一貫して強調したのは「エコシステム重視」の姿勢だった。約80カ国のユーザーやパートナーが参加したイベントの様子をレポートする。

クラウド・エコシステム重視の姿勢

 ファーウェイは、スマホをはじめとする「コンシューマ端末事業」のほかに、「通信事業者向けネットワーク事業」「法人向けICTソリューション事業」を展開している。

ファーウェイの3事業

2014年度の売上高は2882億元、純利益は279億元

 法人向けには、サーバー、ストレージ、ネットワーク、ユニファイド・コミュニケーションのほか、クラウドOS「FusionSphere」、PaaS「FusionStage」、ビッグデータ分析基盤「FusionInsight」といったクラウドソリューションを提供する。基調講演に登壇した輪番CEO兼取締役副会長の徐直軍(エリック・シュー)氏によれば「これらITインフラにフォーカスし、ITインフラをベースとした協業で“強いクラウド・エコシステム”をつくるのが当社の役割」(シュー氏)という。

徐直軍(エリック・シュー)氏

 その基本的な戦略となるのが「キャリア・クラウドの支援」と「インダストリー・クラウド・エコシステム」の2点だ。

クラウド・エコシステム重視を強調した

 キャリア・クラウドの支援では、各国のキャリアが提供するクラウドサービスを、ITインフラ面で支援する。ファーウェイ自身、この7月から中国国内で自前のクラウドサービスを提供しているのだが、「これが最も優れているわけではなく、選択肢の1つに過ぎない」として、それ以上に各国のキャリアとの提携を強く訴求している。

 例えば、ドイツテレコムとの協業。子会社のT-Systemsが「FusionSphere」を用いたクラウドを構築し、サービス展開している。ファーウェイとしては、ITインフラの提供により、こうしたキャリア・クラウドの推進を支援する方針なのだ。

 その姿勢を端的に示しているのが、シュー氏の語った「我々は全てをできるわけではない。その実力は限られている」という言葉と、「(我々は)アプリは作らない、(顧客の)データにはタッチしない」という言葉である。

 この考えは「Huawei Business-Driven ICT Infrastructure(BDII:顧客のビジネス主導のためのITインフラ)」という行動ガイドラインにも示されており、「自社のインフラ分野での知見と、パートナーのサービスを掛けあわせ、顧客志向のエコシステム・イノベーションを展開する」としている。

ファーウェイはBDIIを推進し、パートナーとともに新しいインダストリー・クラウド・エコシステムの構築を推進する

Huawei BDIIの概要。自社のインフラ分野での知見と、パートナーのサービスを掛けあわせ、顧客志向のエコシステム・イノベーションを展開する

 ファーウェイは「アプリを作らない」――だからこそ、実際にビジネスの価値を生み出すためには、アプリケーションを開発していたり、サービスを提供している企業との「エコシステム」が必要不可欠というわけだ。そのために今後3年間で1万人以上の認定人材を育成する目標も示した。

今後3年間で1万人以上の認定人材を育成する

 また、より具体的には「我々は多分野の企業を買収して事業を広げる意思はなく、あくまでもITインフラの先進性にのみ投資を続ける」との発言もあった。

「インダストリー・クラウド・エコシステム」も推進

 「エコシステム」の文脈でもう1つ推進するのが「インダストリー・クラウド・エコシステム」である。

閻力大(エン・リダ)氏

 ファーウェイ 法人向けICTソリューション事業グループ プレジデント兼ファーウェイ・ジャパン代表取締役会長の閻力大(エン・リダ)氏は、「クラウドは速くてスケーラブルだが、各業界に対応するためには工夫が必要だ。例えば、現在オンラインゲーム業界がクラウドの主要なユーザーだが、彼らのビジネスでは大量のトラフィックは発生するものの通信そのものは複雑ではない。一方、最近では金融やメディアなど要件が複雑な業界でのクラウド利用が進んでいる。そこで特定の業界に最適化されたクラウドを実現する“インダストリー・クラウド・エコシステム”を推進する」と語る。

「インダストリー・クラウド・エコシステム」も推進

 インダストリー・クラウド・エコシステムの例として中国国内では、招商銀行がビッグデータ分析サービス「Huawei FusionInsight」を活用し、最大15年前の取引データを顧客へ提供している例を紹介。また、中小銀行群が共通のクラウドを構築し、リソースを融通しあう「Shareing Cloud Infurastructure」に近い環境を目指していると説明した。

 メディア業界でも、中国のテレビ局が複数箇所のデータセンターを論理的に統合し、大きなクラウド環境を実現。現場取材の動画をその場でアップロードし、社内で即座に編集できる環境を整備しているという。

 「こうして同じ業界の企業が集まると、川上・川下の産業にも影響を与え、よりコラボレーションしやすくなり、『Joint Innovation』が実現される」(エン氏)。

インダストリー・クラウドがもたらす3つの価値

 インダストリー・クラウド・エコシステム戦略では、こうした業界特有のニーズに応え、最適化されたクラウド環境をパートナーとともに築いていくというわけだ。「ともに先進的なエコシステムを作りたい」とエン氏は会場に語りかけた。

(→次ページ、「我々はデータにタッチしない、データから利益も得ない」

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