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現代の技術で蘇る、ダイレクトドライブのプレーヤー

Technicsブランド設計のキーマン井谷氏に、ターンテーブルへの思いを聞く

2015年09月21日 15時00分更新

文● 折原一也、編集●ASCII.jp

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パナソニックで、テクニクス事業推進室のCTO兼チーフエンジニアを務める井谷氏

 昨年のIFA 2014の会場にて行われた”Technics”の復活宣言から1年が経過した。今年はTechnicsというブランドの生誕からも50周年を迎えるが、パナソニックはIFA 2015の会場でオーディオ新製品4機種に加え、そしてファン待望のアナログレコードプレイヤーのエンジニアリングサンプルを初披露した。

 ”新生Techinics”ブランドのアナログがどんな方向に向かうのか、そして新製品についてチーフエンジニアの井谷哲也氏に尋ねた。

2万5000人の嘆願書が届くほど、Technicsへの期待は大きい

 パナソニックがIFA 2015に合わせて実施したプレスカンファレンスで、大々的に披露された製品が、これまで「SL-1200」シリーズなどの銘機を擁してきたアナログターンテーブルだ。

IFAに合わせて開催したプレスカンファレンスでは、Technicsブランドの小川理子ディレクターがアナログターンテーブルの復活を発表した。

 「去年のIFAでテクニクスを再発信するとアナウンスした後で、一番声が大きかったのがSL-1200への反響でした。弊社ブランドディレクターの小川の元にイスラエルのDJの方からSL-1200復活を願う2万5000人分もの署名が入った嘆願書が来たりもしたんです。

 じゃあ、どうしたら復活できるかと検討を始めてすぐに分かったのが、金型などが全く使えないということでした。SL-1200の生産を止めてだいぶ時間が経っていたこともあり、じゃあ最初から作らなければいかんな、と開発を始めたわけです」

 開発としては「5月ごろからスタディーを始めたばかり」とのことで、着手から試作機の公開までの期間は短かったが、ダイレクト・ドライブをイチからやり直すつもりで、開発に臨んでいるとのことだ。

1970年代に研究開発が進み、進化が止まっていた

 さて、Technicsと言えば、世界で初めて”ダイレクト・ドライブ”を採用した「SP-10」を1970年に開発。その後も「SL-1200」(1972年)を始めとしたダイレクト・ドライブ搭載のアナログプレーヤーを次々と発表した。

SL-1200 MK6。2010年末に生産が完了。以来、Technicsのアナログターンテーブルはラインアップが途絶えていた。

 特にSL-1200シリーズ(最終モデルの「SL-1200 MK6」は2010年末に生産終了)は、高トルク・高耐久性・立ち上がりの速さといったダイレクト・ドライブならではの特徴に加え、リーズナブルな価格帯という要素もあり、DJ用のアナログプレイヤーとして今なお高い評価を獲得している。

 IFA 2015のパナソニックブースでは1970年当時のモーターが実動展示されていた。初代のSP-10の登場からすでに45年が経つが、メカニカルの面では40年、50年の使用に耐えうるものだったことの表れとみることもできる。IFA 2015で発表された次世代のターンテーブルについても「次の50年使えること」視野に入れた開発をしていくと、井谷氏も意欲を語る。

IFAで展示された1970年当時のD.D.モーターのプロトタイプ。45年前となるが、実際に動作していた。

 「ちょうどあのころ=1970年代というのは、アメリカでFM局が次々と産まれた時期です。当時は、ラジオのパーソナリティーがトークからレコードの再生までひとりで担当するスタイルが多く、レコードをセットして針を下ろし、話し終わってすぐに”ハイ”と音が出ないといけません。(回転トルクが高く、再生の立ち上がりも早い)ダイレクト・ドライブはこれに向いていたんですね。

 放送局に入ったことは、Hi-Fiマニアの人達に信頼性があると受け入れられるきっかけにもなりました。その需要が一巡してからDJの方々にも受け入れられていきました。ベルトドライブではスクラッチができないですから。

 ただ、それ以降、ターンテーブルも需要が減ってしまったから、その研究は1970年代中盤で止まってしまっていました。しかしそれを、今の技術でやりなおせばきっと良いものを作れると考えているんです」

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