カスタムイヤーモニターは音楽のアイテムとして理想のモノ!!
さっそくそのイベントの模様をレポートしよう。松尾さんの挨拶でソニー製品のデザイン部門といえるソニー・クリエイティブセンターの小宮山淳さんが紹介される。まずは小宮山さん自身が自ら関わったソニーのヘッドホンについて解説。
1993年の入社以来、オーディオ用関連商品のデザインを手がけてきたが、ヘッドホンのデザインに関わるようになったのは2001年から。iPodの登場から現在に至るヘッドホン人気に火が付いた時期に最前線で活躍してきた人物だ。
その製品には実にユニークな物が多い。第1号の「MDR-Q55」は耳かけ式のモデルだが、カラバリではなく3つのデザインバリエーションが用意されていた。円形のハウジングを元にしながら、ターンテーブルをモチーフにしたもの、スケートボードをあしらったもの、ウッドベースの雰囲気を持ったものがあり、実は音質もテクノ系、ロック系、ジャズ系と音質のチューニングを変えていたという。
「実はこれ、正式にヘッドホンのデザインを担当する前に無理矢理参加したもので、当時の上司にヘッドホンについて熱く語ったんですよ。『こういうモノが欲しいんだ』って。そうしたらやってみろと言われたので、好きなようにやっちゃいました」(小宮山)
以来、MDR-XD100/200/300/400や、折り畳み型のMDR-710など、さまざまなモデルのデザインを担当。印象に残るところでは、大型のイヤーパッドが特徴的なXBシリーズのMDR-XB1000も手がけている。これは、音質を松尾さんが担当したモデルでもある。「低音が大きな特徴でしたので、史上最低音というキャッチコピーを考えていました。ボツになりましたが(笑)」。製品が現役の時にはとても言えないようなこともポロリしながらのトークが楽しい。
もちろん、ヘッドホンのデザインへのポリシーや、その考え方も本音トーク全開で披露。例えば、ウォークマンW(耳かけ式ヘッドホンに音楽再生機能も内蔵したモデル。取り外した時は左右のヘッドホン部が磁石でくっつき、左右をつなぐケーブルがハート型に見える形になった)は先進的なスタイルを見せ、モニターヘッドホンのMDR-Z1000などではF1のコクピット的な無駄な装飾を配したストイックなデザインとするなど、そのモデルに相応しい形をデザインしたという。
「MDR-XB1000のデザインで開眼したのが、ヘッドホンは物というよりも空間をデザインすることなんです。頭に装着して音楽を聴く道具ですから、装着したときの空間というか、佇まいをデザインしなければいけない。装着感も含めて、そのモデルの音がダイレクトに伝わるようなものを目指していましたね」